前日譚2 悪魔を憐れむ歌

なあおい、今どんな気分だ?」




狭い部屋、ぼんやりとした灯りしかないなか、男が問う




そのとき男は右手で思いっきり顔を殴り飛ばした




殴られた男は吹っ飛び、痛みに悶える  質問の答えは聞いていないようだ


歯も一緒に吹っ飛び、口からは血を流していた。




「楽しかったかい、この世界は?」




悶える男の胸ぐらを掴みもう一発喰らわせる


血が辺りに飛び散る




「お前は無双だとかハーレムだとか宣っていたな。それがどうだ、この世界の魔法がよく分かっただろう。お前みたいな肉体も精神もひょろひょろな奴に使いこなせるわけがない」




男の拳はさきの一撃で自分のほうも傷ついて血が出ていた




「見ろ、この血を。お前の血を。これほどの血を前世で見たことがあるか?人にこれほど殴られたことがあったか?いや、答える必要はない。すべてお前の思考はお見通しだ、この部屋にいる限りはな。そしてこの傷もこの私の力ならば一瞬で…この通り治ってしまう」




男を投げつけ逃げる気力もないところをさらに顔を踏みつける




「お前が異世界転生者ことは分かっている」




いきなり首を掴み男を片手で易々と持ち上げる




「そしてこの私の命を狙おうとした。それはやってはいけないことなのだよ」




「……転生って……あんたもだろ……その顔は……俺と同じ日本人だろ……」




「転生か……そう見えるだろう。いやそう見えなければならない」




右手で男の首を掴んで持ち上げ、左手で自分の首をさする




「この首のあと……分かるだろう、紐の痕だ。それも自殺のな」




「一体……どういうことなんだ……」


男を降ろし。握手をしながら言った


「それを知ることはない……ただ私の名前だけでも覚えておけ。私は……」




男の身体は握手した手から燃え上がり一瞬にして灰となった

手に残った僅かな灰を振り払った



「残念、死んでしまったね」

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