桜の切れ目に。

うさぎパイセン、オーナーはもうダメだ。

桜は本当に桜色と思えるのか。

桜が咲いた。

と。思うじゃん?季節は冬よ。まだまだ咲くわけないよね。でもまだ散ってはいないのが幸いかな。


「ねえ、来週の模試怖いんだけど」

隣で優美がボツボツと肩をすぼめる。私も怖いさ。


「隣のクラスの頭良い子、推薦合格だって」

「良いよなぁ」


誰だ、こんな窮屈な日々を子供たちに課したエラい人たちは。


「大人になんてなりたくねえな」

「高校生は大人だよねえ」


雪がヒラヒラと踊らせるのを一役買うびゅーっと吹く風。こちとら風邪も引けねーってのに。


「吉野ぉ」

「忘れんなよォ」


優美がスマホのサブスクで音楽を流す。

桜。桜。今咲き誇る。

「私ら桜咲かせるために頑張ってんだからさぁ!」


冷え冷えとした空気感。深々と紡いでく会話。積もる雪。2人で話す、モノクロの彩り。その中の暖かな白。買い食い禁止の禁忌を破って近くのコンビニで買った肉まんの湯気とささやかな中学生の反抗期の呼気。


そんな季節はひとつの終わりを迎える。


「目も綾に!」

「咲き匂う桜!」



「桜は目を惹く程美しい!」


結局。


桜は咲いた。が。


「やっぱ志望校変えればよかった。吉野ぉ、離れるの、ヤダよーッ」

卒業証書片手に目を真っ赤にして泣きながら優美が言う。

「しゃあない、大人になるってこーゆーことよ」

ひょうひょうと。笑って優美との最後のハグ。


「絶対他校同士でも会おうねーっ」

「ゆーじょーは、不滅だっ!」


桜が揺れる。桜の花びらたちの切れ目。別れ。私たちの中学生という子供時代の句点。


しかし、斜めに交わった線は止まらない。彩り鮮やか大人としてこれからまた、高校生活という名の極彩色であろう折り重なる人生の織物を紡いでいくのだ。


これから、何度も句点は来る。区切りは来るが。


「これからも、よろしく!」


巡り会う縁に句点はなき。


【了】

(書き上げ時間4月10日23時18分)




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桜の切れ目に。 うさぎパイセン、オーナーはもうダメだ。 @shinkyokuhibiki

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