22.ふたりで一緒に

「千恵ちゃん、今日は何が食べたい?」


 わたしがそう言うと、千恵ちゃんは少し考えたあとに『ハンバーグ!』と言った。

 わたしは『任せて!』と言って、腕まくりをするような仕草をとる。

 意外かもしれないが、わたしはわりと料理が得意だ。

 一人暮らしが長かった為……まぁそれもあるのだが、子供の頃に母子家庭で育ったこともあり、一通りの家事はそれなりにこなせるようになった。

 正直一人で暮らしていると、どんどんズボラになって行くので、千恵ちゃんが一緒に居てくれて、わたし的にはいつも本当に助かっている。


「夕飯が出来たよ~」


 出来上がった夕飯を千恵ちゃんとふたりで丸テーブルの上に乗せて行く。


「鶴、今日もあたしの為にありがとう! ハンバーグすっごく美味しそう!」

「いいからいいから。早く食べよう」


 最初はご飯を作るのが億劫でエナジードリンクばかりだったけど、最近はこうして千恵ちゃんとふたりで夕飯を食べるのが何よりの楽しみだ。

 千恵ちゃんも最近は間食が減ってくれたような気がする。

 甘い匂いは今も変わらずしているが、多分香水の香りだろう。

 ハンバーグを頬張る千恵ちゃんの頬を指で撫でる。


「――美味しい?」


 わたしがそう言うと、千恵ちゃんは笑顔で『うん!』と答えてくれた。


「良かった」

「――お礼に」

「デザートにあたしも食べる? じゃないよね」

「ギクリ」

「馬鹿なこと考えてないでちゃんと食べちゃいなね」

「……鶴にしては珍しくまともじゃん」

「わたしだって、いつも欲望丸出しじゃないの」


 チッチッチッと、人差し指を上に向けて、顔の前で左右に振る。


「つまんないの!」


 その日は、特別変わったこともなく、平和で穏やかな一日だった。


「……夕飯を食べ終わったら、お風呂に入るけど、もうあたしのショーツを盗っちゃ駄目だからねっ!」

「あっ、あれは! ただ単に洗ってあげようと……!」

「ヘンタイ」


 ――訂正。

 平和で穏やかな日常など、わたしにはもうないのかもしれない。

 今日も今日とて。今日も今日とてだ。

 やっぱりわたしは、千恵ちゃんに振り回されて、一日を終えるのであった。

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