1197 いつもの定位置で

 上星川の実家まで送って貰った後。

なんだかんだ言って「お茶をご馳走する事』を前提にして、崇秀に家に寄って貰える事に成った眞子でした(笑)


***


「お待たせ~~~♪」


そんな感じで、台所からお茶のセットを持って部屋の戻ると同時に。

少しコタツで寛いでいる崇秀さんの前に、恒例の紅茶と、クッキーを出させて貰う。


因みにクッキーはお手製ですよ。



「おぅ。疲れてる所、手間取らせて悪いな」


また、そう言う事を言うでしょ。

毎度毎度、崇秀さんに手間を取らせてるのは、いつも私の方だっての。


ほんとにもぉ。



「あぁ、いや、私は、奈緒ネェのリハを軽く手伝ってきただけだから、左程は疲れてないよ。ご心配なく」

「そっか。そりゃあ、体力の有るこったな」

「まぁ、それはそれなりに」


そう言ってから、崇秀さんを真正面に捉えて、コタツに座ってはみたものの。

正直言えば、この期に及んでまだ、2人の時にのみ限定された、いつもの定位置に座りたい気持ちで一杯だった。


崇秀さんのぬくもりを、背中で感じたい……


そんな私の心境を察してか、崇秀さんは、こんな事を言ってきた。



「んあ?なんだ?今日は珍しく、ソッチに座るんだな?」

「えっ?えぇっと、それって、どう言う意味かな?」

「いやな。いつもなら、横に座るか、俺の前に座るじゃん。けど、今日に限っては、誰も居ないのに俺の正面に座るから、なんか妙な違和感を感じてな。……それって、なんか考えがあっての話なのか?」

「あぁ、いや、あの、そういうんじゃなくてね。疲れてないとは言え。流石に、甘えてばっかりじゃ悪いかなって」

「なるほどなぁ。そう言う事な」


あの……その言い方って。

遠回しに『ソッチに行っても良いよ』『俺の前に座っても良いんだぞ』って言ってくれてるんですかね?


定位置に座っても良いって事ですかね?


あの因みにですけどね。

今回に至っては、私も崇秀さんの単車の後ろに乗せて貰ってたので。

外気に晒されておりますので、結構、体が冷え切ったままなので、いつもの様に人間カイロには成りませんけど?


それでも本当に、その定位置に座っても良いんですかね?



「あの……あのですね。それってさぁ。ソッチに行っても良いって事なのかな?」

「いや、別に、どっちでも良いけどな。そこは、オマエの判断に委ねるよ」

「あぁ、じゃあ行く。直ぐに行く。逃げないでよ」

「ハハッ、なんだよそれ?俺が逃げて、どうすんだよ」

「……ですよね」


ナンダカンダ言っても、結局、甘い誘惑に負けて、アッサリ行ってしまう私。


それで、崇秀さんの前にチョコンと座ってしまう私。


……って座った瞬間。

後ろから、崇秀さんが優しくギュッて抱きしめてくれる。


えっ?えっ?えっ?なっ!!なになに?何事ですか?



「ななななななっ、なに?どどどどどっ、どうしたの急に?」

「いや、別に。なんかな。さっき怖い思いをさせて悪かったなっと思ってよ」


あぁ……なるほどね。

何事かと思ったら、さっきドームで国見さんの甥っ子が起した出来事を、まだ気にしてたんだ。


まぁ、普通に考えたら、そう簡単には払拭出来ないよね。


だけど、その考えは、出来るだけ早く払拭してあげたいのも事実。

だから私は、少し話題を逸らす方向で話をしていく。



「あぁ、なるほど。そう言う事ですか。でも、急に抱き付いて来るから、何事かと思ったよ。一瞬、崇秀さんが私に欲情してくれたのかと思ったよ」

「んあ?あぁ、そりゃあ悪ぃな」


いや寧ろ、欲情して貰っても、私は一向に構わないんですけどね。


いつも言ってますが『ドンと来いですよ』


だから私は、目の前で交差された崇秀さんの手をギュッと持つ。


離さないですよ。


どこにも行かないでね。



「あぁ良いの、良いの。ご遠慮なく、ご遠慮なく。幾らでもどうぞ」

「遠慮なくって、なんだよそりゃあ?」


いや、なんだよそりゃあも、糞も無いですよ。

折角の機会だし、この磨き上げた体を、十分にご堪能頂ければ光栄だなぁって思いましてね。


それに……なんとなく始めた会話の内容なんですが、この件について、少し気になる事もあるんですよね。



「いや、なんだそりゃあも、なにも。崇秀さんにも、ちょっとぐらい、なにか良い事が有っても良いんじゃないかなぁって。いつも崇秀さんは損バッカリしてるからね。だからせめてさぁ。私なんかで申し訳ないけど。良かったら、幾らでも、私をご堪能頂ければ有難いかなって」

「あぁっそ。けどよぉ。俺のなにが丸損なんだ?俺、別に、なんも損してねぇけど」

「そんな事ないでしょ。私みたいな、ややこしい生物の面倒をズッと見てくれてるだけでも、その時点で人生の大損じゃん。だから、これぐらいは幾らでも、どうぞなのですよ」

「アホタレ。俺は、オマエと一緒に居て楽しいから、好き好んでオマエと一緒に居るの。なんも損なんかしてねぇつぅの」


あぁ……それって、ホントですか?

こんな迷惑ばっかり掛ける、我儘で、馬鹿な女でも良いんですかね?



「あぁ……」

「けど、オマエさぁ。さっき、あんな目に遭った処なのに、本当に大丈夫なのか?」

「うん。大丈夫だよ。……って言うかね。寧ろ、さっきみたいな事があったからこそ、崇秀さんには、余計に、こうしてて欲しいのかなぁ」


……っと言う建前なのですが。


実はね。

さっきも言ったけど、それ以前からズッと気になってたんだけど。


それがなにか?と言いますとね。


ほら、崇秀さんってさぁ……オナニーしないじゃないですか。

だから『性欲処理をどうしてるのかなぁ?』って、いつも不思議に思ってたのよね。


故に、ちょっとチープな誘惑してみました。


勿論、効果は未知数ですが……



「ふ~~ん」


あれ?思った以上に反応が薄いぞ?


ひょっとして、これってドン引きされてる方向なの?



「あれ?崇秀さんには珍しく、私の真相が見えませんか?」

「真相だと?なんかあんのか?」


えぇっと、ただ単に誤魔化そうとしてるだけなので、なにもないです。


でも、口から出てしまった以上、只今より、口から出任せを言いますよ。



「あぁ、うん。実はさぁ。さっき、あんな目に遭ってね。あれって、結構『貞操の危機だったなぁ』っとか思っちゃた訳なんですよね。だから、それと同時にね。崇秀さんに、ちゃんと、初めてあげれるのかが不安になっちゃった面がなくはない訳ですよ。それが、これの真相です」


うん。

我ながら、状況を上手く利用した、惚れ惚れする様な嘘を付いたね。


完璧だね。



「そこな。……あぁ、因みにだけどな。俺は、処女性には拘らないぞ」


なんですと!?



「へっ?……いやいやいやいや、そこは拘ってよ。拘ろうよ。眞子の初めては、絶対に俺のもんだとか思って下さいよ」

「ふむ。たかが粘膜の接触程度の事に、俺に拘りを持てと」

「いや、あの、そう言う言い方をすると身も蓋もないですよね。でも、女の子にとっちゃあ、これって、かなり重要な問題なんですけど」

「まぁなぁ。……けどよぉ、そこに愛情表現が集約されてる訳でもねぇだろうに。だったら、別に気にしなくても良くねぇか?」


う~~~ん、なんか変だなぁ?


なんか見透かされて、からかわれてる様な気がしてきたぞ。



「じゃあ、崇秀さんは、私には欲情しないって事?」

「いんにゃ。そんな事ねぇぞ。その証拠にな……はむ」

「あにゃあああぁ~~!!」


びっ!!びっ!!吃驚した!!

喋りながら、私の髪を少し掻き分けたかっと思ったら、急に耳を甘噛みするんだもん。


あまりの驚きに、オシッコちびりそうに成ったじゃない。



「プッ!!なんだその声?色気もヘッタクレも有ったもんじゃねぇな。あははっは……」

「笑うにゃ!!」

「いや、だってよぉ。そんな反応する女、初めて見たぞ」

「うっさいよ。大体、女の子の体はねぇ。男の人と違って、敏感かつ繊細に出来てるんですぅ!!ちょっとした事でも過敏に反応しちゃうんですぅ!!」

「いや、言われなくても、十分に知ってるけど」

「だったら、尚更、笑うにゃ!!」

「面白いから、嫌だね」


もぉ……この意地悪男め!!

急に、酷い事しやがった上に、この態度かよ……


だったら罰として、もう一回、さっきの甘噛みやって!!


かなり気持ち良かったから!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


二人っきりに成ると、ホント眞子は甘えたに成りますよね(笑)

もぉ此処に関しては、極普通のカップルレベルでイチャイチャしたくて堪らなくなるみたいです。


なので此処は、少々見せ付けられてうざったいかもしれませんが、生暖かい目で見守ってやってくださいな(笑)


さてさて、そんな中。

本編でも少し眞子が疑問に思っていた事なのですが。

こうやってイチャイチャはしてくれるのに、自慰行為をしない崇秀って、一体、どうやって性欲処理をしてるんでしょうね?


次回は、その真相に触れて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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