第17話 魔夜の㊙訓練

「魔夜、頼む。俺に稽古をつけてくれ。」


魔夜に頭を下げる俺。


それに対する回答が


「嫌だ。憶人は私が守るから強くならなくてもいいの。」


ぷんぷんといった感じに断る魔夜。


「けど、俺が強くなれば魔夜を守れるじゃないか。」


ふわーっと笑顔になる魔夜だったが、


「危ない危ない。危うく口車にのせられるところだった。


そもそも私は死なないんだから必要ないの。


それに憶人も死なないように立ち回ることは出来るんだからさぁ。」


頑張らなくてもいいじゃないかとでも言いたそうな魔夜。


確かにそうだけど、俺も魔夜もただ生きるだけなら可能だけど


「せめて、好きなヤツに弱ってるところを見せなくて済むぐらいには強くなりてえんだよ。


じゃなきゃ、俺はあの子の隣にいられないから。」


なんで出てきたんだ。あの夢の話が。


これは魔夜にも話していない。


ヤバい、頭のおかしなやつだと思われてしまう。


「待って。覚えていたの!?」


あれ!?俺よりも魔夜のほうがヤバそうじゃないか。


それに何かを知っているようだ、


「待て、今のは口が滑ったというか、


口が勝手に動いたというかそんなものだ。」


しゃがんで、黙り込んで固まってしまった魔夜。


「魔夜ー。おーい。」


ゴフッ!!


「「いったーい」」


急に立ち上がるなよな。ったく。


「一つ質問させてもらいたいんだけどさ。


さっきの映像はどこで見たの?」


頭をさすりながら言う魔夜。


「映像なんのことだ?」


「ほらさっき、『俺はあの子の隣にいられないから。』って言ったときに


頭に浮かべていたあの映像だよ。」


???


「待て、魔夜。もしかして人の考えていることがわかるのか?」


「うん。記憶まではさっぱりだけど、リアルタイムなら全部お見通しだよ。」


「ってことは」


「そう、憶人も私のことが大好きってのも知ってるんだからね。」


っち、やっぱりウソぶっこんできやがった。


「えー!?そうだったんですか!!」


最悪、なんてタイミングで鏡子さん来ちゃってんだよ。


とにかく。


「鏡子さん、このチンチクリンが言ってるのはでまかせです。


きっと、心の中を読み取れるのは本当ですけど。」


先に手を打っておこう。


「ふふっ。仕方ない。そこまで言うなら鍛えてあげるよ。


強くしてあげるから


   


っこいつは。人の情緒をかき乱しておいて、


「はいはい、どうせ俺は誰とも付き合ったりなんかしないんだ。


大切なのは、魔夜と維持隊の人ぐらいだよ。」


「約束だよ。」


そう言って小指を絡ませてくる魔夜を不覚にもカワイイと思ってしまった。


「私的には約束守ってくれるってだけでポイント高いよ~。」


ったく、こいつには勝てねえや。


いや、勝てるようにならなくちゃ。


「最初の訓練は魔眼の扱いをマスターしてもらいます。」


こっから、俺の特訓が始まる。

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