惑星育成ゲーム

加賀倉 創作(かがくら そうさく)

惑星育成ゲーム

瑠璃色るりいろの惑星に、一隻の宇宙船が接近している。


 宇宙船は停止すると、何か金属の塊のようなものを惑星に向かって射出した。


 塊は海に着水し、二つに割れた。中から謎の液体が広がった。


 U星人は、それを見届けると、こうつぶやいた。


「よし、バクテリアが海に入ったようだな。今回はどんな惑星に成長するだろうか」


 地球に投入されたバクテリアは、進化を重ねてアメーバのようなものになった。


 その後、ゴカイの仲間、カニの仲間、クラゲの仲間、貝の仲間、魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類が生まれていき、ついに人型の生命が誕生した。


 ***


 バクテリアの投入から二十五億年後、再び宇宙船が地球の上空に現われた。


「おおッ、ついに出たぞ、人型の高等知能生物だ。これは大会優勝間違いなしだな」


 宇宙船の中で、地上を映し出したモニターを見ながら、U星人がはしゃいでいる。


 彼の住むU星では、『惑星育成ゲーム』なるものが流行していた。


 生命が生存できそうな惑星を見つけて、命の種をまき、その進化の過程を楽しみながら、最終的にどれほどの高等文明を作り上げられるかを競うゲームである。


 U星人は非常に寿命の長い民族で、彼らが長い人生を楽しむ上で重要な娯楽であった。


 U星人の育てた惑星では、文明社会が発達していた。


 大規模な農地が広がる農村部と、高層ビルやハイウェイが立ち並ぶ都市部とに分かれ、二足歩行の生命体がいたるところで歩いていた。


 彼の育てた瑠璃色の惑星は、大会で見事一位を獲得した。


 彼は嬉しくなって、仲間のU星人にも惑星育成の結果を見せようと、小艦隊を率いて惑星を再び訪れた。


 到着すると、地上を映し出すモニターを確認した。連れのU星人は感嘆の声をあげた。


「おぉ、確かにこれはものすごい発展ぶりだな」


 モニターをよく見ると、地上の生命体は、こちらを見上げているようだった。


「我々の存在に気付いたみたいだ、こちらからも信号を送ってみよう」


 宇宙船のライトを点滅させ、合図を送ってみた。


 すると、地上から大量の飛行部隊が発進するのが見えた。


「彼らは飛行機の技術も有している、これは感心した。わざわざこちらまで迎えに来てくれるようだ」


 しかし、U星人たちの予想は外れた。


 なんと飛行部隊は、攻撃を仕掛けてきたのである。


 U星人の小艦隊は不意を突かれ、ひとつ残らず撃墜されてしまった。


***

 

 墜落した宇宙船に、武装した現地人が駆け寄ってきた。


 彼らはまだ息のあるU星人を連れ帰り、尋問した。


 当然言語の違いで分かり合えず、U星人は侵略しに来たと勘違いされてしまった。


 そして、瑠璃色の星の住人は、墜落したU星人たちの宇宙船を鹵獲ろかくした。

 

 彼らはそれらを分析して復元し、コピー品を大量生産することに成功した。


 こうして、瑠璃色の星の住人は、安全に宇宙航行する術を、手に入れたのだった。


 宇宙船の記録からU星人の住む惑星を特定した彼らは、数百万隻の宇宙船からなる大艦隊を率いて、復讐しに旅立った。


 瑠璃色の星の住人は、遠く離れたU星に、難なく到着した。


 そして彼らはU星人らに、こう言い放った。


「この星を我々の植民惑星とする」

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惑星育成ゲーム 加賀倉 創作(かがくら そうさく) @sousakukagakura

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