不良女子?

 特に何かがあることもなく時間が過ぎ、家を出るにはちょうどいい時間になった。

 正直に言うと、真奈がチラチラと何かを期待するように見てきてたのは分かってたけど、流石にまだ早すぎるし、そもそも朝なんだから、それには気がついていないふりをした。

 ……一応、俺の勘違いだって線も考えなくはなかったけど、何回か明らかに俺の下半身に視線が向いてたし、それはもうほぼ確定だと思う。

 だからこそ、俺が何か少しでも誘惑なんてしたら、本気で何かが起きそうだったから、何もしてないんだ。


「真奈、そろそろ家を出ようか」


 そんなことを内心で思いながらも、俺はそう言った。


「えっ……う、うん、そう、だね」


 すると、真奈は残念そうではあるけど、素直に頷いてくれたから、一緒に家を出た。

 俺に貞操概念なんて全くないから、なんだかんだ言って襲われたら襲われたで良かったんだけど、普通に家を出れてしまったな。

 ……まぁ、少し前にも思った通り、まだ早いと思うし、別にいいけど。


「そ、そういえば、優斗はあの後……や、やっぱりなんでもない!」


 真奈は俺が何かを返す前に一人で完結したみたいで、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 聞くまでもない。絶対昨日の風呂でのことを思い出しただろ。


「ん? どうしたの?」


 そんな考えに至りながらも、俺は全く気がついていない振りをして、そう聞いた。

 

「な、なんでもないよ! そ、それより、早く行こ?」


「そう? なら、行こっか」


「う、うん」


 そんなこんなで、俺と真奈は学校まで一緒に登校をした。

 終始真奈の顔は赤かったけど、もはやそれは平常運転だと思う。

 普通に可愛いし、全く問題は無いからいいんだけどさ。……目の保養にもなるし。……かなり目立つけど、それは俺のせいだろうし。

 と言うか、今更なんだけど、この世界的に真奈とか結衣ってどういう立ち位置なんだろうな?

 元の世界だったら、断言出来るほどに圧倒的な美少女二人なんだけど、この世界の基準的にはよく分からん。

 ……まさか本人に「君って可愛い方なの?」みたいなことを聞くわけにもいかないし、分からんな。

 そんなことを聞いたら、無自覚な奴じゃなく、もうただの失礼なやつになってしまうからな。


「優斗? どうかしたの?」


「ん? もうそろそろ真奈と別れる時間かぁ、って思ってただけだよ」


「えっ、う、うん。……私も、嫌、だよ」


「そっか。一緒だね」


「い、一緒……う、うん、優斗と、一緒……えへへ」


 そう言うと、真奈は急に頬を緩め始めた。

 ……マジで可愛すぎない? 

 そんなことを思って真奈を見つめながらも、学校を歩いていると、あっという間に真奈の教室の前までたどり着いてしまった。


「また後でね、真奈」


「うん。会いに行くね」


 もっと一緒にいたかったけど、ホームルームが始まってしまうし、俺はそう言って真奈と別れた。

 そして、自分の教室に戻っている途中、俺はスマホを弄ってしまっていて、誰か人にぶつかってしまった。


「あ、ごめん」


「あぁ?」


 反射的に俺は謝ったのだが、そんなドスの効いた声が聞こえてきた。


「えっ、は? 男……い、いや、ち、ちょうどいい。ちょっと付き合え!」


 と同時に、今度はそんな狼狽えたような声が聞こえてきて、腕を掴まれてしまった。

 細い腕なのに、どう頑張っても逃げられる気がしないほどの力だ。

 

 そう思いつつ、俺は改めてその子の外見を確認した。

 女の子だっていうことは声で分かってるけど、まだ確認していなかったし、それは大事だと思うからな。


 そうして、外見を確認すると、ポニーテール? みたいな髪型で金髪、そして、チラッと見えた耳にはピアスが開いているのが確認できてしまった。

 中学生ですよね? いや、真奈も結衣もこの子も、中学生離れした可愛さだとは思うけど、中学生でピアスとかって、学校的に大丈夫なのか? ……いや、大丈夫じゃないから、不良なのか。

 と言うか、そんなことを言い出したら、結衣の地雷系メイクだって怪しいラインだし、今更だな。

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