さすが、仮にもB級上位の実力をもつだけはあるな。しっかりと勉強をしているようだ。

「お前たちが答えた通りこの固有異能だけで攻撃を受けるとその攻撃の持つ運動エネルギーを自由に操作することができる。しかしおれのこの能力は割と不便なところも多くてな。

あの時ミノタウロス？は体全体の身体強化を行うと同時に、腕や肩といった振り下ろしのときに使う筋肉を無意識に強化していたんだ。

その場合、あいつの攻撃を固有異能で運動エネルギーをゼロにしたら、行き場を失った集中的に強化をしていた腕や肩が破裂したりとか最悪の場合では空間自体が爆発することだってあった。」

「ならなんであの時は爆発はおろかミノタウロス？になんの異常も出てこなかったの？」

おれが話していると愛が聞いてきた。しっかりと聞いていたのね。あれ、今日のお昼ごはんはカルボナーラかな？愛のカルボナーラおいしいんだよねぇ。こいつらに食わせるのがもったいない。

「お兄ちゃん？」

「………ん？あ、あぁすまんすまん。え～っと愛の質問に答えるとだな、とある魔力技術を使ったんだ。」

「もったいぶってないで早く教えてくれよ。」

うるせぇな。

「お前らも知っての通りダンジョンへと挑む者はダンジョン探索者になるための特別な学校があったり、より高いライセンス取得のための塾モドキみたいなのもあるのは知っているだろ。」

「それがどうしたの？」

「そんなにたくさんの探索者のためのサービスがあったりするのになんで世間的に知られている魔力技術はそこまで多くないのか、それはな世間で公開されている技術はだれでも簡単に磨くことができる基礎でしかないからだ。」

「なんかけっこう難しい話になってきてないか？」

「そうでもない。そして主に公開されてない技術、上位の探索者たちが独自に作り出した魔力技術、受け継がれている魔力技術、これらは別に秘匿されているわけではない。単純に、その基礎の技術を十分に磨いた上で新しい難易度の高く、強力な技術を覚えるという変なジンクスというか、暗黙の了解というか、まぁそんなのがあるんだよ。」

「それだと、私たちってまだそういうの覚えちゃダメなんじゃないの？」

「いや、おれはさっきお前らの体内に流れる魔力の波や強度といったものを初めて集中して覗いてみた。」

「「「「えっち。」」」」

「失礼な奴らだな。あと流陣、おまえは普通にキモいぞ。

はぁ、つまりお前たち３人の実力もとい、基礎の魔力技術は十分極まってきている。もしかしたらもうすぐ探索者協会に修行の打診とかが来ていたかもな。まぁ話を戻すが、あのときおれが使った魔力技術は、

『魔力衰弱』と呼ばれるものだ。」

「名前からして大体想像できるね。」

「そうだな。この魔力技術は名前の通り、魔力を衰弱させるといったそんままの魔力技術だ。

この技術は基本的に練度が高ければ離れた場所から相手の身体強化の強度を衰弱させることができるんだ。」

「てことは～、あのとき涼太くんは『魔力衰弱』と『調和による運動エネルギーの支配』の二つを使ってミノタウロス？の攻撃を受け止めることができたってことね。」

「そういうことだな。これであの時の種明かしは終わりかな。じゃあ本格的に授業に入っていこうか。」

「これ授業じゃなかったの！？」

「当たり前だろ。自己紹介みたいなもんだよ。」

「でも本当に勉強にはなるな。説明もまぁまぁうまいし。てことで授業おねしゃす！」

「おっけー。それじゃあまずはお前たちが覚えるべき魔力技術を教えてやるよ。

その名も『魔力変換』だ。」

「「「魔力変換？」」」

「魔力変換だ。この技術をざっくり説明するとだな、魔力を炎に無理やり変換したり物の性質を無理やり変えたりするための土台だ。」

「でもそれってさぁ所謂世間で公開されている魔力技術の一つだよな？」

「そうだな。確かにこれは公開されているもののなかでも最も強力だと言われている技術だ。そして世間でも知られている技術としての内容もさっき挙げた通りだ。

しかしおれの言う『魔力変換』は汎用性が世間で知られている魔力変換の数十倍にも及ぶレベルの技術なんだ。」

「おい！それって何が違うんだ？！」

「それはな、魔力の術式化、つまり魔法と呼ぶことができるレベルの練度と緻密な術式への変換が大きな違いであり、とても高い壁なんだ。」

「魔法って……。」

「まぁ魔法っていっちゃなんだがそこまで幻想的なものじゃない。単なる世間で知られている魔力変換の完全上位互換の技術ということだ。」

「それでも十分すごいものでしょ…………。

完全上位互換って誇張じゃないんだよね？」

「当たり前だ。それほどレベルが違うんだ。レベルが違う、つまり習得自体が糞ほど難しいんだよ。ほとんどのひとたちがこの技術を完全に扱うことができていない。S級探索者と呼ばれる奴らでも『魔力変換』の一つの分野を極めてやっとってのが普通なんだ。そもそも極められてるかは定かではないんだがな。」

「規模が違いすぎるね。なんかこうたくさんの技術をひとまとめに括ったようなイメージだね。」

「それはわたしも思ったよ。実際その括られている分野の中から一つを使いこなすというだけでもA級上位の実力が出てくるんだと思う。」

「瑠色の考察は大正解だな。まぁお前らにはこの『魔力変換』の中の自分に最も合う分野を修行させるつもりだ。魔力の波長とか結び付きやすい技術とか割とそこら辺で左右されるってことが多いからな。まぁ相性が悪くても、理解を深くして感覚を最大限に発揮して本気で習得しようとするならいくつも扱うことだってできるし、人によって、つまり天才とか大天才とか化け物とかはそこらへんをすっ飛ばして扱うことができるやつもいるけどな。」

待てよ。………おれが教えたらどれだけ使えるかばれちまうんじゃねぇのか？

……………それなら知識としては大体の人が持ってるって誤魔化せばいいか。

「それにしてもA級とB級にこんな壁があったなんて………。これ公開した方がいいんじゃない？」

「実際世間にこれらを大々的に公開すべきって今、けっこう進められてるらしいぞ。」

「もうすぐで一般化するかもしれない知識なのか。先に知れたのは幸運だったな。」

「そうかもな。それじゃあ知識としての授業は終わったから検査とか適正とか見てみようか。」