俺のドタバタラブコメが……始まらない!?

助部紫葉

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その日、俺は運命的な出会いをした。



ごくごく普通の高校生の俺は朝の通学路を全力ダッシュで駆け抜けていく。


始業時刻まで残りわずか遅刻ギリギリのタイミングである。


先日、担任の先生に次、遅刻したら反省文書いてもらうからと言い渡されていた。


それなのにも関わらず安易に夜遅くまでゲームしていたのがたたって寝坊したという実にマヌケ。


反省文なんぞ面倒くさいものは書きたくないのは当然。


大丈夫だ。俺の計算ではギリ間に合う。1分前には教室に滑り込める。長年遅刻して来た経験則からの自身。


しかしイレギュラーが起こった。


曲がり角、特に確認もせず駆け抜けようとしたら人が居た。



「うおっ!?」


「キャッ!」



女の子の短い悲鳴。派手にぶつかって尻餅をつく。



「いったぁー……ちょっと!急に飛び出してこないでよ!」


「わ、悪い。急いでて……」



罵声に反射的に謝っていた。


見ると俺と同じ高校の制服を着た女子がへたりこんでいる。めっちゃ美少女。見覚えは無い。



あ、パンツ丸見え。



「もうなんなのよ!私だって急いでるって言うのに……って!ちょっ!?」



自分がパンツを晒していることに気がついて赤面しつつ素早くそれを隠した。



「あ、あんた……み、見た……?」



ばっちり見た。白いレースのパンツだった。



「み、見てないです……」



顔を逸らしつつそんな嘘をつく。だって正直に言ったら殴られそうな雰囲気なんだもん。



「み、見たんでしょ!?最低ッ!」



パーンッ



乾いた音が響いた。俺は美少女におもいっきり頬を引っぱたかれていた。





◇◇◇





「はぁ……朝から散々な目にあった……」



朝の謎の美少女との1悶着でギリギリ間に合う予定だったのに結果は始業時間を2分すぎて遅刻となった。


担任はニコニコしながら原稿用紙を持ってきた。しかも5枚も。



「反省文が原稿用紙5枚て……読書感想文かよ……」



憂鬱である。



「ほらおまえら席に付けー!今日は転校生を紹介するぞ!」



沸き立つ教室。そういえば転校生が来るとか担任が数日前に言っていた事を思い出す。それが今日か。



「ほら入って入って!」



担任に手招きされ教室に入ってきた。それは朝、曲がり角でぶつかった美少女だった。



「あーっ!アンタは朝の変態男っ!」



入ってくるや否や転校生はビシッと指さして叫んだ。



「げっ!?おまえは朝の暴力女!」



そう声を上げたのは俺……



――では無く。俺の席とは真逆の位置に座る男子生徒であった。


そして転校生が指さす方向も俺ではなく、そっちの男子生徒であった。



「なによ!この変態!出会い頭に私のスカートの中に顔突っ込んで胸揉んだくせに!」


「な!?あれはどう考えても事故だろ!?」



どうやら転校生、俺以外にもぶつかった奴が居たようだ。それも俺より派手な事故を起こしてると予想される。



「なんだおまえら既に知り合いか。それなら転校生はアイツの隣の席な!ちゃんと面倒見てやれよ!」


「「はーっ!?」」



2人の声が重なる。仲のよろしい事で。


そうして2人のラブコメが始まった。





待てやボケぇえええ!!!そこは俺と転校生とのラブコメが始まる所じゃないんかいッ!!!どうなってんじゃ!?





そして2人は数ヶ月後に付き合い初めカップルとなった。その間、俺が2人に関わることはなかったという。





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俺のドタバタラブコメが……始まらない!? 助部紫葉 @toreniku

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