私と妹

「じゃあ、また明日。柚木原さん」

「うん。ばいばーい」


 ゲームセンターのメダルゲームでボロ儲けした帰り道。咲楽の家の前で分かれ、私は一人静かに家に向かう。言いたいこと、思いついたことは大体咲楽に聞いてもらったから、余計に静か。でもどうせ明日会うまでにいっぱい言いたいこと溜まってるんだろうな、とぼんやり考える。あー、咲楽ってあんな「自分普通です」みたいな顔してるのにそれなりにおっぱいおっきいの犯罪的だよなぁ……。


「まーた変なこと考えてんの?お姉ちゃん」

「……あ、一葉」


 唐突に背中を叩かれて振り返ると、そこにはギャルチックな金髪美少女。誰かと言えば、私の妹、柚木原一葉かずは。中学3年生。細いなー、という身体をしている。多分括り的にはみんなに程良く優しいギャルだろうか。


「あ、分かった。氷室さんでしょ」

「……バレたか」

「うん。「なんかえっちなこと考えてんだろうなぁ」って思って。お姉ちゃんがそういう目で見てるの氷室さんだけじゃん。同級生のこと性的な目で見てんのよくよく考えたらマジイカれてるよね」

「別にそれ以外の目でも見てるし。夏が楽しみな訳じゃないし」

「「水着見たいです」をちょっとエモっぽく言うの止めん?」


 そう言って、後ついでに「カバン持って」と私にスクールバッグを押し付けながら一葉は隣に並んでくる。


「えー、ってかお姉ちゃん告ってくる男とか死ぬほどいんじゃん?なんで女の子なん?」

「いや女の子が良いんじゃなくて咲楽がいいの。確かに男よりも女の子の方が好きでだけど」

「ちなそれいつから?」

「……いや、物心ついた時から……?」

「は?え嘘、性の目覚めプリキュア?」

「……いや、でも……?」

「冗談だよ?せめて否定せん?ウチのお姉ちゃんの評価「見た目が良いだけの変態」とかでかたまるよ?」


 見た目が良いだけの変態、そう言われて頭の中でそれっぽいキャラクターを想像する。「人気出るタイプのキャラじゃん」と答えると、一葉は「完璧美少女やめんの?」と質問を質問で返してくる。


「……咲楽以外には無理」

「じゃあ死ぬ気で氷室さん以外には……いや、隠せてんなお姉ちゃん……」

「お、再評価路線だ」

「んなわけ」


 そんなことを言ってる内に真っすぐ行った先に家の屋根が見えてきて、ラストスパートだなぁとぼんやり考える。


「そういえば一葉そろそろ軽音部のライブでしょ?ボイトレ大丈夫?最悪代わってあげるけど?」

「ウチの人気全部持ってかれるから止めてくんない?人力ボカロな人間はお呼びじゃないし」

「えーケチ」

「そんなに言うなら文化祭でやれば良くない?それこそ氷室さん誘ってさ」

「あ、そうしよ。きまりきまりー」

「かっる」


 先にドアノブに手を掛けたのは一葉。開けると、母さんが気付いたらしく「おかえりー!」と声を張る。


「今日の晩御飯ガーリックシュリンプだからー!」

「わーい!」

「わーい!」


 こういうところは、良く似てる。

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