警察官、異世界にて少女を買う

爆速ヤンキー山田

警察官、異世界にて少女を買う

「ふう」


最後のゴブリンを倒し息をつく。ここまではいいのだが、後の作業は気が進まない。心臓を抉り出して持ち帰れとか、蛮族の所業だろう。


ため息をつきながらゴブリンの死体にナイフを突き刺す。薬品の材料になるらしい。討伐の証明も兼ねているらしいが。それにしたって二足歩行の生物の内臓を取り出すというのは気が進まない。だが、町……特にギルドにいる男どもの容姿を思い浮かべると、蛮族という表現はあながち的外れでもないかと思う。


俺がこの世界にやってきてから数ヶ月。中世ヨーロッパ風の街並み。聞いたことのない国名。魔物とかいうファンタジーな存在。恐らくは異世界というやつなのだろう。朝起きたら何故かここにいたのだ。最初はそりゃ焦ったが、人間順応するもので、今ではちゃんと稼いでちゃんと暮らせている。


この世界の男はとにかく体が大きく筋肉モリモリ。考えれば当然だ。魔物は皆生命力が高い。低級の魔物はともかく、中級のリザードマンでさえ鱗が硬く重いグレートソードやバトルアックスでもなきゃ殺せない。話に聞く上級のドラゴンなんか、戦車を相手にする方がマシなのではないかと思う。そんな世の中なので、筋力の低い人間は役に立たない。淘汰というやつだ。必然的にマッチョが生き残る。日本にいた頃は細マッチョで通っていた俺だが、こちらではひ弱なもやし扱いだ。


こちらに来てからは苦労した。警察官をやっていたわけだが、俺が持つ専門知識なんか刑法くらいだ。そんなものは当然役に立たず。他の特技と言えば柔剣道に逮捕術だが、それも魔物相手じゃ大して役に立たない。剣道だってそもそもマッチョ主体の世の中だ。売っているのは思いっきり振ったら肩が抜けるんじゃないかという重さの武器ばかり。俺が振れる剣なんかは特注する他ない。まあ、そもそも既製品を買う金もなかったわけだが。


ともかく宿も金もない。幸い何故か言葉だけは通じたので職業案内所のようなものを探したところ、ギルドなるものを紹介された。だが武器も識字能力も持たないひ弱人間に紹介できるのは薬草摘みくらい。肉体労働もマッチョ基準らしく、俺の体を一目見て断られた。そんな人間に紹介される仕事だ。実入りは少ない。宿なんか借りたらそれで三日分の給料が吹き飛ぶ。野宿生活を強いられていたある日、ギルドの掲示板を見ると、内容は分からないが大きな数字が書かれている仕事があった。聞けば、魔物を討伐する仕事らしい。野宿生活に嫌気がさしていた俺はどうせこんな生活が続くくらいなら最悪死んでもいいかという考えで仕事に申し込んだ。しかし渡されたのは解体用の小さなナイフのみ。同行者は無し。向こうも、野宿生活の汚い男がギルドに通うのは嫌だったのだろう。要するに魔物に殺されることを期待していたようだ。しかし結果は無傷で討伐。高校時代柔道で全国まで行った腕はなまっていなかったらしい。二足歩行のゴブリンなら投げ飛ばすことができた。転ばせれば急所にナイフを突き刺すだけ。ゴブリンの心臓を持ち帰ると、驚かれたものだ。お陰で野宿生活から抜け出すことができた。それからは贅沢をせず金を貯め、なんとか体に見合う剣を手に入れた。そんなわけで、今は立派な対ゴブリン専門戦士というわけだ。


嫌々ながら全てのゴブリンの心臓を取り出し終える。さて、帰ろうか。


心臓の入った袋を持って街へ向かう。


「これ、今日の分です」


「いつもお疲れ様です! こちら、報酬になります!」


俺より背の高い受付嬢が心臓と硬貨を交換してくれる。


「そういえばあれ、なんて書いてあるんです?」


世間話的に聞いてみる。掲示板にでかでかと貼られた大きな紙。朝は無かったはずだ。数字と金の種類は読めるが、金貨50枚が出るらしい。それだけあれば一年くらい遊んで暮らせそうだ。


「あれですか? 奴隷の剣闘大会のお知らせですよ。一応、一般の参加も可能なようですが、真剣での戦いなので奴隷しか出ないでしょう。まあ、奴隷を持たない一般人には関係のない話ですね」


そう、この世界には奴隷制度がある。一応、奴隷の子供か犯罪者のみが奴隷となる決まりらしいが、奴隷商なんて連中がお上品にそれを守っているとも思えない。野宿時代に奴隷狩りに遭わなかったのは運が良かったとしか言えない。


「そうですね。ありがとうございます。それでは」


挨拶をしてギルドを立ち去る。適当に食事をとり、宿へ向かう。宿は町の西部にあるのだが、治安が悪い。お陰で宿代は安く済むのでそこはいいけれど。正直、ゴブリンの住む森より宿の周りにいる時の方が緊張感がある。ゴブリンなんてのは、隠れる知能が無いのか、彼らの中でそういう文化があるのか分からないが、攻撃する時は必ず大声で叫ぶ。不意打ちされないのだ。しかし人間は違う。盗み、殺しなんてものをする後ろ暗い人間はそっと後ろから近づく。悪意のある人間の方が数倍魔物より恐ろしい。


比較的治安のマシな大通りから宿のある裏通りへ移動する。すると、少女に声をかけられる。


「一晩、どうですか?」


驚いた。治安が悪い上宿の周りだ。当然娼婦は多い。それでも、ここまで若い…いや、むしろ幼いという表現の方が正しいような少女までもとは。


「悪いけど、他当たってくれ」


可哀想に見えるが、ここまで若い子を抱く趣味はない。


「お、お願いします……お客をとらないとご主人様に殴られちゃうんです……」


懇願する少女。見ると、確かに殴られた跡がある。


「……分かった。買うよ」


警察官の血が、見過ごせないと言っている。そういう行為をする気は毛頭ないが、金さえ持ち帰れば少なくとも明日は彼女が殴られることはないだろう。


「あ、ありがとうございます!」


「あそこに宿がある。着いてきてくれ」


「は、はい……」


不安そうな声。無理もない。これから知らない男としようという状況なのだから。


部屋に入る。少女はすぐに服を脱ごうとするが、


「脱がなくていいよ」


「え?」


意外そうな顔をする少女。


「そういうことをする気はないからな。金は払うから、今夜はここで休みな」


「い、いいんですか……?」


不安そうな表情で彼女は言う。


「ああ。金は……これで足りるか?」


先程換金した硬貨をまとめて渡す。裕福な暮らしじゃないが、幼い女の子を助けると思えば別に構わない。


「こんなに……」


驚いた顔をする少女。


「ベッド、使っていいぞ」


「それじゃあ、あなたはどこで……?」


「床になるな」


「そういう訳には……」


「君みたいな小さな女の子を床に寝かせたら、寝るに寝れん。気にしないで使ってくれ」


「でも……」


尚も遠慮する少女。


「じゃあ、金の代わりに命令を聞いてくれ。ベッドで寝ること。いいな?」


「え……わ、分かりました」


不思議そうな顔で頷く少女。


「あなたみたいな人を、いい人っていうんですかね……」


「どうだか。一晩しか救えないんだ、いい人とまでは言えないだろ」


「でも、いい人ですよ。私が今まで会った中で一番」


初めて笑う少女。


「いい顔だ。笑った方が可愛い。じゃあ寝るか」


床に横になって外套をかける。明かりの燃料も安くはない、なんて言葉は飲み込んだ。そんなことを言えば彼女はただ金を受け取ったことに罪悪感を抱くだろう。それは俺の望むところではない。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


朝。俺が起きると少女は既に起きて立っていた。


「昨日はありがとうございました」


ペコリと頭を下げて言う少女。


「良かった。……ずっと立ってたのか?」


「はい。奴隷が座って待つのはいけないことですから」


やはり、奴隷だったか。彼女の言葉から、自分が奴隷であること、奴隷は普通の人間とは違うこと。それらを当たり前に思っていることが感じ取れた。


「……そうか」


気の利いた言葉も思いつかず、無愛想に答える。


「じゃあ、私はご主人様のところへ戻ります」


「ああ。……気を付けて」


頑張れよ、だとか希望をもって、なんて言いたいところだが、そんな気休めは言えない。他者を救えるのは余裕があるもののみ。しがないゴブリンハンターにはそれができない。


「はい。本当に、ありがとうございました」


再び頭を下げ、部屋を出る少女。


いい事をした、なんて思いはしない。たった一晩少女を休ませただけだ。根本的には何も変わっちゃいない。彼女を自分の奴隷として買ったなら、話も違うが。だがそれだって奴隷制の根本解決には至らない。目の前の人間だけを救うのは果たして善行と言えるのだろうか。


「……仕事に行くか」


そう呟いて、ギルドへ向かった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「お前みたいなちんちくりんに金なんて払えるか!」


仕事帰り、いつもの裏路地に入ったところで、大きな声が聞こえた。見ると、例の少女が突き飛ばされていた。


「おい、何も突き飛ばすことないだろ」


そのまま彼女を蹴りつけそうな勢いを見て、思わず割って入る。


「なんだ手前ェ? 奴隷の肩持つのか?」


ジロリ、と俺を睨みつけるごろつき。


「ああ。昨晩買った娘を乱暴に扱われるのは見ていて気分が悪いもんでな」


「へえ。真面目そうな顔して変態なんだな」


一転、ごろつきの表情がニヤニヤと嫌な笑いに変わる。


「悪いか」


こんなごろつきに誤解されたところで気にはしない。ごろつきの言葉を否定せず答える。


「いや別に。ヒトの女の好みにケチつける程暇じゃねえしな。ま、もやしにゃお似合いか。じゃあな、チビとよろしくやってろ」


そう言い残し、ごろつきは立ち去る。


「あ、ありがとうございます……助かりました」


少女がお礼を言う。


「客がとれないのか?」


「……はい」


落ち込んだ顔の少女。こちらの文化でもこのくらいの少女は対象外らしい。日本だったらロリコンもいいとこ、という歳だ。仕方のないことだろう。


「今夜も買わせてくれ」


決して裕福とは言えない立場だが、つい口にしてしまった。こんなことをしてもタダの自己満足の一時しのぎで、彼女は救われないというのに。


「え……いいんですか?」


おずおずと言う少女。


「ああ。こういうのは放っておけないタチでな。着いてきてくれ」


「ありがとうございます……」


申し訳なさそうについてくる少女。その時、クゥーという可愛い音が彼女の腹から鳴る。


「腹が減ってるのか?」


「えっと……はい」


恥ずかしそうに言う少女。


「俺も今日はメシがまだなんだ。どうせだから一緒に食うか」


俺だけ食べるというのも居心地が悪い。


「い、いえ、気にしないでください!」


遠慮する少女。


「いいんだよ。今日は報酬もよかったし、気にするな」


それに、こんなに小さい体だ。大して額も変わらないだろう。


「……ありがとう、ございます」


申し訳なさそうに言う少女。


少女を連れて宿へ向かう。宿の一階は酒場になっている。そこで済まそうと思ったわけだ。


「オヤジ、適当に作ってくれ」


席に座り、顔馴染みになった宿のオヤジに声をかける。この店にはメニューなんてものはない。あっても読めないが。


「おう。昨日もいたがその子は……奴隷か?」


答えた後、少女に目を向けて、怪訝な顔をするオヤジ。


「ああ」


「……なんのために買ったんだ? そんな歳じゃ、大して役には立たんだろ。そもそも、お前がそんな金を持っていたなんてな」


「あー、違うんだ。この子は娼婦をやっててな」


「娼婦!? お前、この子と……」


驚いた声を出すオヤジ。


「いや違う、誤解だ! 客をとれないと殴られるっていうもんだから、不憫に思ってのことだ! 金は渡すがそれだけだ!」


ごろつきに誤解されるのは構わないが、顔馴染みのオヤジに誤解されるのは少し嫌だ。


「ああ、なるほど。お前もお人よしだな。奴隷に恵んでやるなんて」


「ああ。根本的な解決もしないでいい事をした気になってるただの偽善者だよ」


「ま、俺はお前のそういうところ、嫌いじゃないがな。ほれ、とりあえずシチューとパンだ。腹いっぱい食いな」


オヤジが俺と少女の前に皿を置く。


「いただきます」


手を合わせてから食事を始める。そんな俺を少女は不思議そうに眺める。


「ああ。こりゃコイツの故郷の風習らしくてな。不思議な風習だよな。手を合わせたところでメシが美味くなる訳でもねえのに」


オヤジが解説する。


「習慣なもんでな。やらないとメシが不味いんだよ」


習慣というものはそう抜けないものだ。


「い、いただきます……?」


少女は見様見真似で手を合わせて、俺と同じ言葉を口にする。


「別に真似しなくてもいいんだがな。ま、好きなだけ食ってくれ」


少女は恐る恐るシチューを口に運び、目を輝かせる。


「美味しい!」


「良かった。店は汚いが料理はいいんだよ、ここは」


「一言余計だぜヒロシ」


言葉とは裏腹に笑って言うオヤジ。少女はというと、一心不乱にシチューとパンを食べていた。


「相当腹が減ってたんだなあ」


「だな。……うん、今日も美味いぜオヤジ」


一口食べ、感想を言う。日本人の舌は肥えているなんていうが、その日本人の俺でも美味いと思う。


「良かった。丹精込めて作った甲斐があるってもんだ」


「そういえば、名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」


少女に尋ねる。


「えっと……サラ、って呼ばれてます」


食事の手を止め、答える少女。


「サラか。俺は内藤 弘。ヒロシでいいぞ」


「ヒロシさんですね。昨日も今日も、ありがとうございます。こんな美味しいご飯まで食べさせてもらって……」


「いいんだよ。ただの自己満足だ」


本当なら金を出して解放してやりたいんだが、流石にそこまでの大金はない。


しばらく談笑し、食事も食べ終える。


「じゃ、俺らは部屋に戻るぜ。行くぞサラ」


席を立ち、食事代を払う。


「もう一度聞くが、お前、こんな小さい子とは……」


オヤジが心配そうな声で言う。


「しねえって! そんな趣味はない!」


「良かった。そうだ、宿代は今週分までしかもらってないから、それまでに払ってくれよ」


笑って答えてから、真剣な顔になるオヤジ。


「そうだったな。今払うよ。とりあえず来週分でいいか?」


財布代わりの革袋から銀貨を数枚渡す。


「毎度。それじゃ、ゆっくり休んでくれ」


「おう」


手をひらひらと振って階段を上がった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「じゃ、気を付けてな。サラにいい事があるよう、俺も祈っておく」


朝。昨日と同じくサラを見送る。


「はい! ありがとうございました!」


笑顔で答え、路地を歩いていくサラ。


サラが見えなくなったのを見計らって、革袋の中を見る。


銀貨は無し。銅貨が数枚あるだけ。


……金欠だ。元々自転車操業だったのにサラに2日分の報酬を渡した上宿代まで纏めて払えばこうもなるか。


働かざるもの食うべからず、だ。今日もキビキビ働こう。


そう決意し、ギルドへ向かった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「参った……」


ゴブリンの討伐依頼が今日は無かった。稀にこういう日はあるのだが、まさかこんな日に限って当たるとは。こちとら今日のメシ代さえないというのに。報酬は安いが、薬草摘みでもするか……


「すみません、薬草摘みの仕事はありますか?」


受付で聞く。受付嬢には申し訳ないのだが、字が読めない俺は人に聞くしかないのだ。


「薬草摘み? あるわけないじゃないですか。今の時期は生えてませんよ?」


「…………なるほど」


しばらくフリーズしてしまった。植物が相手だとそういうこともあるのか。八方塞がりだ。


「わ、分かりました。ありがとうございます」


一応礼を言ってギルドを立ち去る。仕方ない。今日は食事を抜いて凌ごう。一日食わないくらいじゃ死にはしない。


宿へ帰るとオヤジとガラの悪い男が口論していた。ガラの悪い男の横にはサラの姿も。


「客の部屋に他人を入れるわけにゃいかねえだろ! 帰ってくれ!」


オヤジが怒鳴ると、


「うるせえな! 殺されてえか!」


ナイフを取り出す男。


「ンなモンでビビると思ったら大間違いだぜ! こちとらこの通りで長年やってんだ! それくらい日常だ!」


引き下がらないオヤジ。


「オヤジ、何かあったのか」


「ん? ヒロシか。お前の部屋に入れろってコイツがうるさくてな」


「お前がヒロシか。探したぜ」


こちらに向き直る男。


「誰だお前」


見覚えのない顔だ。


「サラの主人だよ。一昨日と昨日はサラを買ってくれてありがとう。だが、少々額が足りなくてな、徴収しに来たってワケだ」


ニヤニヤと笑う


「なんでここを知ってる?」


短い付き合いだが、サラが案内するとも考えにくい。


「サラに案内してもらってな」


「ごめんなさい、ヒロシさん……」


サラが俺へ謝る。見ると、殴られた跡が顔のあちこちにある。


……そういうことか。


「殴ったのはお前か?」


「俺のものに俺が何をしようが関係ないだろ? むしろ、サラを買う連中は暴力を振るいたいヤツも多くてな。傷があった方が殴りやすいだろ?」


怒りが沸々とこみ上げてくる。


「……していいことといけないことが分かってねえみたいだな」


腰の剣に手をかける。


「ダメ!」


その時、サラが叫んだ。


「……どうして止める。お前を散々殴った相手だぞ?」


「だって、人を殺したら罪人になっちゃう! 私なんかのためにヒロシさんが罪人になることないです!」


「構わねえ。それよりコイツを放っておくほうが寝覚めが悪い」


剣を抜く。ここでコイツを見逃せば一生後悔するだろう。


「ダメ!」


サラが男をかばうように前へ出る。


「お願い……お願いだから、私のために自分を滅ぼすようなことはしないで……」


サラは俺に縋りついて泣く。


「……」


渋々、剣を収める。この状態では上手く動けない。いくらサラのためとはいえ、負けが確定している戦いを挑むほど馬鹿じゃない。今は我慢の時だ。


「おうおう、愛し合ってらっしゃる。で、追加の料金だが……」


「悪いが、持ち合わせはねえぞ」


銅貨しか入っていない革袋を投げ渡す。


「これは困ったなあ。どうしようか」


腕を組んでニヤつく男。適当に罪でも被せて俺を奴隷に落としたりするつもりなのだろうか。


「いくら足りねえんだ?」


オヤジが口を開く。


「そうだなあ……まあ、二晩だからな。銀貨30枚ってトコか」


「コイツ……」


ふっかけやがって。


銀貨30枚なんていうのは大金だ。この世界の売春の相場は分からないが、少なくとも裏通りで客を引いてる娼婦がとる金額ではないだろう。


「それなら昨日宿代代わりにもらってたな。おら、これで満足か?」


オヤジがカウンターの下から銀貨を渡す。


「おい、オヤジ!」


俺はそんなに払ってはいない。そんな額があったら、この宿に一ヶ月いられる。


「ひいふうみい……毎度。また頼むぜ」


じゃあな、と言って立ち去ろうとする男。


「待て」


俺は呼び止める。


「なんだよ? 受け取った金は返さねえぞ?」


男はギロリとこちらを睨む。


「それはもういい。それよりだ、サラを買いたい。いくらだ?」


「あん? だから言ってるだろ。一晩銀貨20枚だ」


「そうじゃねえよ。所有権を譲ってくれって言ってるんだ」


金を出してサラを買い取れば合法的にサラを解放できる。


「はっはっは! そんなにコイツが気に入ったか。そうだな……金貨50枚ってトコだな。だが、財布に銅貨しか入ってないのにどっからそんな金出すってんだ?」


ニヤニヤと言う男。


「おい、いくらなんでも―――」


オヤジが何か言いかけるが、目で止める。


「分かった、いいぜ。俺が金貨50枚持ってきたら、サラはお前から解放されるんだな?」


「もちろん。用意できれば、の話だけどな」


「分かった。予約させてくれ。金の準備ができたらすぐに買う。ただ、俺は痣付きは嫌だからな、それまで丁重に扱ってくれ」


「何日で用意する?」


「一週間だ」


「分かった。一週間は丁重に扱おう。俺の店は西地区の南外れにある。近くでスピラの店と聞けば分かるだろ。じゃあ、金貨50枚。耳を揃えて用意してこいよ」


ニヤッと笑ってから、男はサラを連れて立ち去る。


「おい、金貨50枚なんて……ギルドか貴族の家でも襲撃しなきゃ手に入らねえぞ? どうするんだよ」


「アテはある。それよりオヤジ、すまねえな。あんな大金、預けちゃいねえのに。必ず返すよ」


「出世払いでいいぜ」


「……恩に着る」


精一杯お辞儀をする。


今できることはこれしかない。この借りはいつか必ず返そう。


「おう。で、アテって?」


オヤジは俺に聞く。


「剣闘大会、知ってるか?」


「おいおい、嘘だろ!? ありゃあ奴隷が出るやつだぞ!」


驚いた顔のオヤジ。


「別に奴隷以外も出れる。そう聞いたぞ」


「そりゃあ、出場権利は奴隷に限らんが……アレは本物の殺し合いだぞ? ゴブリンしか倒せないお前じゃすぐ殺されちまう! 早まるな!」


必死に俺を止めるオヤジ。


「俺の前職を教えてやろうか」


「……別の世界から来た、なんて与太話はもう聞いたぞ」


不機嫌そうに言うオヤジ。


「俺は警察官って職業をしてたんだ。衛兵みたいなもんだ」


「だからなんだってんだよ」


不機嫌な顔を崩さずにオヤジは言う。


「衛兵の仕事には罪人の取り締まりがあるだろ? 俺はその専門だ」


「するってえと……人相手なら負けない、なんて言う気か?」


「ああ。俺が習った剣術は対人専門のものだ。人型の相手ならまず負けない。その証拠に、今までゴブリン退治で俺が怪我したことあったか?」


「……無いな」


オヤジはまだ納得しきれていない様子だが、一応頷く。


「まあ、そういうことだ。そこで頼みがある。知っての通り俺は読み書きができねえ。申し込みだけやってくれねえか?」


「……お前との付き合いは長かねえが、短くもねえ。嘘をつく性格じゃないのは知ってる。自信はあるんだろうよ。だがな、俺はお前を気に入ってるんだ。悪い事ァ言わねえ。サラちゃんには悪いが、奴隷のために命かけるなんて馬鹿げたことはやめろ。やめてくれ」


懇願するように言うオヤジ。


「俺の事を知ってるんなら、俺は言ったら聞かないことも知ってるだろ?」


「……」


黙って俺の目を見つめるオヤジ。


「はぁ、分かったよ。手伝ってやる。絶対優勝しろよ?」


諦めたような声で言うオヤジ。


「任せとけ」


俺は大きく頷いた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


大会当日。俺は宿の裏で素振りをしていた。


申し込みの際に、少々驚かれはしたものの、大会まではスムーズに事が進んだ。オヤジも、「宿代とメシ代は出世払いでいい。特訓しろ」と言って、全面的に協力してくれた。お陰で体の状態は万全だ。唯一の心配事は、サラのことだけ。約束はしたものの、彼女がまた殴られたりしていないか、それだけが心配だった。


「調子はどうだ?」


オヤジが様子を見に来る。


「バッチリだ」


「最高だな。俺も観に行く。絶対、勝てよ」


俺の背中を軽くたたくオヤジ。


「任せてくれ」


俺は闘技場へ向かった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「決勝戦は不殺の剣豪、ヒロシ=ナイトウ対、剛腕のマックス! なんと、ヒロシは奴隷ではありません! その上ここまでの試合、全て相手を殺さずに勝ち上がってきました! 対するマックスは前大会優勝者! その巨大な斧で全てをぶち壊す! 勝敗は分かりません! さあ、賭けるなら今のうちですよ!」


実況が声を張り上げる。マイクもないのに、良く通る声だ。


ここまでの試合は、実況の言う通り全て不殺で勝利してきた。一人の奴隷を解放するために他の奴隷を殺しては本末転倒だ。奴らは予想通り、魔物相手の訓練はしていても対人の訓練はおざなりだった。攻撃は大振り。当たれば即死だが、当たらなければ問題はない。そもそも、武器が対人向けじゃない。あんな大きな武器、人を殺すのにはあまりに大げさだ。腕を切りつけて、重い武器を持ち上げられなくした後、首に剣を突きつければ皆降参した。


二つの鉄格子の向こうに立つ正面の相手は大柄な異世界人の中でも特に大柄。最早俺とは別の種類だろう、という程だ。身長なんか、2.5mくらいあるのではないだろうか。だが、大きさに怯んでは負けてしまう。相手は飽くまで人間だ。怖れを捨てて動きを読めば勝てない相手じゃない。


一回、深呼吸をしたところで、実況の声が聞こえてくる。


「さあ皆さんベットは終わりましたか!? それでは、試合開始!」


鉄格子が上に上がる。相手の前のものも当然上がる。瞬間、その巨体からは想像もつかないスピードで突進してきた。


「うおっ、と!」


少し驚いたものの、なんとか冷静さを保って横に避ける。数センチ隣に、巨大な斧が振り下ろされる。相手はそのまま地面に突き刺さった戦斧をゆっくりと構え直す。


「こっちから行くぜ」


相手の左へ回り、左膝の裏を突く。少し外れた。反射的に下げたのか、膝小僧に切っ先は当たる。


「くっ!」


相手は二度、三度、と斧を振り下ろす。なんとか避けきる。身の危険に、アドレナリンが過剰に出ている感覚がする。


「今度はこっちの足を!」


相手の右に回って膝の裏を切り付ける。今度は成功。相手は右ひざをつく。


「ちょこまかと!」


今度は横に斧が振るわれる。咄嗟の判断ミス。思わず剣で斧を受けてしまった。腕だけで振るったその一撃は、俺を壁際に吹き飛ばし、剣を折った。下半身を封じていなければ、今頃俺の体は真っ二つだっただろう。


「くっそ……」


なんとか立ち上がる。痛みはそれほど感じない。アドレナリンのおかげだろう。


腰のベルトを外して手に持つ。


「そんなオモチャで悪あがきか!?」


勝ちを確信した相手は足を引きずりながらゆっくりと近づいてくる。


「……」


相手が十分近づくのを待ってから、俺は壁に向かって駆け出す。


「逃げるんじゃねえ!」


相手は俺を追う速度を上げる。


「逃げちゃいねえさ」


壁を三角飛びの要領で蹴り、相手の首に輪っか状にしたベルトをかける。締まるベルト。


「クソがっ!」


相手は無理矢理俺を引きはがそうとするが、俺は意地でもベルトを離さない。俺を引きはがそうとすればするほど首のベルトは締まっていく。


「ぐうっ……」


次第に相手の力は弱まり、最後には倒れて気を失った。


審判の方に目をやる。審判はしばらく相手をみつめてから、旗を上げる。


「勝者、ヒロシ=ナイトウ!!! なんとマックスさえも殺さずに勝利しました! こんな結果を誰が予想したでしょうか!」


実況が声を張り上げる。歓声が会場を包む。


勝ったぞ、オヤジ、サラ。そう思った瞬間、気を失った。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「んぐ……」


ベッドから身を起こす。えーと俺は……そうだ、試合に勝ったのだ。


全身が痛い。完全な骨折まではしてなさそうだが、ヒビくらいは入っていそうだ。


「おお、起きたかヒロシ! 起きなかったらどうしようかと思ったぜ!」


オヤジが声をかける。


「ここ、どこだ?」


周りを見渡す。知らない部屋だ。


「闘技場の救護室だ! 体は動かせるか? 賞金貰いに行くぞ!」


オヤジが背中を軽く叩く。


「痛ってえな……もう少し優しくしてくれ」


「おお、悪い。ともかく賞金だ、行くぞ!」


「そうだな。そのために頑張ったんだから」


痛む体に鞭打ち、ベッドから立ち上がる。


そのまま案内に従って歩くと、今日何回も見た鉄格子の前に来た。


鉄格子が上がる。同時に、大きな歓声が上がる。


「優勝者のヒロシ=ナイトウの登場! 国王陛下から賞金の授与です!」


王冠を被り、モジャモジャの白い鬚を生やした屈強な男が近づいてくる。


この人が王様なのか。初めて見た。


「よくその小さな体で戦ったものだ。素晴らしい動きだったぞ。戦いは体の大きさ、筋力だけでは決まらないという事が分かった。是非とも我が軍の剣術指南役に来て欲しい」


……思いもよらない提案だ。だが、そんな重荷は背負いたくない。何と断ろうか……いや。


「分かりました。私でよければ精一杯働きましょう」


「おお、来てくれるか。では、これが賞金だ。後日、詳細を伝える」


王様は俺に賞金の入った袋を渡して立ち去ろうとする。


「一つ、お願いがあるのですが」


一礼して賞金を受け取った後、王様に言う。


「なんだ?」


呼び止められた王様はこちらへ向き直る。


用件を伝えてその場を去った。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「約束通り金貨50枚、用意したぞ。サラを売ってくれ」


闘技場から離れた後、サラの主人のところに来た。


「いやあ、すげえじゃねえか。まさかあの大会で優勝するとはな」


鞘だけが刺さった俺の腰を見て、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた後、一回手を叩く主人。すると、物陰から武器を持った男が数人現れる。主人も戦槌を構える。


「……何の真似だ?」


「少し、サラを手放すのが惜しくなってなあ。大金持った満身創痍の男が丸腰で来てくれるんだ。お出迎えをしようと思ってな」


「なるほど、合理的な判断だな、クソ野郎」


「……その余裕面、ムカつくな!」


主人が戦槌を振りかぶる。それを避け、背負い投げで主人を投げる。


かなり体は痛むが、身に沁みついたこの動きくらいならできる。


「うおっ!?」


そのまま逮捕術で主人を取り押さえる。腰からナイフを抜き、周りの男たちにこれみよがしに見せつける。


「今なら一瞬でお前らの雇い主を殺せる。こいつが死んだら報酬はもらえないだろ? どうする?」


一瞬迷う素振りを見せる男たち。その一瞬が命取りだ。


「今だ!」


俺が声をかけると、隠れていた衛兵が男たちを取り囲む。数は男たちの三倍。男たちはたまらず投降する。


「サラはどこだ?」


首筋をナイフで叩きながら聞く。


「お、奥の部屋だ!」


「OK。用済みだな。お前が根っからのクズで助かったよ。お陰でこれは合法だ」


今度は首筋に刃を当てる。


「お、お前……!」


主人の顔が恐怖に染まる。


「なんてな。そこの衛兵さん、コイツを頼む」


「は?」


近づいてきた衛兵に主人を引き渡す。


「俺は人殺しはしない。相手が最低のカスでも、な」


取り押さえで無理をして痛む体に鞭打ち、主人の言った部屋へ向かう。扉を開けると、サラはそこにいた。


「サラ!」


「ヒロシさん!」


サラと抱き合う。


「ご、ごめんなさい……私なんかのためにあんな額のお金を……」


申し訳なさそうに言うサラ。


「いいんだよ。俺がしたくてしたんだから」


「……ありがとう、ございます。これからは、ヒロシさんが新しいご主人様ですね」


「違うぞ。サラはモノじゃない。人間だ。これからは誰かのモノじゃなくて、一人の人間として自由に生きていいんだ」


「え、えっと……」


頭が追い付かない、という顔のサラ。


「やりたいこととか、あるか?」


「う、うーん……色んな場所に、行ってみたいです……」


恐る恐る言うサラ。


「いいじゃないか。知らない場所を見に行くのは、旅行っていうんだぜ」


「旅行! 旅行してみたいです! あ、でもそういうのってお金かかりますよね……」


一瞬明るい表情を見せるものの、すぐにおどおどとした様子に戻ってしまうサラ。


「安心しろ、今や俺は高給取り。旅行の一回や二回、大した負担じゃない」


「ええと……」


俺が何を話しているのか分からないという様子のサラ。


「サラはまだ小さい。一人で生きてくのは大変だろうと思ったから、俺が一旦保護者になろうかと思ったんだが……嫌か?」


「い、嫌なんて! 全然嫌じゃないです! むしろ、嬉しい……です」


はにかむサラ。


「良かった。やっぱりサラは笑顔が似合う。サラが毎日笑えるように、いい保護者になるよ。これからよろしく、サラ」


「は、はい! よろしくお願いします!」


俺が差し出した手をしっかりと握り返すサラの顔には、輝くような笑顔が浮かんでいた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


あれから十数年、俺はずっと衛兵に剣を教えている。


「さて、今日の訓練は終了。いいか、お前らに教えているのは人を守るための剣だ。身勝手に人を傷つけるためには決して使わないこと。いいな?」


この言葉は、警察学校時代の教官からの受け売りである。だがまあ、もう十年以上自分で新兵に言っているのだ、自分の言葉と言っても許されるだろう。


「「「はい!!!」」」


元気よく返事をする新兵たち。ここ数年は新兵の質もよくなってきた。最初なんかはまあ酷かった。体の大きさを見て俺に挑んでくる兵士までいたものだ。だが、根気よく教えた結果か、衛兵の質は良くなり、それに憧れる子供も増えたらしく、今では俺を目当てに兵士に志願した、なんて言ってくれる新兵もいる程だ。


「ヒロシさん、訓練終わった?」


サラが子供を連れて駆け寄ってくる。


サラだが……なんと今では俺の嫁だ。歳が離れているからとずっと遠慮していたものの、猛アタックに猛アタックを重ねられて根負けした。結婚当初こそ異性として見るには歳の差がなぁ、と思っていたが、時間を重ねるにつれ、その気持ちは薄れていった。子供までこさえてしまったのだから、もう言い訳はできない。


「ああ、終わったよ。サラの方はどうだ?」


「終わってなきゃ来ないよ」


彼女も彼女で忙しくしている。町で教師をしているのだ。彼女は物覚えが良く、解放してすぐに教育を受けさせたのもあり、様々な学問に詳しくなった。それを活かし、平民の子向けに色々な授業を行っている。現代日本から来た身だ。教育の重要さは知っている。国のためになるだろう。


「それもそうか。そうだ、次の演説だが、グリュンタールでやっていいそうだ」


そして俺たち夫婦は奴隷制廃止を目指し、活動をしている。陛下も、奴隷制には疑問を持っていたようで、俺たちの熱意に活動の許可を出してくれた。まだ廃止には至らないものの、国内の奴隷の数は年々減っている。俺たちの声に耳を傾けてくれる人たちも増えた。


「やった! 今の時期グリュンタールはお花が綺麗だから楽しみ! トマスは初めてかな?」


手を繋いだ幼い我が子に声をかけるサラ。


陛下の前では言えないが、演説は旅行も兼ねている。のんびり観光、とはいかないものの、知らない土地に足を運ぶたびに目を輝かせるサラの顔を見ると、俺も幸せな気持ちになる。


「うん、初めて!」


トマスは元気に答える。歳食ってから生まれた子供だからか、トマスにはついつい甘くしてしまう。


「あそこはいい景色だぞ。そうだ、今日は時間もあるし晩飯オヤジのとこにするか」


「いいね! シチューあるかなあ」


剣闘大会の後、賞金はオヤジに全額渡した。予想よりも早い出世払いというわけだ。その資金で、オヤジは表通りに店を開いた。あの美味い料理なので、すぐに店は人気になった。今日は入れるといいが。


少し歩き、オヤジの店に着く。


「オヤジ、席空いてるか?」


「丁度いいトコに来たな! 今まさに空きができたぜ!」


「おお、良かった。今日の献立はなんだ?」


メニューが無いのは相変わらずだ。なんでもその日に一番いい食材を使いたいから、毎日出すものが変わる故作ってないんだとか。


「いい肉と野菜が入ったんでな。シチューとステーキだ」


「やった! シチュー!」


「お母さんはすごくシチュー好きだね」


「うん。お父さんとの思い出の味なのよ!」


「しかしまさか二人が結婚して子供までつくるとはなぁ。あん時は―――」


「オヤジは黙ってメシ作ってくれ!」


オヤジはいい人だし、料理も美味いが、事あるごとにからかってくるのだけは勘弁してほしい。


「はいはい。ほれ、シチューとステーキだ。冷めないうちに食ってくれ」


オヤジが料理を運んでくる。自分で運ぶのも、あの頃のままだ。


「ありがとう。それじゃ」


「「「いただきます!」」」

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警察官、異世界にて少女を買う 爆速ヤンキー山田 @bakusokuyamada

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