第16話 デート


 

 うーむ……指輪が出来るまでの一週間は何をして過ごそうかな。


 資金はドラゴンをぶっ飛ばしたお陰で潤いまくってるからな。

 金稼ぎをする必要も無い。


「じゃあ私とデートしよ!!」

「サラッと心を読むな。まあ良いけど」

「ほんと!?じゃあ行こ!今すぐ行こ!!」

「分かったけど……僕の服、こんなのしか無いよ?」


 僕は自作の服を取り出す。 

 服を作れると言っても簡単な物だけだからね。

 流石にお店みたいな凝ったものは作れない。つまりデートに着ていく服が無い!


 因みに追放された際に着ていたちょっと良い服はボッロボロだから着れたもんじゃない。


「うーん……じゃあまずは服を見に行こう!私が選んであげるねー」

「わ、分かった……」


 めちゃくちゃ長くなりそうな予感がするんだけど!!

 くっそー帰りに適当に買ってこれば良かった。


 まあ後悔先に立たずって事で大人しく着せ替え人形になっとこ。


 僕はアイに引っ張られて服屋に向かった。

 

 で、


「どうしてこうなった」


 僕は今、試着室にいる。

 そして僕が着ているものは……女物。


 ち、違うぞ?僕が自分の意志で着たわけじゃないぞ?

 なんかアイが選んだ服の中に入ってて「これは無いだろ僕は男だぞアホなんか」と思ってアイに返そうと思ったら無理やり着せられた。


 抵抗しようとすれば出来たはずなんだけど、アイが近くていい匂いがしてもうなんかどーでもいっか!!ってなっちゃったんだよね。


「どーでもよかねぇわ!!」

「ハルくん可愛い!」

「そりゃどうも!!」


 アイがキャッキャ騒いでる。

 クソぅ……男のプライドがズタボロになっていく。


 お姫様抱っこに女物の着用……な、なんか泣きたくなってきたな。


 僕が涙目になってるとアイが店員さんから何かを受け取る。

 めっちゃ嫌な予感がする。


「次はこれね」

「……」


 僕は泣いた。

 いやこれは泣くと思う。フリッフリのスカートだぞ!?

 こんなもん着たらなにかの趣味に目覚めちゃいそう!!

 いや目覚めないけど!気合で目覚めさせないけど!


「やめろー!!死ぬ!男として死にそう!!」

「ハルくーん」

「ちょっ……来るなぁ!」

「キャッ」


 僕は結界でアイを吹き飛ばしてしまう。

 やっべぇ!つい吹き飛ばしてしまった!!

 

「あ、アイ!大丈夫か!」


 僕はアイに近づき、手を伸ばす。


ガシッ


「え?」

「逃さないよ♡」

「お、オワタ」


 帝都で一人の男の悲鳴が響いた。



「グスン」

「ハルくん、ごめんって。機嫌直して?」


 あれからフリフリスカートを着せられた後、ちゃんと選んでくれたらしい。

 僕はフリフリスカートを着せられたショックでほぼ覚えてないけど。

 もう僕フリフリスカート見ただけで倒れそう。もうトラウマだよ。


「あそうだ!美味しいスイーツのお店知ってるけど行く?」

「行く」

「おぉ食い気味だねぇ。なるほどなるほど、ハルくんは甘いのが好きっと」


 僕はアイに連れられたお店で甘い物をバク食いして機嫌を直した。

 甘い物さいこー!!


 因みに本日のデートはこれで終わりになった。 

 アイが服でめちゃくちゃ時間かけたからな!


 僕たちは宿に戻った。

 そういえばさ、今日一回もルイの事見てないんだよね。

 宿にいなかったんだよね。

 女騎士さんも。


 そういえば昨日デートに行ったってアイが言ってたな。

 ……おっと?おっとっと?

 

 宿にいたらよ〜く聞いてみるか。


 そう考えながら僕はルイの部屋に向かった。

 あっいた。


「ルイ」

「兄さん、帰ってきてたんだ」

「おう。昨日な。お前、昨日からルナさんとデートだったらしいな」

「えっま、まあ……」

「今日の朝、お前の部屋行ったけどいなかったな」

「っ!」

「どこ行ってた」

「そ、それは……」

「正直に言いなさい。マイブラザーよ」

「……ちょっと遠くまで行き過ぎちゃって。その、違う宿を取って」

「なるほど。同衾したか」

「どっ!?してませんよ!?部屋も別でとりましたから!!」

「ちっ、つまらん」

「つまらんってなんすか」


 てっきりヤッてきたんかと思ったわ。

 全く、ヘタレだなぁ。


「兄さんもヘタレじゃないですか」

「心を読むなマイブラザー。あと僕はヘタレじゃない」

「へぇー。あんなにアイさんが好き好きオーラ出して、襲って!!って言ってるのに襲わないのはヘタレと何が違うんですか?」

「うううううるせぇ!!もう怒ったぞ!!お前にかけてる結界全て解いてやる!」

「わーわーわー!!ごめんって兄さん!」


 こんな感じで兄弟でワチャワチャして、その日は終わった。

 

 その日の夜もアイは僕のベッドに潜り込んでいた。

 もう追い返すのが面倒くなってそのまま寝た。

 で、翌日。目が覚めたらまたまた扉が外れてた。いやどうなってんの?


「またアイが襲いかかってきたのか?」


 僕はアイに疑いの目線を向ける。


「違うって!私はただハルくんのベッドで寝てただけなんだって!でも多分ハルくんが眠った瞬間に吹き飛ばされたんだって!!」

「……あーそういう事ね」


 寝てる時の結界に触れた者は自動で吹き飛ばすようにしてるからなぁ。

 一応、アイが吹き飛んだせいで宿が壊れないように威力は下げたんだけど扉は耐えられなかったか。


 まああの距離で寝てたら結界にも触れるよなぁ。


「うん、なんかごめん」

「ホントだよ!私何回吹き飛ばされればいいの!」

「いや殆どはアイが僕を襲おうとしたからだろ」

「うるさぁい!ギューしてくれないなら許さないもん!」

「もんて。可愛いなおい」

「せやろ?ほれ、ギュー。ハグハグ!」

「……分かった」

「あっ結界は解いてくれる?そっちの方が嬉しい」

「分かってる」


 僕は結界を解いてアイとハグする。

 温かいし柔らかいし良い匂いがする。

 フローラルないい匂いですね。


「「ニヤニヤ」」

「「!?」」


 部屋の外でルイとルナさんがニヤニヤしながらハグしてる僕らを見ている。

 そういえば扉がぶっ壊れてたんだった!


「兄さん、キスです!いけ!いけ!」

「うるせえ」

「いでっ」


 僕はルイの頭にチョップをかます。


「姫様!今です!チューをかますのです!ついでにし、舌もぶち込むのです!」

「出てって!!」

「姫様、自分で言ってたじゃないですか」

「他人に言われるとなんか恥ずかしいの!あと私はハルくんがしてくれるまで無理やりやらないもん!!」


 おっと?

 僕とアイがキスするには僕が最初にやる必要があるのか?

 嘘でしょ?僕、完全に受け身に回ろうと思ってたんだけど。


「兄さん、頑張って」

「……ガ、ガンバリマス」


 僕は指輪を渡す時に頑張ろうと思った。

 出来るか分からんけど。


 ワンチャン寸前でチキンになるけどな。

 まあそこは未来の僕に任せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る