第5話 現れし闇の変人達‼︎

 長かった商店街をようやく抜け、見えてきたのは人があまり立ち寄らないような山であった。森林が生い茂っていたが、人口的に作られた道があった為、そこを通る事になった。

 そして、小さな小屋のようなモノを発見した。

「さあ、つきました。これこそ我々が構える秘密基地、その名も「ヘブンズハウス」だ!!」

 もう名前については気にすることも無い。ただそれにしてもかなり簡素な作りだ。取ってつけて立てたかのようなボロ小屋。手作りなのか?手作りなら凄いっちゃ凄いが、手作りでないならば無論問題ありだ。

「此処でいつも何してるんだ」

「いつもは、仲間達と共に集会をしたり、話合いなどをしたりしたりしますね。まあ、つまりは此処が活動拠点になりますね。」

「ふーん」

 そして、橋田がボロボロになった扉を開けた。扉は館のような音を鳴らしながら開く。キィー、と怪奇な音だ。

 そして、小屋の中を見てみると既に人がいるようだ。ただ俺はこの人影に少し見覚えがあった。

「コイツは.....」

「おお、橋田じゃ無いか!!待ってたぞ」

 見た事がある。この人物に俺は見覚えがあった。

「ん、その横にいる少年は誰だ?」

「我が組織の重要メンバーを連れてきた。」

「それはそれは。では挨拶を賜る。私は木見奈高校2年f組の、えっと。なんだっけ。」

「大塚 明菜でしょ、どんだけ忘れるの?」

「そ、そうそう。大塚だ!!」

 指を差し嬉しそうに自分の苗字を思い出す事ができたようだ。

 そうだ、コイツは学校一のバカ、大塚 明菜。常に頭にバンダナを巻き、さらに何故かリストバンドをしている奇人。知能指数は恐らく学校中何処を探しても一番となり得るレベルのバカだ。

 学年テスト最下位。しかし、IQは自称300あるらしい。アホでもあるな。

 果たしてどうやってこの高校に入れたのか。

 ってか、本当に名前忘れるってどんだけアホなんだよ。

「まあ、こんな奴だが、我々は既に同志だ。我が兄弟。歓迎するぞ。」

「あ、ああ。俺は、『白緋金 璃』だ。宜しく.....」

 俺の名前を聞いて大塚はうんうんと頷く。

「ああ、宜しく。塚部くん」

 そういうと大塚は俺に手を差し出す。

「違うから。塚部じゃ無いから。」

 悪意のない顔で大塚は、マジで間違えているのだろう。それにしても誰と見間違えているんだ?

「あれ、そうなのか。それは失礼したな!!塚部くん。」

「だから違うって.....」

 その時、また扉が開いた。

 また館みたいな音を鳴らしながら扉がゆっくり開いてゆく。

 皆が注目する中、そこには白いロングヘアーの女子高校生がいた。流石にこの人に見覚えは無かったが、今度はなんなんだ。この変人たちの流れだと恐らくこの人も変な人なんだろうと、勝手な偏見で俺は決めつけていた。

「あら、皆さんいらしたのですね。そちらの男性の方はどなたでしょう。」

 しかし、思ったよりぱっと見は一番マシそうに見える。気品と言うか、品があるというか....

「ああ、今日から加入する、我がメンバーの塚部くんだ。」

大塚が明らかに余計な事を言い出す。

「違うから、俺は塚部じゃないから。」

 すると、それに見かねた橋田が奥の棚からガムテープとハサミを持ってきた。ガムテープをハサミで程よい大きさに切ると、それを大塚の口元にへと運ぶ。

「さあ、明菜は一旦お口チャックしましょうねー。」

 そう言いながら橋田はガムテープで口に封をする。その様子はまるで監禁拉致された人質のようだった。

「私の名前は、シロネです。お名前は塚部様で宜しいでしょうか?」

「だから違うって、俺は『白緋金 璃』だ。」

「もがもがもが、塚.....部。」

 おいおいマジかよ。勘弁してくれよ。大塚はガムテープ越しにも喋ろうとしている。これはもうバカとかそな事を除いて、もはや恐怖すら覚える。自分を貫くのは結構だが、いい加減学習というものを知ってくれ。

 そのせいで橋田も、シロネさんも、キョトンとした様子だ。

 どうなってしまうんだよ、俺は。

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