1178 治らぬ馬鹿ならば馬鹿なりに

 下種で屑な桜井さんとの一件で、凹む眞子。

そんな彼女の姿を見た奈緒さんは、一体、どんな言葉を投げ掛けるのか?


***


「まぁ、確かにねぇ。そう言う部分も見え隠れするけど。そうやって眞子が、全ての人を良い方向に導くのは難しいと思うよ。まだ何処かで、切り捨てる部分があっても良いんじゃないかな」

「でも……それじゃあ」

「眞子。なんか勘違いしてるみたいだから、此処はハッキリ言うけどね。何かを治そうとするのは、その人の意思なの。その人に、その意思が無いなら、なにを言っても、ただの『馬の耳に念仏』。アンタが必至に成って説得しても、相手は話を聞いた振りしてるだけで、アンタの話なんて、実際は、なにも聞いてない。なら、そう言う部分は早く割り切らないと、自分が疲れちゃうだけだよ」


そうかぁ。

矢張り、そう言う結論に至っちゃうかぁ。


だったら私の考えてる事なんて、ただの理想論でしかないのかなぁ?



「あぁ……」

「でも、眞子。これは、決して出来無い事ではないんだよ。幾ら相手が屑でも、その方向性なら示唆する事は可能なんだよ」

「本当ですか?そんな事が出来るんですか?」

「なに言ってるのアンタは?アンタの彼氏が、それを一番実行してるんじゃない。どこを見てるのよ?」

「あぁ……確かにそうですね」

「けどね。これだけは言って置いてあげる。仲居間さんは、本当に普通じゃないから、そう言う事が平然と出来るの。アンタが、あの人と同じ事をするには、まだまだ経験値が足りてないし、そんな人に影響を与えられる様な大きな実績も持ってない。……私が言いたいのはね。自分の事も、まだ出来きってない人間が、他人の事を考える余裕があるのかって話。……私は、眞子が、まだまだ他人の事に集中するには早い、未完成な人間だと思うけど、どぉ?何処か履き違えてるんじゃない?」

「あっ……あぁ……」


言い返す言葉がなにも無いぐらい、二の句が出ないセリフだ。

私は、一体、何を基準にして、自分が出来た人間に成ったつもりで、こんな厚かましい発言をしていたんだろうか?


これじゃあ、奈緒ネェから見たら、自分の分を弁えてない……ただの馬鹿にしか見えないよね。


ホント、馬鹿だよ私。



「コラコラ、ちょっと言われた位で落ち込まないの」

「でも……これじゃあ、余りにも馬鹿ですよね」

「そうだね。馬鹿だね。……けどまぁ、そうやって馬鹿なんだったら、一層の事、馬鹿で良いんじゃないの。私は、そう言う眞子の馬鹿さ加減も好きだけどなぁ」

「えっ?でも、馬鹿なんですよ」

「アンタは、ホントに、トコトンまで馬鹿で、間抜けな子だね。また、なにも解ってないじゃない」


トコトンって……究極の馬鹿って意味ですか?

それに間抜けまで付いちゃいますか?


私って、ホントに救いが無いんですね。



「なんか、すみません」

「なんで謝るのよ?アンタの馬鹿は、世の中にとって有用な馬鹿なの。自分の事を一生懸命やりながらも、他人を思いやる気持ちもある。だから、この馬鹿は良いの。世間に迷惑を掛けてるだけの馬鹿とは違うのよ」

「でも、結局、馬鹿なんじゃないんですか?」

「うん。確かに、結局は馬鹿だね。でも、こんなもの、今更、治る訳ないじゃない。だったら、その馬鹿を貫き通しなさい。良い事をしてる以上、その内、日の目を見る事だって有るかも知れないんだからさぁ。そう言う認識で頑張ってみたら」


そっか……治らない馬鹿なればこそ、それを貫き通せば、馬鹿じゃなくなるかも知れない。


だったら、今更、四の五の考える事もないって事かぁ。


俗に言う『手遅れ』って奴だね。



「私なんかに、それが出来ますかね?」

「さぁね。その明確な答えは無いと思うよ。けど、解らないなら、解らないなりに1つ1つ経験を積み重ねていけば良いんじゃないの?実績って言うのは、そうやって作るもんだよ。仲居間さんも、そうでしょ。あの人も、桁外れな馬鹿なんだからさ」

「あぁ……」

「……って事なんで。その手始めに、サッサと気分を切り替えて、ウチのリハを宜しくね♪いつまでも凹んでる暇なんてないよ」


そうだよね。

今、出来無い事を真剣に悩むより、一歩一歩でも前進する方が、なにかの光明が見えて来るかも知れませんよね。


それが良い方向なのか?悪い方向なのか?なんて、後で判別すれば良い。


私は、こんな所で、まどろんでる場合じゃなかったんだ。


よぉし!!なんかやる気が出て来たぞ!!



「うん♪じゃあ頑張ります♪」

「ふふっ……単純女め」

「あの、奈緒ネェ、今、なんか言いましたか?」

「うぅん。なんも言ってないよぉ。……じゃあ、元気が出た所で、張り切って行ってみよう!!」

「あぁ、はい♪」


そぉそぉ、本来は、これで良いんだよ。

これで万事OKなんだよ!!


でも、奈緒ネェ……さっきの言葉は聞こえてたよ。


誰が『単純女』ですか?


……私ですね。


はい、正解です。


***


 ……っと言う、奈緒ネェとの一幕がありまして。

私の悩みを、また奈緒ネェに解決して貰っちゃいました。


ホント、直ぐに悩むダメな妹で……すみません。


***


―――サイド真琴


 ……あれ?オイ!!ちょっと待てよ!!


明らかに、これ……おかしいだろ!!

まさか、これで終わりって事は……また俺の出番って、最初のあれだけで終わりなのか?


またしても、こんな嫌がらせを集約した様な感じで終了なのか?


なんだよ、それ?


こんな陰惨な嫌がらせを極めた様な『天丼ネタ』イラネェぞ!!


それに俺は、なんも納得出来ねぇぞ!!


オイコラ!!あんまふざけんなよ!!



誰か知らねぇが、責任者呼びやがれ!!


……俺の虚しい叫びは、この日の翌日の東京ドームに響き渡った。


勿論、心の中での話だがな。


***


次回予告


倉津「コラァァァアァ~~~、眞子!!テメェ!!またやりやがったな!!」

眞子「ふふ~~ん。受験勉強で忙しくて、話題が無い真琴ちゃんが悪いんだよ。私は普段からちゃんと勉強してるから、色々イベントがあるんだも~~ん♪しょうがないじゃん」


倉津「オマエって……ほんとムカツクな」

眞子「ふ~~ん『無化作(ムカツク)』んだ。……ねぇねぇ、真琴ちゃん、その言葉の意味をちゃんと理解した上で、その言葉使ってる?」

倉津「オイ、コラ、勝手な言語を作るな。そんなもん明らかに『ムカムカして腹が立つ』って、意味に決まってんだろうが!!」


眞子「違うちゅうの!!……ってか、そんな事も知らないで使ってたんだ。情けないなぁ」

倉津「なんだよそりゃあ?それ以外に、どんな意味があるってんだよ?」


眞子「あのねぇ。良い、真琴ちゃん?『無化作(ムカツク)』って言うのは、江戸時代前期に北海道の開拓を行なって、使えない土地を無くそうって意味から『無駄作』って言う言葉が作られたのよ。そんでこれが『無化作』の言葉の造語なの。まぁ、そこから時代を経て『無駄作』から『無化作』って言葉に変化して行く訳なんだけどね。まぁ、その辺はカットするとしても。『無化作』の、本当の意味は『頑張ろう』って意味で、腹が立つって意味じゃないんだよ」


倉津「へっ?あぁ、そうなのか?そりゃあ、全然知らなかったなぁ。そんな昔から『ムカツク』なんて言葉が有ったんだな。ちょっと感心したぞ」

眞子「なに言ってるのよ。国語辞書にも乗ってるし。江戸時代の造語の本を読めば、確実に乗ってるぐらい有名な話だよ」

倉津「へっ?そうなんか?」

眞子「うん……嘘だから」

倉津「ブッ!!……最悪だなオマエ。手の込んだ意味の無い事を、即興でしてんじゃねぇよ!!このアンポンタン!!」


眞子「……って事なんで。次回は、奈緒グリのリハ話なんで。無駄を省いて頑張ろうと思います。そんな『無化作』な私は『無駄な真琴ちゃん』を省きたいと思います。宜しくね♪」

倉津「ホント……最悪だな、オマエって。そう言う風に使うか?」

眞子「……そんな訳で次回は……」

倉津「聞けや!!」

眞子「もぉ、うるさいなぁ!!特に話す事も無い『無駄な人』は黙ってなさい!!」

倉津「うぇ……酷ぇ」


眞子「……って事で次回は」


『②Well Come to Special-Live【Tokyo-Doom】』

「②ライブにようこそ【東京ドーム編】」


眞子「……を、私『だけ』がメインでお送りします」

倉津「なぁ、眞子。ちょっと待ってくれ。……俺も、ちょっとぐらい出るんだよなぁ?最後にチョコっとぐらいなら出るよな?」

眞子「出ないから。全く、次の話には存在しないから」

倉津「ちょ!!出せよ!!俺も出してくれよぉ!!ふざけんな!!主人公は俺だぁ!!」

眞子「微塵も出ないから……じゃあね。バイバイ♪」

倉津「……マジで、現実は残酷だぁ」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>

これにて第一章・第七十話【①Well Come to Special-Live【Prologue】(①ライブにようこそ【プロローグ】)】はお仕舞に成るのですが。如何でしたしょうか?


結局の所、何故眞子が奈緒グリのライブ当日に、関係者以外立ち入り禁止区域を歩いている理由も解らずじまいでしたし。

しかも、奈緒グリのライブはおろか、リハをする前に終わってしまいましたね(笑)


まぁでも、こういう事件が、ライブをするまでの裏で起こるからこそ、人間性の成長と言うものに繋がるのも事実。

仮にライブを経験するだけの話を書いていたとしても、それは演奏のレベルの向上や、ライブの経験値が上がるだけで人間的な成長は、そこまで見込めませんからね。


……っとまぁ、何とも言い訳がましい事を言いながらも。

次回から始める第一章・第七十一話『②Well Come to Special-Live【Tokyo-Doom】(②ライブにようこそ【東京ドーム編】)』では。今度こそ眞子が、此処にライブ当日居る理由を明らかにしていきたいと思います。


なので良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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