《クズ勇者更生プログラム》 ~のじゃロリ女神にチート没収 レベル1から魔王再討伐しないと力は返して貰えないそうです~

とんとん

『第一章』じゃ

『プロローグ』じゃ



 ひた、ひた……。



 月明かりが射し込む路地裏。

 素足の足音がゆっくり近づいてくる。


「ちょっ……ちょっと待って!! まじで、まじで一回待ってくださいって!!」

「そうかそうか~。そんなに痛かったのか~かわいそうじゃな~」


 ひた、ひた、足音が目の前に来る。見上げると美しい幼女が立っていた。

 透き通るような白髪に、巫女のような赤の白の服を着た、ガキだ。


「でも、ダ~メ~じゃ!」


 ふっ、とその足が消える。と思ったら、爪先がオレの股間を捉えていた。


「まだお仕置は終わっとらんぞ♪」

「ひぎゃぁあっっ!!」


 金的クリーンヒット。手加減とかもない一撃。

 さっきから股間ばっかマジの全力で蹴ってきやがるこのクソガキ!

 くっそ、痛えッ。冗談抜きで死ぬ!

 涙が止まらない。なんでこんな幼女に泣かされなきゃいけないんだ。


「ひっ、ひぃ~~」


 オレは必死に地面を這いずった。


「おうおう、そんなにガンバって逃げようとして。健気で可愛い子じゃのう~。

 そんなにわしが怖いかの?

 どうしてこんなことになったんじゃろうな~?」


 幼女は、口元に愛おしげな笑みを浮かべて追いかけてくる。

 イカレてる。

 いったいなんなんだ。

 こいつは。


「知りませんよっ!! てかっ、まずあんた誰なんすかァ! オレあんたになんかしたっすか!?」


 必死に叫んだ。何もしてないはずだ。

 むしろオレは誰からも尊敬され崇められる存在のはずだ。

 史上最高の勇者だぞ。

 つい最近も魔王倒したばかりだぞ。


「わしはコン様じゃ」


 その幼女は名乗った。


「は? コン……?」

「そうじゃ。コン様と呼んでおくれ♪」

「こっ、コン……様……」

「そ~うじゃそうじゃ。えらいぞ」


 幼女はオレに近づくと、小さな手を伸ばしてきた。

 ひっ。

 やばい。

 やばいマジで、殺される!


「命と子孫の種だけはカンベンしてくださ――――い……?」


 反射的に身を固くしたが、何も起こらなかった。

 目を開けると、幼女がオレの頭に手を置いていた。

 びっくりするほど優しい手つきで。


「このわしが、どーしようもないクズのおヌシを、“真の勇者”にしてやる」

「……へ?」


 その幼女――コン様は微笑んだ。サディストとも、聖母とも取れる笑みで。


 この時のオレには恐怖でしかなかったが……。



「《更生プログラム》じゃ」



 ともかくそれがオレと、このイカれた女神との、最初の契約だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る