第14話

おれの知っているとあるS級探索者の魔力と似かよっているんだ。」


「…………S級?」


おれの告げた言葉にダンジョン40層のとある部屋が静寂に包まれた。

無理もない。無理もないのか?


「……それ……まじ?」


「まじ。今日で何回目だ?」


ほんと、同じようなことしかしゃべってない気がする。

流陣の表情は驚きに満ちており、なんとも笑える顔になっていた。笑えるのか?

イケメンってどんな顔してもイケメンなんだな。

イラッ


「ま、まじで!?それってすごいんだよな!?なぁ!?」


「すごいからあんなに驚いてたんだよ。その知り合いの奴はホントに強いからお前もそんくらいなれるかもって話なんだよ。」


あれはおれからみても強い。なんせ『魔力変換』の技術を世界で3,4番目くらいに鍛え上げてるような奴だからな。


「これなら『魔力変換』を初っ端から修行しても十分強くなることができるだろうな。」


「まじか!?よっしゃ~!ん?それって喜んでいいのか?」


「当たり前だろ。最終的にお前らには

『魔力変換』を修行してもらうつもりでいたからな。それを早くに修行できるようになるってやべぇことなんだぞ。」


おれと流陣が話していた間ずっと黙っていた二人が口を挟んでくる。


「流陣くんすごいね!S級の人に近い魔力だなんて。」

「素直に尊敬に値する。わたしは君のことを信じていたよ。」


一人上から目線のやつがいるようだがそれぐらいすごいことだからな。ほんと、おれの周りやべぇやつ多いな。


「へ、へへへ。こんなに誉められたのすっげぇ久しぶり。うれしいもんだなぁ、やっぱり。」


本当に嬉しそうだな。そこまで嬉しいもんかねぇ、あのアホと似かよっているのが。

まぁそれは置いとくとして、


「最後は由奈だな。」


「はい!覚悟はできております!」


「お前の魔力を感じて抱いた感想だが、

綺麗で澄んでいたというところだな。」


「??それだけじゃわからないよ。もうちょっと具体的にどんな魔力技術を覚えられるか教えて。」


おれの分かりづらい言い回しに由奈が文句を言ってくる。

こいつ、イタズラしてやろうかな。

いや、やめておこう。女性にそういうのをするのはダメだな。

流陣のケツをカンチョーした時みたいにしようと思ったがさすがに出来なかった。

いやカンチョーって以外とムズいんだぞ。

足音とか気配を全部消して視界に入らないように後ろに回って、割りとむずいんだぞ。


「まぁ、どんな技術を覚えるかというと

『浄化系統魔力変換』とさっき瑠色に教えるって言った『魔力静寂』を覚えるのが一番いいと思う。」


「『浄化系統魔力変換』って何?大体名前で想像できるけど。」


「うん。名前のとおり漫画でいう回復系の魔法に似たやつとか毒を調和するやつとか、

そんな感じの僧侶みたいなやつをイメージすると想像しやすくなる。」


「それってすごいの?」


「すごいはずだぞ。この技術を使えるやつは世界でも3人しか確認されていない。」


「すっご!!わたしもすごいじゃん!!」


由奈がピョンピョンと跳び跳ねて喜びを全身で表現する。なんか頭にウサギの耳生えてない?

くっそかわいいなおい。


「由奈、かわいいからそれ今すぐやめて。」


「かわいいとやめないといけないの!?」


とりあえず話を終わらせるか。


「はいはい、それじゃぁ説明も終わったしいまから「あっ、ちょっと待って涼太くん。」どうした?」


「えっとね、なんでわたしも『魔力静寂』を覚えるの?もしかしてわたしも瑠色みたいに魔力の無駄遣いをしていたの?」


「そういうわけじゃない。お前の魔力は澄んでいて綺麗っていっただろ?

瑠色は無駄遣いが多いからこの技術を覚えろって言っただけで、由奈は単純にこの技術と相性が良いんだよ。あといい忘れていたが、

『浄化系統魔力変換』って『魔力変換』の一種じゃないからな。

この『浄化系統魔力変換』っていうのは

『魔力変換』とは違い習得できるものがあまりにも少なすぎたために独立した技術と扱われているんだ。これ覚えておけよ。」


そう。この技術は歴史上で3人、つまり今この世界にいる3人しか扱うことができていない。そんなだから、最近になって独立したものとして考えられるようになったんだよな。


「んじゃ、早速修行を開始するとしますか。

瑠色と由奈はもう一度『魔力静寂』の循環をお前らの体内で再現するから、その再現した循環をずっと無理やり維持しておいてくれ。」

「わかったよ。」

「おっけ~。」


由奈と瑠色の手を取り完璧な『魔力静寂』の循環を2人の体内で再現する。

片方は顔が赤くなっているが気にしないでいいかな。


「じゃぁ手を離すぞ。3、2、1、はい!」


手を離すと若干魔力の循環が悪くなったように感じたがなんとか二人とも再現した状態を維持できている。だけどやっぱりぎりぎりかな。

自分でしようと思えば別の訓練がいるからとりあえずは慣れてもらおうとこの訓練をしているのである。


「一旦こっちは置いておくとして、流陣。」

「おう。」


「お前がこれから使う『魔力変換』の技術には大前提となる技術がいるんだ。それは

『魔力進退』とよばれる魔力自体の格をあげたりさげたりして操ったりする技術だ。この技術は本来『魔力変換』を習得する上では要らない技術だ。しかしこの技術を習得することで

魔力変換の可能性を広げることに繋がるからこれをまずは習得するんだ。」


「情報量が多いがなんとか理解できたよ。んでその『魔力進退』とやらを習得するにはどうすればいいんだ?」


ニチャァ


「おい、その笑顔やめろ。身震いがする。」


「ひどいじゃないか流陣くん。おれだって好きでこういうことをしようとしているんじゃない。そう、決して、しょうがなく、君に合った技術を習得するためにはこうするしかないんだ。」


そう、しょうがないんだよ、流陣。


ニチャァ

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