第17話
うわぁ………。
めっちゃぴりぴりしてんじゃん。
扉を開けた俺を待ち構えていたのは、イラついたような雰囲気を持っている12人の老若男女だった。年齢層は意外とバラバラで男性7人、女性5人の人達が顔をしかめながら(数人は除く)こちらを見てきた。
「どうも~こんにちは~。」
動揺したようすも見せずにさもなにも知りませんと言っているような顔で挨拶をした。
それに対して丸い机の扉側から見て一番離れている人が厳つい顔に青筋を浮かばせながら挨拶を返してきた。
「こんにちはの時間じゃないんだよ!今何時だと思っているんだ!?」
「何時って、……19時前じゃん。」
「集合時間は17時だって言ったよな!なんで2時間近い遅刻になっているんだ!!」
えぇ、別にいいじゃねぇか2時間くらい。
そこまで怒ることなくない?
怒鳴ってきた人、
「涼太さん、あなた今回はなんでこんなに遅れたんですか?」
「え~っと……、駄菓子を買いに県外まで行ってきたから?」
「きみ面白すぎだろ。存在するだけで笑えるよ。」
涼太の遅れてきた理由に面白くて笑う2人。
そんな3人をあきれたような冷めたような眼差しで見つめる他9名。
ここに集まっている13名は全員がS級探索者である。この集まりは年に5回~8回行われる、関東に常在しているS級探索者が集まりそれぞれの感じた問題点や全員又は個人にしてほしいことなどを報告、要求をしたりするもののための集まりである。
「はぁ……、涼太くんの遅刻は毎度のことだからいいとして早くそれぞれの報告等を終わらせて帰ろう。」
「さんせ~い。」
涼太は幸之助の言ったことに対して賛成を示す(半分ボケ)が見事に全員にスルーされる。
仕方なく扉側から見て右側に空いてあるいつも座っている席に座る。座ると隣の23歳である男―
「涼太くん、例のブツは?」
「きちんとあるぜぇ。兄貴ぃ。」
買ってきた駄菓子を二人で食べ始める。その様子に幸之助は更に青筋を浮かばせるが相手をするだけ無駄だと割りきり会議の進行を続ける。
元々この駄菓子は2人で食べるために涼太が買ってきたのである。
光西は涼太が駄菓子を持ってきたのを見て自分もくれという意思を遠回りで伝えたのだ。
「あそこの2人はほっておいて、え~、会議を進行させていただきます迷宮大臣、波川幸之助です。もう何度もしていますが念のため。」
この迷宮大臣は特別な役職で、長年S級探索者としてやってきた者が他のS級探索者の投票によりこの席に座ることができる。彼は既に60を過ぎているがバリバリ現役として働き続けているのだ。
「まずはダンジョンに関することで問題点、提案、要求等が個人としてありましたら挙手をしてください。」
これに対して誰も手を上げない。前回の会議から関東方面で、迷宮暴発が一度もなかったため誰も手を上げることはなかった。
「なしということでよろしいですね。では次に「S級探索者の個人情報等を公開するか」についての議題ですね。ではそれぞれ意見を述べてください。」
ここにいる全員の意見は涼太以外で異論があるものはなかった。全員すでに未成年ではないのでなんの問題もなかったのである。
そしてその涼太は、
「俺はもう少しだけ待ってほしいかなぁ。」
「それは何でだい?涼太くん。」
「え~皆さん知っての通りおれ、2日前に放送事故で世間におれのこと公開されたじゃん。」
「そういえば涼太くんA級探索者って偽造していたね。あのライセンス偽造の特権を使ったのか。それだと特権についても全て公開し、偽造していたことを謝れば良いと思うが?」
「それもそうなんだけどね。親友と友達に先に伝えておきたいんだよねぇ。だからもう少しだけ待ってくれ。」
「わかった。それでは次回かその次の会議までに結論を出しておいてくれ。」
「おっけ~。」
どっちにしろ公開はしないといけなくなるだろうなぁ。この人達に迷惑をかけるのもあれだし。それに学校を休んでいた理由も公欠になってくれるだろうし。
涼太は学校をさぼるために休むことはないが、迷宮暴発や急な会議があったとき、救援要請などがあったときに学校を休むことが多かった。
そのためS級であることを公開すればそういった休みの理由も言い訳がつくのである。
「あっ待てよ。幸之助さん、公開した場合って俺の立場も公開しないといけないの?」
!!!!!!!
その場にいる全員がそうだったと言わんばかりに固まる。
「そういえばそれの問題もあったのか。盲点だった……。」
「まぁ俺はS級ってことを公開するならそっちも公開してもなんの問題もないけどね。」
「そうか……。それなら「S級探索者の個人情報等を公開するか」は涼太くんの回答が完了次第、公開するで良いな。」
そのことに関して全員が頷いた。涼太も友達に暴露する時間がほしかっただけなのでなんの問題もなく肯定した。
「では最後、涼太くん君は2日前にダンジョン配信に写ってしまったがこれからその配信に入る気などはないのかい?」
「いや~今のところはなんとも。あの配信に写っていた3人にいま修行をつけさせてるんですよねぇ。あの中の一人に関しては既にA級探索者並みの実力はあるだろうし、他二人も時間の問題です。あいつらはS級になりますよ。」
「そ、それは……羨ましいな。君にそこまで言われるなんて。これからの世代はもっと頼もしくなるんだろうな。楽しみだよ。」
この場にいる中年以上のS級探索者が幸之助に同意した。
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