大魔道士様が、部下と。異世界(っていうか魔王様のいる魔界)で、家庭菜園な事件!

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 カップ麺にピーナツバターを入れて食べる。それが、魔界が平和な秘密です。ちがうって。

魔王様の部下には、個性的なやつが多い。

「魔王様からいただいたピーマン、じゃなかったパプリカ、どうなったかなー?」

今つぶやいた、大魔道士も。

「大魔道士様に、お伝えいたします!」

「どうした、部下!」

「畑のアレが、すっかり赤くなりました」

「アレ?優勝?」

「ちがいます」

「とにかく、赤くなったのだな?」

部下からの報告に喜び、畑にかけていく大魔道士。

「本当だ!」

大魔道士と部下の目の前にあるのは、畑とパプリカ。

異世界でも、家庭菜園が流行。

「畑デスナイト」という新クラスもできた。

「大魔道士様?このパプリカ、収穫してもよろしいですか?」

「大切にな。元は、魔王様からのいただき物なのだぞ」

その通り。

魔王様よりの、ほうびのアイテム。

魔王パプリカの種を、いただいたんだ。

ほめられたころが、なつかしい。

「大魔道士よ、良くやった!」

「ははっ」

「魔王城のまわりをうろつく勇者どもが、転んでたんこぶを作ったというではないか」

「ふふ…。やつらの進む道に、こっそり、バナナの皮を置いたのですよ」

「ほう。あの皮って、本当にすべることがあるのか」

先月は、勇者たちの荷物の中に、期限切れクーポン券を入れてやった。

「良くやった、大魔道士!勇者どもは、店のレジで大混乱だろう」

すべてが、良い思い出。

「収穫をするぞ、部下よ!」

「はい」

「こら、部下!力まかせに引っぱったら、ダメだぞ」

「はい?」

「少しこう、クイっとひねるようにして収穫してみなさい」

「野菜、大好き!」

「私も、大好き!」

「大魔道士様?このパプリカ、魔王様の魔法でもかけられているんですかねー?」

「呪い。なーんて、冗談」

そこで、事件。

収穫できたパプリカを愛してさわりすぎた大魔道士が、それに穴を開けてしまったのだ。

ちょうど、そのとき。

ブルルルル…。

大魔道士の携帯電話に、魔王城から連絡が入る。

「はい、大魔道士です」

「暗号を言え」

「カップ麺にピーナツバターを入れて食べると、意外に美味しい」

「良し」

「…ええ?魔王様の腹に、穴が開いた?」

それを、部下が盗み聞き。

「大魔道士様のせいですよ?パプリカに、穴…」

「部下よ?」

「はい」

「お前、野菜友だちだよな?」

魔界って、ずるいな。

魔界だけに。


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