ハナとヌーちゃん

@taonaka

第1話

「ねえ、どうしてどっちも目指す方向は一緒なのに、対立するんだろうね」

「急になんの話?ていうか今授業中なんだけど」

「だって自習暇だし。それよりさあ、なんでだと思う?」

「なぜ進む方向は一緒なのに対立するかって話?」

「うん」

「…状況にもよるけど、そういう時って大体、どっちにも正義があるから起こるんじゃないか」

「でも、どっちにも正義があるなら、和解できるはずだよ」

「正義と正義は対立するものだよ。和解なんてできない。和解したフリはできても」

「へえ…正義ってなんなんだろうね。対立を生むものを、正義って呼ぶのかな」

「さあね。人類が何千年もかけて考えたものが、私たちに分かるわけないだろ」

「じゃあさ」

ハナは私の首元にナイフ…に見立てたであろうシャーペンを向けてきた。

「おい、どういうつもりだ」

すかさず私もハナにシャーペンを向けた。

「正義から対立が生まれるなら、対立から正義が生まれることもあるのかなって」

「だからっていきなり凶器向けるのは物騒すぎるだろ」

「どう、正義生まれそう?」

「命の奪い合いなんかしようとしてる時点でどっちにも正義はないだろ」

「でも、もしヌーちゃんが悪者だったら、ヌーちゃんを殺さなきゃ自分を守れないよ。自分を守れなかったら、正義も守れないじゃん」

「…じゃあ、正義なんて初めから存在しないのかもな」

「ふーん。あ、でもさ」

「なんだ」

「可愛いは正義だよね」

「…まあ、可愛いは誰も傷つけないしな」

「見て、昨日買った筆箱。可愛くない?」

「…猫のイラスト?」

「うん」

「私犬派だから」

「どっちも可愛いものが好きなのは一緒なのに、対立してしまうんだね」

「犬こそ正義だから」

「正義って勘違いから生まれるのかもね」

「は?」

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