第10話 辺境伯と法衣貴族

冒険者ギルドを出て、ヴォルーノのお店に向かう。

お店はまだ開いており店内を覗いてみると中央に陳列棚あって、木や素焼きの食器に木や鉄製カトラリーとコップなどが置いてあり、右の壁際の陳列棚には半貴石のアクセサリー、それに乾燥ハーブが左側の棚に皮袋、カバン、ブラシや箒も置いてある。店員のいるカウンター奥にはガラス食器にポーションも

置かれていた。紫色の髪をした160cm程のほっそりとした20代店員に、


「サミュエルといいますが、ヴォルーノさんは居ますか?うちのパーティーメンバーがこちらに居る筈なんですが…」


「まぁ〜!貴方がサミュエル君。主人を守ってくれてありがとう!妻のヨゼファニよ。ちょっと待ってて、主人を呼んでくるから」


なんと奥さんだった。奥さんは直ぐに奥に行ってしまい、奥からヴォルーノを連れて戻って来た。


「いや〜。サミュエルどうなった?」


「明日、案内をする依頼を受けました。それで、ここの領主様の評判はどうなんですか?」


カウンター越しに話し込もうした時に、店の戸締まりを終えた奥さんから、


「まあまあ。こんなところで立ち話もなんですから。奥に上がって下さいな。貴方も、ちゃんとお招きして」


「おう。スマン。さぁ、遠慮なくサミュエル奥に入って入って」


「では、遠慮なく」


カウンターの横を抜けて奥に向かう。後ろから奥さんもついて来た。

奥にはテーブルがあり、食事が既に列んでいた。厨房から、まだ料理を出して来る、若い女声とナナシーが笑いながらやって来た。


「あっ、サミュエルおかえりなさい。

こちらは、ヴォルーノさんの娘さんでベリテアさん私の3つ上なのだけど、料理が上手なの。それで一緒に料理を教わりながらこの料理作ったの」


野菜炒めの様だ。残りのメンバーの所在を尋ねる。


「サニーと従魔達は?」


それを聞いたナナシーが、


「2階の客室で寝ているわ。疲れちゃったみたいね。」


それを聞いた、ヴォルーノが、


「今日は家に泊まって行きなさい。明日も早いのだろうそれに案内の依頼は、サミュエルだけの仕事になるのだろう? ここで待たせておけば良いよ」


「ありがとうございます。お言葉に甘えます。それで話しの続きなのですが……」


「私、サニー達を呼んできますね」


とナナシは2階へと上がって行った。


ヴォルーノと奥さん、娘さんは左側に並んで着席して俺はヴォルーノの右横に着席した。

そしてヴォルーノが話し出す、


「ここの領主様は、とても善政行っているよ。税は3割だし、孤児も手厚く保護している、魔物の襲撃も先頭に立って撃退しているしね。

貴族といっても、レスデアの代官等の法衣貴族ではないから実績を作る必要も無いんだ」


「ここの領主様とレスデアの代官とは貴族として違いがあるのですか?」


「そうだよ。法衣貴族は国の役人で、領地貴族は、其の領地の王ってぐらい違いがあるよ。なんせ、領地貴族は、自分の領地の課税比率、司法権、行政権、軍権、任命権まで持っているのだから。その代わり運営に失敗して国税をを納めれないと即座に爵位を取り上げられて、平民に落とされる。悪政を敷いていたら処刑もあるからね。

法衣貴族は所詮しょせん代官だから司法権と行政権しか持たされない。税も5割の3割は国税だからね。税収を下げてしまうとこちらは即交代だね。だから、法衣貴族は何かしらの実績が欲しいのさ。実績を上げると領地が貰えるからね。」


「と云うことは、領主様の庇護を受ければ他の貴族は手出し出来無くなると」


「そうだね。実は領主様の奥さんはこの国の王女様のだったんだ。今の王様の妹だね。第3王女だったから王宮で辺境伯を見初めて、辺境伯領に押し掛けて前の辺境伯様に直談判されたそうだよ。それに今の領主様が根負けして結婚されたそうだ。今は相思相愛の仲だそうだ。」


話を聞いていると、皆んなが降りてきた。


「サミュエルおかえり」

〘あるじ、待ってた〙

〘ミャアは、お腹すいたにゃ〙


椅子は8席あるのでナナシーがミャアを椅子に座らせて、クッキーは俺の後ろでお座りをして待っている。

皆んなが座って食事が始まる。

パンにシチューのようなスープ。野菜炒めにステーキ。クッキーには深皿と平皿を置いてシチューとステーキをあげる。

シチューはホワイトシチューだった。


「このスープは何で出来ているのですか?」


「バターとミルクですよ。後はスパイスで味付けしています。」


答えてくれたのはベリテアだった。


「これもベリテアさんが作ったのですか?」


「いえ、流石にこれはまだ無理です。お母さんが作りました」


「こんな美味し物を食べれるなんてヴォルーノさんは幸せ者ですね」


「まぁ、サミュエル君はお上手ね」


「本当に美味しいです」


後ろでクッキーが深皿を「カランカラン」鳴らしてシチューの催促を始める


〘クーにおかわりを、ください〙

「カランカラン」


「あらあら、今用意するわ」


奥さんが席を立ち、鍋を持って来てシチューを深皿によそう。

クッキーがガツガツと食べ始めると、


「大きいのに可愛いわね〜」


と奥さんは慈愛の笑みで微笑んでクッキーの食べっぷりを眺めていた。

食事を終えて2階の客室に入ると、ベッドは2組だったので、クッキーは敷物の上で、俺とミャアが一緒に、サニーとナナシーが一緒にと2人1組で寝る事にした。

俺はアイテムボックスから小金貨2枚を取り出し、


「サニー、ナナシー明日は俺一人で辺境伯の依頼をこなして来るから、これで買い物でもしておいてくれ、当分はこの街に滞在しようと思っている。この街の噂や冒険者の有益になりそうな話を聞いてみて欲しい。無理はしなくて良いけど」


「分かった」


「分かったわ。ねえ、それよりサニーとミャアちゃん交換しない?」


「しない。おやすみ。」


ミャアを抱っこしてベッドにもぐった。


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