第6話 ブラッド・ファミリー

「なるほど、なるほど。お名前は璃と言うんですね。覚えておきます。」

 大塚の暴走のため、俺は危うく二人から塚部と言う意味のわからない名前で呼ばれるところだった。その為、俺は釈明する必要があったのだ。俺の名前は決して塚部では無い。そもそも、大体誰と間違えてるんだ?

「では、皆の衆。こちらに注目。」

 橋田そう言うと皆が一斉に注目する。橋田はドヤ顔に近い表情をしていた。

「それでは、第二十七回。闇会議を始める」

「今回話し合うことは、この瑠くんの、役職についての決定と意見をしていこう。」

「それでは、話し合い.....」

「ちょっとまて、役職の決定ってなんだ?」

 俺は早々に始めようとする橋田を止め、話を遮るように被せた。

「それは、我が組織の役職ですよ。勿論組織となれば役割分担が必要不可欠であるだろう?その為、キミには何かしらの役柄を担ってもらう必要があるぞ。」

 ああ、そうかい。そもそも俺は組織に入るだなんて一言も言ってないんだがな。まあ、でも多分言っても言わなくてもこの際一緒だろ。なぜなら既に俺が加入したこと前提に話が進んでいるからだ。つまりもう無闇に突っ込むというのも野暮だろう。じゃあいっそのことコイツらに任せてしまおう。

「まあ、一応に、自己紹介がてら、私たちの役柄、役職の説明をしておこう!!」

 橋田がそう言うと俺以外のメンバーは立ち上がり、意気揚々に語り出した、

「我は、説明不要だが、この組織〈ブラッド・ファミリー〉の生みの親にして、名付けの親。団長の橋田だ!!」

 やはりダサい。血の家か。正直センスを疑うね。

「私はなんでこの組織に入ったかなんて分からんが、とにかく頭脳担当だ。何故頭脳担当になったのかよく分からないがとにかく大塚だ。」

「わたくしはこの部屋の掃除担当、シロネです。あまり大した役柄じゃ無いので正直地味ですが」

「と、言う感じだ。」

 そう言われてもな。

 大塚が頭脳担当ってのもまずいだろうし、シロネさんが掃除しかしてないってのも、もはや組織ってか部活。いや、部活ですらない。もはや同好会の域だ。

「と、言うわけで貴様の役柄はくじで決めまーす。」

「おいおい、話し合いがなんとかって、言ってじゃ無いか?」

「ふふふ、あくまでもそんなのは建前だろ?あくまでも我らの組織は闇めいたもの。ならば決め方も闇らしいものをしようと。」

 だから大塚が頭脳担当とかいうメチャクチャなものなのか。確かに冷静に考えてあり得ない。話し合いになれば余計に明らかだろう。

「では、この闇箱から引いてもらおう」

 橋田は大きな黒く染められた抽選箱を俺の前まで持ってきた。

「うわぁ、懐かしいなこれ。」

 それを大塚は懐古的な目で見ている。

「安心してください。変なものは入って無いですよ。」

 そう微笑みかけるシロネさん。ほんとですか?あなただけが頼りなんですよ。

 まあ、どうせ碌なことは書いてないであろう。掃除担当とか、買い出し担当とかそんな感じの雑用しか残ってないだろ。嫌だな。

 そう思いながら俺は箱に手を突っ込み思いっきりくじを掴み出す。

 皆が注目する中、俺はくじを開けた。

「団長.....補佐.....?」

「ふふふははは、数あるくじの中で良いものを引きましたね璃くん!!」

 何がだ?何処が?

 もはや字面だけで想像し得る。

「一体俺は何をやらされるんだ?」

「出会い頭に言った、相棒と同義です。私の雑用などをさせるので覚悟しておいてください。」

「まあ、何が出ても既に相棒なのは確定ですけどね。」

 果たしてこれをする意味があったのかどうかは、皆の判断に任せる。とにかく、俺は見事にブラッドファミリーという胡散臭い厨二病の戯言クラブの正式メンバーなったらしい。なんと哀れな事か。俺はこのブラッドファミリーの一員として、生きていくことになった。

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