しまった!
絵里の語る、シャチとカツ夫達のリーダーの闘いが白熱する。息を詰めて、拳を握って、絵里を見つめる子供たち。
キッズスペースを通りがかった人々は、朗読会のような雰囲気に足を止めては様子を窺う。
が、周りの変化にも絵里は気付かないまま、子供達一人一人の顔を見ながら、ストーリーに思いを巡らせつつゆっくりと語り続ける。
(ちょっと怖がられちゃうかも……でも、思い付きだからだからっていい加減なお話にはしたくない。この男の子を少しでも喜ばせたい。もしできるなら、みんなにも友情、絆、頑張りの大事さを届けたい……!)
『……何度も体当りしていたリーダーは、疲れてフラフラしていても、シャチのヤツと必死に戦ってた。みんなを絶対守るんだ! 絶対守るんだ! って気持ちが、僕らにもすごく伝わってきたんだ。僕らは悔しかった。悲しかった。楽しくみんなで泳いでいたいだけなのに』
「リーダー……リーダー!!」
「がんばって! 今、僕も行くから!」
「私達も『どっか行っちゃえ!』ておっきな声出そうよ!」
リーダーの窮地に、思い思いの声を上げる子供たち。
だが。
子供たちの声が響く中、ハプニングが起こった。
「りぃだを、いじめちゃ……メなのぉ! はち、ばかばか、ばかぁ! ……ぐすっ……うううう、うぇぇぇ……! わあああああああ!」
母親の傍で物語を聞いていた一人の幼い女の子が、泣き出したのだ。
(しまった! リーダーが負けそうで悲しくなっちゃったのかも! あああ、どうしようどうしよう……)
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