1184 新曲を聞いた感想

 漸く眞子が納得した上で、新曲アレンジの依頼を受ける事を了承したので、奈緒グリのメンバーも準備を開始。

さてさて、どんな新曲が飛び出してくるのか?


***


 ……この後、ステージに奈緒ネェが戻り。

マイクポジションに立って、全ての準備は完了。


その間にディックさんが、コッチに向って……『Good!!』って右手の親指を立てながら、子供みたいな笑みを零していた。


だから私も同じ様に『Good!!』ってして微笑み返した。


ホント、お気遣いありがとうございます……だね。


***


 ……さて、これで全ての準備が整ったけど。

奈緒ネェ達が明日発表する新曲『Blood-Rain』って、一体どんな曲なんだろうね?


ジャンルは何?

曲調は、どんな感じ?

どんな歌詞を含んだ曲?


その全てが謎に包まれたまま、曲がスタートする。



♪♪--♪-♪♪--♪♪♪♪♪--♪-♪♪♪♪-♪♪♪--♪♪-----♪♪♪♪--♪♪♪-♪-♪……


うわ!!


曲名から、私が想定していたよりも、かなりド派手な音を鳴らすハードロック系だ。


しかも、結構な早打ち系。

これは早速、結構、厄介な曲だぞ。


って言うのも、こういう系統の曲って、リズムに一定のルートが決まってるだけにアレンジが異様にしにくいし。

何所も彼処も、ある程度、曲が完成しきってるから、変化を齎し難い感じなんですよね。


それに、曲調と同様、歌詞にも、かなり大きな問題がある。

曲自体が、どうやら『血の雨』が降る様な凄惨な戦争を唄った歌みたいなんだけど、何故か時折、官能的な言葉が混じっている。


それで更に、所々で、その雨を見た民衆が、悲しみや、喜びを滲み出させてるパートが散りばめられてる。


これも、また変化が付けにくい。


何故なら、その民衆の感情パートに成ると、曲調が露骨に変化するんですよね。

だから、例えそれに沿ってアレンジを加えたとしても『余り大したアレンジには成らない』って問題が浮き彫りになる。


これは、全体的に難易度の高い曲だね。


まぁただ、此処で1つだけ言える事が有るとすれば。

『これは、確実に奈緒ネェが作った曲じゃないね』と言うのだけは確信が持てる。


曲の中に、奈緒ネェが持つ曲の癖が、全く見受けられない。


だから敢えて、この曲を作った人の名前を上げるとすれば。


俺ちゃんマン事……ディックさんが作った可能性が高そうだ。



しかしまぁ、ホント、困った曲を作ってくれる人だよ。



そして……そう思った瞬間、7分程の曲は派手なまま終わった。


***


「うっひょ~~~う!!どうだったよ姫ちゃん!!良い曲だろ、良い曲だろ!!この曲、俺ちゃんが1人で書いたんだぜ」


曲の終了と同時にディックさんは、感想を待ちきれない様子で、ドラムの椅子から立ち上がってステージから飛び降りる。


……だからぁ~~~!!

気持ちわ解るけど、ステージから飛び降りるのヤメテって!!


このペンギン・バンドめ……



「あぁ、私もソッチに行く!!」

「おぉっと、奈緒ちゃん。ソイツは戴けねぇな。この曲は、俺ちゃんが個人的に作った曲だから、まず姫ちゃんの感想を聞けるのは、俺ちゃんだけの特権。奈緒ちゃん達は大人しく、そこについてる階段でもゆっくり降りて来な。……俺ちゃんが、姫ちゃんの感想を聞き終えた位にな。それが筋ってもんだろ?クカカカカカ!!」


偉い!!


ステージから飛び降り様としたメンバーを制して、ペンギンダイヴをさせない様にするなんて、偉いよディックさん!!


あれ……本当に危ないから、しちゃダメなんだよね。


だからディックさんも、ピョンって2度としちゃダメですよ。

【奈緒グリ】は、世界が注目するバンドで、もう既にメンバーだけの体じゃないんですからね。


ダメですよ。



まぁ……そうは言ってても、それを言ってる本人ですら、どうせダイブするだろうけどね。



「ちぇ」

「セコイよ、ディック」

「ちぇ、こんな事なら、僕も曲を作って置けば良かった」

「そうだな。けど、それだけにデクが言うのも、筋な話だな」


そぉそぉ、そうやって納得したんなら、大人しく階段を降りてきなさい。


本当に、変な所だけは子供なバンドなんだから。


……って思ってる間に。

少しだけ息を切らせながら、ディックさんは、私の前まで来ていた。



「……っで、姫ちゃんどぉだったよ?良い仕上がりの曲だろ」


挨拶無しか。


まぁ、ディックさんの場合は、音楽に関してだけは、他になにも見えくなるから、これはもぉしょうがないんだけどね。


だから此処は1つ、相手のペースに合わせよう。



「あぁ、そうですね。凄く良い曲ですね」

「だろだろ。幾ら姫ちゃんでも、アレンジする部分なんてなかっただろ?」


かなりの自信作って奴なんですね。


でも、確かにディックさんが言うだけの事はあって。

普通だとアレンジを入れ難い、とても完成度の高い良い曲だと思いますよ。



「そうですね。本当に、アレンジのし難い曲ですね」

「ほぉ……『し難い』ねぇ。って事は、アレンジが可能な部分が随所に渡って見受けられたって事だな」

「あぁ、いえいえ。そうじゃなくてですね。これから、そこを模索しようと思ってるんですよ」

「なるほどなぁ。俺ちゃんが、どういう心境で、この曲を作ったのかを、今から探ろうって腹か?」

「そぉ、正解です。……それでなんですけど。どんな状態で作りましたか」

「聞きたいかい?」

「勿論」

「じゃあ、教えてやるよ。実はな……」


ディックさんは、曲を作った時の状況及び、心境を語り始めた。


でも……その話は『それはないんじゃないの?』って思う様な最低最悪の酷い話だった。


なんでこの人は、そんな心境で、こんな曲が書けるんだろうね?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


なにやら、またアレンジし難い曲を、ディックさんが書いたみたいですね(笑)


まぁでも、曲を聞いただけでアレンジの方向性を決める訳ではないので、ある意味、此処からがアレンジの本番!!

果たしてディックさんは、どんな心境で、この曲を書き上げたのか?


そして、眞子が最後に呆れた様な雰囲気を醸し出した理由は、なんだったのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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