1ー4

PM 10:00 探偵事務所 如月


『先程、午後6時頃、すすきので女性の遺体が発見されました。死亡したのは、10代の女子高生です。

 警察によると、午後6時頃、ビルの近辺で横たわってる女性が発見されたとの通報があったところ、全身が強く損傷した遺体が発見されました。

 女性は救急搬送されましたが、全身を強く打ち、その場で死亡が確認されました。

 警察は、これまで起きた飛び降り自殺と関連しているかについて、調べを進める方針です』


 夜のニュースが、先程遭遇した事件について、報道している。私はそれを、下川さんから提供された資料を読みながら見ていた。

 先の3件といい、どうも引っかかるところが多い。何故すすきの近辺で、似た様なことが起きているのか。

 それも、深夜2時と夕方6時に起きているのか。深夜の投身自殺なら、まだわかる。その時間帯なら、見られづらい時間帯だからだ。

 しかし、ここで1つの疑問が浮かび上がる。深夜と夕方の事件にはで分かれているからだ。


「どういうことだ? 何故、範囲が広くなっているんだ?」


 ここで、もう1つの疑問が浮かび上がる。そう、2の倍数毎に、自殺者が発見される範囲が広くなってることだ。

 最初に2件は、ラフィラの近辺で発見された。だが、次の2件はどうだろう。地図とリストを見比べると、そのさらに50m先で自殺しているのだ。

 3件目は、深夜2時にニッカウィスキーのあるビルで投身自殺をし、今回は、その向かいのパチンコ屋のあるビルで投身自殺を図ったのだ。

 これは、先の2件とは違い、ラフィラから50mも先にあるビルで死んでいるのだ。

 だが、不思議なことに謎は深掘りしていくものだ。この事件が起きるのは、共通して中1日空いているのだ。

 2件目と3件目が起きるには、その間の1日だけは、のだ。

 そして、その次の日の深夜2時に、誰かがすすきののどこかのビルから投身自殺をする。さらには、翌日の夕方6時にまたどこかのビルで誰かが投身自殺を図る。

 それも決まって、自殺者ひがいしゃは10代の女性だ。その殆どが、前日までは至って普通だったのだ。


「そんなに悩んで、また事件なの?」


「明日香か。もう寝たんだと思ったよ」


「ラスティアからの伝言。ここで寝るなと、寝る時は上に上がって来てだってさ」


「わかってるよ。それで? 何のよう?」


 明日香は、私のデスクの上に腰をかける。すると、ラスティアが用意した私のお菓子を頬張る。


「それ、私のお菓子なんだが?」


「別にいいでしょ? 君、味覚感じないんだし」


「そうだが、礼儀ってものだがな」


「それに、また厄介ごと請け負ったそうだし? 何か手伝おうか?」


「手伝う? 何を?」


 明日香は、私がいうと、デスクから降りる。


「君と私で、深夜と夕方で別れて街を見回る。それで、どこで誰かが自殺したのを観測し、事象を突き止める。

 どう? 悪くないでしょう?」


「それは悪くないが、あまり他人の自殺現場を見る気にはならんな」


 私が呆れまじりに、それを許諾すると、明日香は事務所を後にする。


「決まりだね。それじゃ、私は行くから」


 そういい、明日香は出て行った。まさか、明日香までこの不可解な事象に気づいてたなんて。

 私は、腕を後ろの添え、デスクに寄りかかる。

 ふと、PCを動かし、ラフィラについて調べる。心霊関連のサイトを見ると、やはりラフィラについての事が記載されていた。

 大体の内容は、夕方下川さんが言っていたことと合致していた。だが、ここであることに気づく。

 そう、この記事だけ、何故かアクセス数が増えているのだ。やはり、こういう都市伝説的なものが、数字を稼げるみたいだ。

 他のサイトを見る。やはりというべきか、都市伝説系の掲示板が最近PV数が多いようだ。

 少し覗くと、ラフィラの件で話題は持ちきりだ。さらにその中を見ると、私のことも書かれてるようだ。


「なるほど。私も都市伝説扱いか。勝手に掲示板が上がってるくらいだしな」


 どうでもいいと思いながら、ブラウザを閉じる。窓を開け、煙草を口に加え、火をつける。

 一服をしながら、事件のことについて考える。先の明日香の提案が効率の良いのなら、それもいいかもしれない。

 だが、相手は亡霊だ。今回については、止める手段を考えないといけないのも事実だ。


「本当に、厄介なことを請け負ったな。こんなの、魔術師や咎人を殺した方がよっぽど楽だ」


「そうね。でも、今回は亡霊である以上、どう対処するか考えないとね」


 声が聞こえ、声の主を探す。すると、目の前のソファーでティータイムをしていた『仮面の魔女ジャンヌ』が、そこにいた。


「脅かさないでくれ。それに、何のようだい?」


「困りきってるあなたを拝みに来たのよ。それで? 何かわかったのかしら?」


「見つけて入るが、詰みだ。厄介のことが多すぎる」


「そうね。でも、何かがわかれば、全てがトントン拍子で解けていくわよ」


「君が言ってた、みにくいアヒルの子もか?」


「そうよ。だけど、今の推理は妥協点と言っていいわね。残りのピースは、すぐ見つかるかもしれないし、見つからないままかもしれない。

 それは、今後のあなた次第ね」


「それなら、ヒントをくれ。こちとら、色々と交差してわからないんだ」


仮面の魔女ジャンヌ』は、ティーカップを置き、立ち上がる。


「これはただの飛び降り自殺じゃない。それはわかっているでしょ?

 では、何故そうなのか、ヒントは2人毎に範囲が広くなるのと、これは回数で徐々に広くなる上、上限が設けられてる。それぐらいかしら?」


「ますますわからん。一体、何が言いたいんだ?」


「そのうち分かるわ。それと、もう一つ。これも魔術が絡んでるというのは前提条件よ」


「――――――やはり、魔術師か?」


「いえ。でも、魔術が絡むのは事実よ」


仮面の魔女ジャンヌ』は、私が困る事を他所に、亜空間を開く。


「では明日、私に所に来なさい。その意味を教えてあげるわ」


「わかった。楽しみにしておく」


 私はそういうと、『仮面の魔女ジャンヌ』は亜空間に入っていた。グラスに注がれている酒を飲む。氷が溶け切り、ウィスキーの風味が薄く感じる。

 こうして、私はPCの電源を消し、就寝の準備をするのだった。

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