Epilogue『原稿用紙』

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 篠宮綴は、初枝の家に足を踏み入れる。そこには静かな雰囲気が漂っていた。


 初枝は、笑顔を浮かべると、原稿用紙の束を綴の手に渡す。その束には、功と初枝の思い出が詰まっていることを感じ取ることができた。


いさおさんが書いた小説を、時間をかけて全部、原稿用紙に書き起こしたの。形にして残しておきたいと、思ったから」


 二人が、篠宮パソコン教室で出会いを果たしてから、一年の歳月が経っていた。あの頃と同じ、綺麗な桜が咲く時期になった。


 文字を書くことが苦手だった篠宮綴は、初枝に教えてもらったお陰で随分きれいな文字を書くことができるようになっていた。


「これ、つづりちゃんに持っていてほしいの。私の分は、また書けばいいから」と、初枝は微笑んだ。


 篠宮綴は、原稿用紙の束をぎゅっと抱きしめる。


「ありがとうございます、初枝さん。この文字をお手本にして、文字を練習してもいいですか?」と尋ねた。


 初枝は、「もちろんよ」と答え、二人は微笑みあった。


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 初枝はつえ篠宮綴しのみやつづりの、パソコン教室から始まった交流は、初枝が天寿を全うして亡くなるまで、ずっと続いた。


 初枝から貰った原稿用紙の束は、篠宮綴にとって、何よりも大切な宝物で在り続けた。


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