第9話 写真並べ

 楓の昔のCDのジャケットをテーブルに並べて見ていたら、娘が乱入してきた。若い男の写真を並べて見ている母親ってどうなんだろうか。


「ママー。何やってるの?」


「えーっと、お歌のCDを見てるんだよ」


「ママ、この人が好きなの?」


「まぁね。この人カッコいいでしょ?」


「わかんない。でも、これ、さやちゃんに似てるよね?」


 さやちゃんと言うのは娘の名前である。娘は自分のことをちゃん付けで呼んでいた。


 そう言われてみると……娘の指差すジャケット写真は娘に酷似しているではないか。


 まず、泣きぼくろと鼻の隣のホクロの位置が全く同じだった。さらに、顎の右側のホクロの位置まで。


 一重の目の感じも似ている。色白で童顔で。全体的な雰囲気もそっくりじゃないか。


「ヤダ! さやちゃん、ホントだ!! そっくりだね!!!」


 ちょっと待って。

 かなりびっくりした。

 なんでこんなにそっくりなんだ??


 まさか、さやちゃん、楓の子ども……?なワケあるか!と脳内でボケ突っ込みした。


 さやちゃんは、パパ似だ。

……と言うことは、パパと楓が似てるってこと?


 ブログを進めて見ていくと、楓のスナップ写真が時々アップされていた。三十代後半の楓は、その年齢に見えないくらい若く見えた。


 うーん。

 認めたくないけれど、楓の方が旦那より百倍格好いいけれど、性格とか全然似てないけれど、楓と旦那は顔の系統が同じだと認めざるを得ないな。


 高校生の頃から最近まで、楓のことをすっかり忘れていたというのに、楓と似た系統の旦那を無意識のうちに選んでいた自分に驚いた。


 誰とも共有できないような、笑っちゃうような偶然の一致に一人興奮する。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る