C2-13 異世界よりの死神
「何も嬉しくなんかないわよ。馬鹿馬鹿バカバカしい」
「な?・・・・・・」
「私はずっと怒り続けてんのよ。仲間も無関係な人間も大勢傷つけられて。魔法のカラクリを教えてあげたのは、あんたの感情をコントロールするためよ」
「あ、あんた私が誰だか知ってるのか!? 私の姉はミルグ最高位の魔法使いーー」
「お前こそ、自分が傷つけてきた人間のこと少しでも知ってるのか!! この屑が!!」
フォランの全身から放たれる、ドライアイスのような痛く冷たい殺気。女王は悟った。ここが死地なのだと。
ーーバリン!!
そして、12が限界を迎えるときがきた。女王の最期のときが。
「ああああああ!! やめろ!! やめてええ!!」
背を向けて逃げようとした女王を、炎は容赦無く焼きはじめる。光沢のある美しい赤色の靴も手袋も、黒い何かへと変わっていく。
「焼き尽くすわ。あんたがモノに変わるまで」
「ぎゃあああああ!!」
丸焼きになり転がる女王は苦痛の中、フォランを睨む。見目麗しい女。デスコヴィがもらえなかったものを全部持っている。
ーー容姿がいいだけのアバズレが。生まれ持ったものだけで、私から命も未来も誇りも何もかも奪おうとしやがる。
ーー悔しい。悔しい。あいつらも同じだった。ゴミみたいな魔力と知力で、見た目だけが取り柄の家畜ばかり。そんなのばかりが選ばれる。
ーー私が格上になった暁には、奴ら全員の首を刎ねてやると誓った。誓った。誓った誓った誓誓誓誓
「誓ったんだよおお!」
「デンレロロロ・・・・・・デェン!」
ジョーカーの額のマークがスペードになる。フォランの怒り、そして女王の怒りがペアとなる瞬間が来た。
「ウィリキキキヒィ!!」
敵の目が不気味に光り、正面から少女に襲いかかる。女王が死ぬには、まだ僅かに時間を要する。この強烈な一撃は避けられそうにない。
「私もここまでか」
少女は死を覚悟する。怒りの業火をこの雌豚にもくらわせるのだと、デスコヴィの最後の抵抗が襲いくる。だが・・・・・・
ーースパアァン
背後よりゆっくりと近づいていた誰かが、剣で女王の首を勢いよく切り落とした。
「は?・・・・・・なんで・・・・・・ここまで近・・・・・・気づかな・・・・・・」
気づかない。気づけるわけがない。魔力が無いのだから。圧倒的不運と引き換えに手に入れた、天然のステルス能力ーータダの進が、今隠していた牙を剥く。
「私だって・・・・・・綺麗・・・・・・・可憐に・・・・・・」
薄れゆく意識の中、放った声にならない声。それが女王の遺言となる。遺言ではなく願いだったのかもしれないが。
「心は・・・・・・後からいくらでも綺麗にできるだろ!・・・・・・そうすれば、慕われただろ・・・・・・こんな死に方せずに済んだだろ!」
流血し、満身創痍の中、進は掠れた声で叫ぶ。彼女はどんな人生を歩んできたのだろうか。同情できる何かはあったのかもしれない。もう何もかも遅く、決して許されるような人間ではなないが。
「あんたももう、お休み」
フォランから慈悲の言葉が放たれる。鎌を振り上げ、それを降ろせないまま、ジョーカーは消えていく。
「デーレーロー・・・・・・デーーン・・・・・・」
消滅する寸前、額のマークはハートに変わる。女王が苦痛を味わうことは、もうない。
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