第五十五話 新しい武器を作ろう! その2
成功率は90%。問題なし。
射程の長さで言ったら弓が
「ブーメランっすか。
残念っすけど、手持ちの錬魔石じゃ作れないっすよ」
「へ?」
「ここ見てくださいっす」
カタログ。
ブーメランの図の下に、赤・青・黄色の丸が書いてある。
「これがブーメランに必要な錬魔石の種類と数っす。
このブーメランに必要な錬魔石は赤と青と黄色、それぞれ一個ずつっす」
「合計で三個の錬魔石を一つの武器に突っ込むのか?
これまで三個以上の錬魔石を付けた武器は見たことないぞ……」
強化の錬魔石と操作の錬魔石と支配の錬魔石、それらをまとめてブーメランに組み込む……一体どんな性能になるんだ?
すっげぇ興味あるけど、持ってないモンは持ってないしな……
「シール、赤と緑しか持ってない」
「しゃあねぇ、他のにするか……」
「待つっす」
ディアがカウンター内にある扉を開き、中へ入っていく。
一分も経たない内にディアは青い錬魔石を持って帰って来た。
「その形成の錬魔石とこの操作の錬魔石を交換してあげるっす」
「お? いいのか?」
「この錬魔石、融度は2っすから。
そっちの形成の錬魔石よりワンランク劣るっす。交換としては悪くないっす」
「だがそれでも黄色の錬魔石が足りないぞ」
「それについても一案あるっす」
とりあえず、オレは形成の錬魔石と操作の錬魔石を交換した。
「この街から出て、ずっと北東に行ったところに火山があるっす」
「“グルエリ火山”か」
「そうっす。そこのヌシの魔物が黒い魔力を扱うっす」
「だからなんだ?」
「ウチは今、黒い錬魔石が欲しいっす。
そのヌシを倒せば、黒い錬魔石が手に入る可能性があるっす。
黒い錬魔石を持ってきてくれれば、ウチが持ってる黄色の錬魔石と交換してあげるっす」
火山のヌシを倒して黒の錬魔石を入手。その錬魔石を黄色の錬魔石と交換。
そうすりゃ赤と青と黄色の錬魔石が揃って、ブーメランが作れると。
「……悪くない話だな」
しかし、黒の魔力――破壊の魔力を操る魔物か。
ちょい不安はあるが、好奇心には勝てないな。
「わかった。
そのヌシとやらを討伐して、黒の錬魔石を持ってくるぜ。
アシュ、ついて来てくれるか?」
「うん、いいよ。
その前に……」
アシュはレジカウンターに身を乗り出し、
ぎゅっとディアを抱き寄せ、胸に顔を埋めさせた。
「むぐっ」
「撫でたらお金取るって言ってたけど、抱きしめたらお金取るとは言ってない」
「……ぬ、ぬかったっす」
「詰めが甘かったな」
アシュが満足した所で、オレ達は店を出た。
---
“グルエリ火山”近辺。
焦げた岩の匂いが充満する。大地には赤い亀裂が走り、ところどころにマグマの沼がある。
通常、こういった火の粉飛び交う場所に来る時は、肌を焦がさぬように全身を覆う鎧や衣服を着るのだが……オレとアシュは普段着のまま来てしまっていた。
「あちぃ! ――くっそぉ、ちゃんと準備して来ればよかったぜ」
火の粉が頬を掠める。
オレはコゲの付いた肌を外套の袖で拭う。
気温の高さもうざいが、それ以上にこの火の粉が鬱陶しい。
生足を晒しているアシュはもっと辛い目に遭ってるんだろうな、と思って隣を見てみると、アシュの体を覆うように風が巻き起こっていた。
風の鎧が火の粉を弾いている……。
「――アシュ。お前まさか……」
「ん? なにか言ったシール?
風の音でうまく聞こえない……」
「オレにも、風の鎧くれませんかね……」
オレはアシュに風の鎧を付けてもらったあと、火山の周りを歩いた。
出てくる魔物はやはりと言うか炎を操るやつばかりだ。大して強くはなく、封印物を使わずとも倒すことができた。
しかし……どれだけ歩いて探しても、火山のヌシらしき奴が現れない。
「どうする、火山の中へ入るか……」
いや危険だ。火山の中はマグマの面積の方が地面より多い。
もしそこにヌシが居たとして、満足に戦えないだろう。
「止まれっ!」
オレが考え事をしていると、渋い低音ボイスが聞こえた。
オレとアシュの正面にある背の高い岩。その岩の上から足を擦る音が聞こえてくる。
「はぁ。
面倒事の匂いがする……」
声からして、只者じゃなさそうだな。
オレは“獅”の札を手に取る。
岩山の上、そこから一つの影が飛び降りた。
「――っ!!?」
オレはその……
「お前たち、ここでなにをしている? 目的はなんだ!」
フサフサの毛並み、四足歩行。
その姿は間違いなく――犬。なのにその口からは渋い美声が響いていた。
「犬が、喋ってやがる……!」
「もふもふっ!!」
――――――――――
【あとがき】
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