第2話

「ついた~。」


家から自転車に乗って走ること約40分。 

家からも高校からもかなりの距離で離れている上級ダンジョンへと涼太は訪れていた。

そんな涼太の足取りはとても軽くウキウキとした表情で上級ダンジョンのなかに入っていた。

いっや~それにしても朝のマイシスター 

(神咲愛という名前)の作った朝食は美味しかったな~。

まぁ食べてるときは終始笑顔で怖かったけど。

あいつのことだし中級ダンジョンの肉って知って食べたことを友達に自慢したいんだろうな。だけど今まで食べた肉のなかには上級ダンジョンや最上級ダンジョンからの肉もちらほらあったんだけどな。あいつ味音痴だからなんでもかんでも美味しい美味しいって言って食べた肉の種類なんてわからないんだろうな。


「まぁそれはそれとして今日はジンギスカンだ。最近は中級ダンジョンにでるビーフを

食べていたからジンギスカンが楽しみすぎるぜ♪」


そうして肉についてのことばかり考えながら音速に近いスピードでダンジョン内を駆け巡る。周りからみたらよくわかんない物体がとんでもない風を伴って移動しているため涼太の移動をたまたま見ていた人たちには人間が通ったとは思われていなかった。まず顔のかたちも体のかたちすらも認識できていないので見た人たち全員がモンスターだと思っていた。 


「たしか羊肉が出てくる階層は深層の最下層だたっけ?最近来てなかったから覚えてないな。」


ダンジョンの階層の数は、下級ダンジョンと中級ダンジョンが100層まで、上級ダンジョンが150層まで、最上級ダンジョンは不明である。

階層の区分は主に1層から20層までが上層、21層から40層までが中層、41層から60層までが下層、そして61層以降はすべて深層と区分されている。


「うし、何とか最下層まで来たな。まぁ他にも早く行く方法はあったけどさすがにここでは無理だよね~。」


そうして涼太がたどり着いた場所は上級ダンジョンの最下層であるボス部屋の扉の前である。

気配だけでも一般人が感じれば体が震えてしまいそうなほどの威圧感のなか涼太はそのような様子をおくびにも出さずにとても大きな扉をとりあえず殴った。

瞬間、鉄で作られていた頑丈な扉は涼太が殴った部分を中心に大きな穴が空いていた。


「いや~やっぱりこの扉を壊すときの爽快感はとても気持ちがいいね~。」


涼太が扉に空いた穴をくぐったとき、

その一瞬の涼太が放出した魔力量に恐怖を感じた

上位個体 グリマール

が涼太に向かって突進を仕掛けていた。


「メエェェェェェェェェェェェェ!!!」


グリマールの大きさは少し大きな羊程度なのだがこのグリマールは魔力を使う。

上位個体とは通常個体に魔力といったもので強化されたモンスターであり魔力による身体強化だけでなく、

『固有異能』も含まれている。固有異能はおいおい説明するが、つまりこのグリマールは

123階層にいる通常個体のグリマールの何十倍も強いとされている。

上級ダンジョンにいるモンスターであるとはいえ、その強さはA級探索者ではまず倒せないとされている。そんなグリマールを涼太は、


ザッッ


グリマールの頭に左手をかざしたその瞬間にグリマールは音速並みのスピードに乗っていたはずなのに何の予備動作もなく止まった。その現象は元々グリマールが動いてすらいないかったと思わせるほど自然に涼太はグリマールの突進を止めて見せた。


わざわざ受ける必要はないかもしんないけど、こっちのほうがはやいしな。


そうして、腰に携えていた斧を右手に素早く切り替えグリマールの目ではとらえることができないほどのスピードで斧を振りかぶりそのまま頭を潰してしまった。

涼太が愛用している片手で簡単に持てるサイズの真っ黒なこの手斧は刃の部分がなく完全に耐久性に全フリしている武器だった。この手斧はそれぞれのダンジョンの最下層に出てくる宝箱から出てきたものであり、涼太にとってはすべての武器が簡単に壊れてしまっていたのでまさに涼太のための武器といってもよかった。


「やっぱりおれって天才じゃない?固有異能と魔力による技術の天才的な組み合わせでこれを突破できるやつは居ないんじゃないかな。」


そう言いながらマジックポーチにグリマールを入れる涼太。このマジックポーチも手斧と同じく上級ダンジョンの最下層で出現する宝箱から出てきたものでありこのマジックポーチは涼太が何度も何度も周回をしてやっと出てきたものでありとてもレアだった。


「さぁて、今回の宝箱はな~にかな~。できればお金になるものがいいな~。」


そして涼太は宝箱を開けた。

なんだこれ。青色のきれいな宝石?

なんかお金になりそうだな。


「とりあえずジンギスカンも手に入ったし探索者協会で解体してもらお。」


そうしてまた来た道を戻りだした。


それにしてもあの技に名前つけたいな。

なにがいいかな。まぁあの異能と魔力衰弱の技術だったらそれっぽい名前も浮かんでくるか。

今度名前言いいながら使おうかな。

あーでもやっぱり名前でどんなのか推定される可能性もあるか。仕方ない、心のなかで叫んでおくか。


うん?


なんか嫌な感じがするな。この感じは誰か危ない状況かもな。念のため、


魔力探知


これ特殊個体じゃない?かなり上だけど上層か中層のどちらかな?それにしてもこの特殊個体強いな。上級ダンジョンの140層後半あたりの力はあるんじゃないかな?

特殊個体と呼ばれるモンスターは上位個体であるモンスターが見た目も魔力の気配も歪んでしまい様々な力が上がった個体のことを指す。この特殊個体はそれこそ上級ダンジョンと最上級ダンジョンにしか現れないし本当に稀で涼太ですらたまたま遭遇した最上級ダンジョンの特殊個体だけで1度しかない。


これは急がないとかな?戦ってる人は一人だし確実に勝てない。それほど力が離れている。それにしてもなんだかどこかで感じたことのある魔力だな。まぁ今考えることではないか。急がないと。


そうして涼太はさらにスピードを上げた。

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