割と吹っ切れたから

「それじゃあ、そろそろ切るね、結衣」


「う、うん……」


 結衣と電話を初めて、結構な時間が経ち、少し眠たくなってきてくれたからこそ、俺はそう言ったんだが、結衣は残念そうに頷いてきた。

 ……結衣は眠くないのか? 昼にちょっと寝た俺ですら眠たいんだぞ?


「また明日、結衣」


「……うん。また明日」


 そんなことを思いながらも、そう言って、俺は電話を切った。

 よし、やっぱりちょうどいい感じに眠いし、今のうちにさっさと寝てしまおう。

 起きててもどうせ暇だしな。


 そして、電気を切った俺は、ベッドに寝転がりながら、目を閉じた。




 朝の日差しにより、俺は目を覚ました。

 ……まだちょっと眠いけど、起きるか。


【真奈、今更だけど、今日も一緒に学校行こ?】


 そうして、歯を磨いて、朝食を食べ終わり、母さんが仕事に行くのを見送った俺は、真奈にそんなメッセージを送った。

 そういえばだけど、俺、一緒に学校に行こうって言ってなかったと思うしな。


【……もちろんいいけど、優斗は、嫌じゃないの?】


 ……? なんで俺が嫌がるんだ? むしろ断られる方がショックだけど。

 ……あれか? もしかして、昨日のことを言ってたりするのか? ……あれは俺が悪い事なんだし、そもそも、昨日の結衣との会話の内で割と吹っ切れたから、もうどうでもいいんだけど。


【嫌なわけないでしょ。真奈が嫌じゃないのなら、一緒に行こ?】


【うん! なら、一緒に行こ! 待ってるね!】


 断られなかったことは良かったけど、待ってるって、俺、まだいつ家を出るとか言ってないよな。

 ……まさか、もう家の前で待ってたり? ……いやいや、それは流石に無いだろ。だってまだ時間的に学校に行くには少し早いし、そんな時間から家の前で待っているなんて、ありえない……はずだ。


 そう思いながらも、俺は玄関に向かい、扉を開いて、外の様子を見た。

 すると、顔を赤くして、明らかに俺を意識してくれている真奈がそこには居た。


「あっ、ゆ、優斗……も、もう行くの?」


「……いや、まだ早いと思うし、まだ行かないよ」


「そ、そっか。だったら、私はここで待ってるね」


 ……自分の家に入れば良くないか? 俺、家を出る時はまたメッセージを送るからさ。

 いや、どうせだし、俺の家で一緒に過ごすか。

 そっちの方がいいかもな。


「流石に外で待たせるのは悪いよ。家、入りなよ。もう母さんは仕事に行ってるし、誰もいないから、寛いでくれていいからさ」


「え、えっ? い、いいよ、わ、悪いし……それに、男の子と女の子が二人っきりなんて、優斗は大丈夫、なの?」


「ん? うん。真奈なら、全然大丈夫だよ?」


「そ、え? そ、それ、どういう……」


「ほら、大丈夫だから、早く入って?」


「……う、うん」


 すると、真奈は恥ずかしそうに、緊張した面持ちで、家の中に入ってくれた。


「お、お邪魔します」


「短い時間だけど、ゆっくりしてたらいいからね」


「う、うん。あ、ありがとう」


 そんなやり取りをしつつ、俺は真奈と一緒にリビングに移動した。

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