第四十話 離別
黄色の雪が降り注ぐ地。
そこでオレは彼女と出会った。
レイラ=フライハイト。
オレの師、バルハ=ゼッタの孫娘に……。
彼女は爺さんのことを深く憎んでいた。
弟子であるオレにまで憎しみを向けるほどに。
「場所はマザーパンク第一層、
ゴーン……と重く、芯にまで届く鐘の音が響いた。
昼の終わりを告げる鐘の音だ。
「今と同じ時間。
この鐘が鳴る時、でいいよね?」
「あぁ、それで構わない」
「逃げないでよ。
シール君……」
レイラがマザーパンクを降りていく。
「待てよ」
オレはレイラを呼び止める。
「一応伝えておく。爺さんは死んだぞ。
もう一か月も前にな」
「……。」
レイラは言葉を返さず、階段を降りて行った。
オレは手紙を握った拳を開く。手にはビリビリに破けた手紙がしわくちゃになって残っている。
「ちょっとその手紙、見せなさい」
シュラがオレの右手の上で両手を広げた。
シュラの手から白い魔力が流れてくる。
――再生の魔力。
手紙はあっという間にくっつき、直っていった。
「おお!
お前の副源四色、白だったのか!」
「そうよ。元の形がわかってればこれぐらい再生できるわ。
それでどうするつもりよ?」
「どうするって、勝つしかねぇだろ」
「アンタ甘く見ない方がいいわよ。
あの女、相当強い。さっき抱きしめられた時異質な魔力を感じたわ。
やばい匂いがする」
同感だ。
料理の際に披露した器用な緑魔操作。
シュラの蹴りを片腕で受け止めるほどの赤魔。
形成の魔力、強化の魔力。どっちも使える万能型。
だって爺さんの孫娘だもんな……弱いはずがない。
「しっかりしなさいよね!
バルハ=ゼッタの家の場所、あの女に聞かないといけないんだから!
アンタが勝たないと聞くに聞けないわ!」
「いま聞きに行けばいいだろ、お前が相手なら教えてくれる――こともないか。
爺さんの名前出しただけでキレそうだもんな。
安心しろシュラ、アイツ以外で爺さんの家の場所を知ってそうな奴に心当たりがある」
「ほ、ホントに?」
「ああ。
騎士団の支部所に行くぞ。
そこに爺さんの知人が居るはずだ」
「ちょっと待った。
その前に行くところがあるわ」
オレは“なんだ?”と言おうとして思い出す。
あの三人の事を。
---
カーズ、イグナシオ、フレデリカ。
ばらけた三人を集め、オレ達はマザーパンクの最下層まで降りた。
小さな門を越え、街の外へ出る。
広がる野原。
整理された草木が刈られた道が何本か引いてある。
オレとシュラ、対面してカーズとイグナシオとフレデリカが立つ。
「そう、ですか……」
オレが最低五日間、この街から離れられないと告げると、三人は頭を悩ませた。
「わりぃ大将。
さすがに五日間の足止めはきついぜ。
オレはいち早くギルド街に行きたいんだ」
「すみません。私もギルドに戻らないと……」
「ぼくも、マザーパンクではなく帝都で騎士団に入隊したいので。
急ぐ話でもありませんが、ここに長く滞在するつもりは……」
「そうか。なら仕方ないさ。
ここでお別れだな。シュラ、お前はどうする?」
「残るに決まってるでしょ。
なんにせよ、まずはアンタの心当たりって奴に会ってみないと」
二対三に別れることになるか。
コイツらと最悪でも帝都まで一緒に旅できれば良かったけどな。
「ま! ここで別れても俺達はなんとなく再会する気がするぜ」
「ふんっ! このガキ大将と同意見なのは不本意ですが、ぼくもまた貴方達とは会う気がします。
――達者で。シール、シュラちゃん」
「また、ご縁があればよろしくお願いします。
アシュさんにも、よろしく伝えておいてください……」
三人はマザーパンクを出て、帝都に向かって出発した。
オレとシュラは手を振って三人を見送り、つま先をマザーパンクの内側へ向ける。
「あー、寂しい。
急に心細くなってきた……」
「なーに落ち込んでるのよ! まだ私が居るじゃない!
さ、はやく行くわよ。騎士団の支部所にね」
――――――――――
【あとがき】
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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