第12話 今はまだ友達,先輩

「説明してね?」

「説明して下さい?」

...怖い!怖いって!

え?さっきまでの青春感のある時間は

一体何処へいってしまったのかなぁ!?

(てか、何の為にここ来たんだっけ?)

「一ノ瀬、朝日奈、夜桜、早く教室入れ」

「....後でしっかり説明してよ?零くん」

「...『しっかり』説明して下さいね?」

「....はい」

危ねぇぇぇ!ナイス先生!

...でもなぁ?これからどうするかなぁ〜

「えぇ、まず体育祭実行委員として……」

ヤバいなぁ.....話が入ってこないなぁ

てか、アレって俺が悪いの?

.......え?待って?俺悪くなくね?

「朝日奈、夜桜、少し荷物持ってきてくれ」

「え?力仕事なら俺たち男子が.....」

「いいからいいから」

本当に俺たちじゃ駄目なのか?

.....何か引っかかるなぁ、俺の気にしすぎか?

(まぁ、悪い様にはならないだろ)

「じゃあ、ちょっと行ってきますね」

「ん、行ってくるね〜」

「あぁ、分かりました。」

別に大丈夫か.....気にしすぎだったな。

「朝日奈、夜桜――――」

ふぅ〜過保護過ぎだろ俺、ちょっとキモイぞ。

周りの音を全てシャットダウンし、

心の中でしっかりと反省した。

「さてと....」

そう言って先生は息をついた

「一ノ瀬、ちょっと着いてきてくれ」

「えっ?はい」

反射的に、そう先生に答えた

(やっべぇな、何かやらかしたかぁ〜?)

「......」

廊下を歩く先生と、俺の間に会話は無い

決して、気まずいとは思わない。

だって俺と目の前の人間の関係は、

ただの生徒と先生なんだから。

「ん、こんなとこでいっかな〜」

「ここ.....ですか?」

俺と先生が廊下を歩いて、着いたのは.....

(...ただの空き教室の前?)

「.....入らないんですか?」

「入らなくていいんよ、寧ろ入ったら困るし」

......マジでなんなんだ?

先生が何がしたいのか、俺には分からなかった。

「急でスマンが、本題は.....」

「はい」

「朝日奈と夜桜のことだ」

「.....えっ?」

何か、予想外のとこ来たな.....

朝日奈さんと美月先輩のことについて?

「生徒の青春に首を突っ込むようで悪いがな」

「それは...別に大丈夫なんですが」

それで、具体的にどういうことなんだ?

朝日奈さんと美月先輩のことって言われても....

(本題聞いても先生が何してぇか分かんねぇな....)

「朝日奈と、夜桜のこと、どう思ってんだ?」

「.....どう、とは?」

「そのままの意味だよ、どう思ってるんだ?」

「何故...先生が気になるんです?」

俺が気になるのはそれだ...俺の記憶だと

この先生は面倒事は好きじゃない筈だけど.....

「朝日奈と夜桜のこと、ずっと気にしてたんだよ」

「そう...なんですか?」

「あの2人は...ずぅっと退屈そうだった」

そう言う先生の目は、とても悲しげだった....

自分の不甲斐なさを感じてるような

自分の力不足を感じているような、そんな顔だった

「でも、変わったんだよ」

「お前....一ノ瀬と出会ってからさ」

先程とかは変わり、先生の目は希望で満ちていた

期待してるような...そんな目だった。

(期待.....俺に?)

「だから、どう思ってるかな...って話」

「...そう......ですね」

2人が退屈なのを変えたというのと、

俺の2人への印象を聞くのが、

イマイチ繋がってない気がするが.....

(まぁ、いっかぁ.....)

これ以上思考するのが面倒になった俺は、

適当にそう結論付けるのだった。

「世界一尊敬してる先輩と世界一尊敬してる友達」

「は?」

「だから、俺が2人に思ってることです。」

周りを気にせず突き進める努力家

周りを気にしすぎる優し過ぎる優等生

.....俺には勿体ないような美少女たちだよ。

「....あははっ!」

「えっ?ど、どうしました?俺、何か変な事でも」

「いやぁ.....実に最高。実に"青春"だな」

「へ?」

先生の表情は、とても楽しそうだった

オモチャで遊ぶ子供のような.....

(何がそんなに嬉しそうなんだ?)

「だとよ、聞いたか?2人とも」

「は?」

.....空き教室、ただの空き教室

"電気のついた"空き教室。

(おいおい、ちょっと待ってくれ.....)

「へぇ〜"世界一尊敬してる先輩"ねぇ?」

「あははっ、"世界一尊敬してる友達"ですか」

.....ハメやがったなクソ教師ぃ!

ちょっと感動してた俺の純情を返せよぉぉ!

「いやぁ、照れるなぁ」

「照れますねぇ〜」

そう言う彼女たちは、とても愉快そうな声色で

俺にニヤニヤして告げていた。

「青春してんな、一ノ瀬?」

.....彼女たちだけじゃなかったワ

「ふっざけんなぁぁぁ!」

俺の非日常が、平凡じゃない日常が

日常になりつつあり、

2人の思いが、いつか"恋人"になるかもしれないのを

俺はまだ知らないのだった.....。

"時には、問いが複雑になっているだけで、

答えはごくシンプルなことだったりします"

である。


あとがき

ご愛読ありがとうございます!

今回素直に先生に気持ちを綴ったのは、

いつもは覇気がない先生が

珍しく真剣だったからです。

......まぁ、それがアレを招いたんですが笑

ですが、零くんも嫌ではなかったと思います

というか楽しかったと思います。

このような話にしたのは、

朝日奈さんと美月先輩のヒロインズに

零くんの素直な気持ちを伝える展開が

欲しかったからです。

あっ!今回のやつは先生の独断です

今はまだ、"先輩"。今はまだ"友達"。

果たして2人が"恋人"になるのでしょうか?

.....あと、めっちゃ新ヒロイン出したい気持ちを

とてもグッと堪えてタイミング考えてます。

今後も応援よろしくお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る