第10話 地図の指し示す場所へ

「———ここらか……」

「はい、地図にはこの辺りだと書いてあります」


 俺達は黒装束でとある町中の裏路地にやって来ていた。

 表はそこそこに賑わっている繁華街のようだったが……一変して裏路地は酷く閑散としており、夕方というのも相まって薄暗い。

 まぁ人くらいの大荷物を取引するならこのくらい静かな所の方がいいか。

 

 何て思いながら歩いていると……路地裏で有り勝ちなヤクザやマフィアみたいなタテゥーをした3人組の男達が目に入る。

 もしかして絡まれたりするのだろうか?

 

「「「…………」」」


 若干ワクワクしていた俺とは裏腹に、男達3人は危険を察知したように露骨に俺達を視界に入れないようにしてやり過ごそうとしていた。

 どうやらガチの裏の人間はある程度相手の危険度が分かるらしい。

 まぁその力がないとやってけないわな。


 少し感心しながら俺達も今は他にやることがあるので、男達をスルーして指定された建物に入る———。



「———ロード様」

「分かっている」



 ———と同時に俺の瞳目掛けて放たれた細長い針のような暗器を2本指で挟んでキャッチ。

 続けて放たれた短剣は俺が動く前にアルテマが全て弾き飛ばした。


「良くやった、アルテマ」

「勿体なき御言葉」

「———私が依頼した者じゃないな……一体何者だ?」


 そう言って部屋の影から顔の下半分を隠した男が現れる。

 男はアルテマではなく俺を見ており、一見隙だらけに姿を表した様に見えて隙一つなく臨戦態勢を崩さない徹底振り。

 

 ……流石ゲーム史上最も謎多きダークワールドの残党ってところか。

 そこらの中小組織とは練度も意識もレベチだな。

 これは完封するには、少しの油断が結果を左右するかもしれんな。


 そう瀬踏みした俺に代わってアルテマが口を開く。


「……お前がヴォルフ?」

「此方の質問に答えたなら言ってやろう」

 

 男は鍛えている者でも気絶するようなアルテマの殺気を受けながら、顔色1つ変えることなく言葉を返してくる。

 まるで人間じゃないようだ。


「ふむ……2対1の状況で俺達と駆け引きしようとするか……面白い。俺の名は……ロードだ」

「……っ」

「ろ、ロード様!?」


 名前を明かした俺に、男がまさかこれほどあっさり答えるとは思っていなかったのか驚いた様に片方の眉をピクッと動かし、アルテマが俺の名前を読んで男よりも驚いた様子を見せた。

 だがな……アルテマ。


 ……本当にやめてくれ。

 ただでさえ自分の口から俺の過去の失態の1つである厨二病全開の名前を羞恥を抑え込んで言ってるのに、その後に復唱するのは本当にやめて。

 マジで羞恥で言葉が話せなくなるしお腹痛くなるから。


 俺は羞恥を顔と言動に出さないよう細心の注意を払いながら口を開く。


「どうした。俺は名乗ったが……お前は名乗らないのか?」

「……っ、私はヴォルフだ。まさか……貴様があのオーバーライトのトップだと言うのか……?」


 その問い掛けに、俺は敢えて言葉ではなく小さく笑みを浮かべることで返した。

 同時にヴォルフの顔と気配が緊張で張り詰める。

 

「……なら、そっちの女が序列1位のアルテマか?」

「ご想像にお任せしよう」

「……ふっ、どうやら私は最悪の者達に出会してしまったらしい」


 ヴォルフが続けて『準備していて良かった』と呟いた。

 そんな彼の様子にアルテマが眉を顰める。

 

「何を言って———」

「———お前達であろうと、は効くだろう?」


 そんなヴォルフの言葉と同時に、全身の感覚が無くなる。

 しかもアルテマも俺と同じ状況に陥っているらしく、その場を動けないでいた。

 

「ふっ……格上を想定して【身を縛る楔毒】を予め発動させておいて正解だったな」


 魔術か……一体いつ発動した?

 トリガーになりそうなのは……あの暗器か!


 てっきり針に毒が塗られていると思っていたが……あの針はどうやら毒よりもよっぽど面倒な魔術発動の媒体となっていたらしい。

 ならアルテマは短剣か。


「それでは私はここで失礼する。貴様らには逆立ちしても勝てないのでな」


 そう言って窓に向かうヴォルフの肩に———。




「———俺が、逃がすと思うか?」




 俺はトンと手を置いた。


「っ!?」


 ヴォルフは咄嗟に俺の手を払い除けようとして———俺の手が全く離れないことに驚愕の表情を浮かべた。

 俺はもう片方の手で彼の首を掴み、持ち上げれば……ヴォルフは苦しそうに呻きながら困惑気味の声を漏らした。


「ば、馬鹿な……何故動ける……!? こ、この魔術は……に、肉体系の魔法使いにでも通用するはず……」

「生憎、俺に状態異常は効かん」


 実際は、支援系の魔術を使うか【身体強化】の魔術の応用で全身の全ての細胞を意図的に活性化させて毒への抵抗を作っているだけなのだが……アルテマ曰く、毒に侵されている状態でそんなことが出来るのは俺やゼノンくらいらしい。

 化け物みたいに見られたときはちょっと傷付いたな……。


 そして今回は、魔力の操作が簡単な【身体強化】の応用で治した。

 こっちの方が回復は遅いが……その代わり2度とその毒には侵されなくなる。

 

 因みに、アルテマも既に毒は解除している。

 何ならアルテマは支援系の魔術においては俺を超える腕前なので、掛かった直後には既に治っていたはずだ。

 今回は久し振りに俺が動くから見物でもしていたかったのだろう。


「ふっ……最初から私に勝ち目は無かったということか……」


 ヴォルフは俺の首を掴まれながら呟き、何かを噛み砕こうとして———俺がヴォルフの口の中に指を突っ込んだ事によって何も起きなかった。

 同時にヴォルフが俺から発せられる莫大な可視化された漆黒の魔力と、それに同調するようにして溢れる濃密な殺気に息を呑んだ。


「……おい、何勝手に死のうとしている?」

「ま、待て……ま、待ってくれ……」


 お前はさっきからずっと騙されてたようだけど……。




「———今は心穏やかではなくてな。そう簡単には……死ねないと思え」




 さて、お前の知ってる情報を全て吐いて貰おうか。

 

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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!


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乙女ゲーの主人公(美少女)を陰から助けるために最強の組織を作ったんだが、部下に愛され過ぎてしんどい あおぞら @Aozora-31

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