第7話  デュール谷

 デュール谷は、銀の森から北方にあり、広大な面積を誇る谷地帯だった。

 古くから、銀の森との縁続きで、降嫁したロイル家の姫がロアの実家のフレイドル家には何人もいた。

 ロアの家は、広大な谷の谷長たにおさの家系なのだ。


 魔法使いは、イリアスの血を継ぐ者から多く出ると言われていた。御多分に漏れず、光の神の直系の子孫を名乗るエル・ロイル家の姫が多く降嫁しているフレイドル家には 、強い魔力の者が多く生まれるのだった。


 ロアンもその一人だ。幼い頃から、人間よりも精霊を自分の子分のように扱っていた様子見て、行く末をを案じた両親は、七歳の時に問答無用で学び舎に入れたのである。


 ロアンにしてみれば、五月蠅い監視のババアの目が無くなったのでラッキーであった。

 あれは駄目、これは駄目。とダメダメ尽くしで思うように魔法も試せなかったのである。


 学び舎は、窮屈だけど、色々なことが学べるところが気に入った。

 精霊との契約の仕方。魔石の作り方。ロアにとっては一番充実していた時期だ。


 ここ一年ほどは、授業も実習も面白くなかった。

 何故なら、ロアには全部出来る事なのだ。

 飛んでみせろと言えば飛べるし、水鏡の術をやってみろと言わればやってみせる。

 ロアは、魔石を作ってクラスメートの応援をしていた……のに……。


 魔法学見習いコース三年目という微妙な時期に放校されて、家族は呆れかえっていた。


 ロアンの家族は、谷長の爺リスティン、神殿付属の魔法使いのエイル、兄のイアンの四人である。

 リスティンの嫁が、ロイル家からの姫であったが、今は別に暮らしている。イアンは、学び舎を出た後に西域で魔法使いになったが、Aランクにしか なれずに肩身が狭くて谷に帰って来れずにいる。


 リスティンとパーシアが、まず対峙して座って挨拶をした。


『ご挨拶申し上げます。時空を超えて来られた竜族のお方。光の神殿の方から、知らせは来てます。そのお転婆ガキを手懐けることが出来ましたら、どんどんこき使って良いですからね~』


 爺は、上品な口調で下品な笑いを飛ばす。


「じいさま!!」


『とりあえず、はぐれ谷のほうに小屋を建てさせている。それまではここにいなされ』


 ここでもロアンの意見は無視された。

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