ゴーストシェイカー

釣ール

春の欲

 十代でしか得られないものってなんだと思う?


 友情?

 愛情?

 理想?


 ふん。

 そんなものどうでもいいだろう。

 今、こうして交合う瞬間を何度経験できるかにある。

 規制ばかり厳しくなってそれに大人しくしたがったって低賃金低待遇時代遅れの田舎丸出しな年寄りになっていくのはぜっっっったいに嫌だった。


ばおり

 少しは高校生みたいな大人なプレイできない?」


 どうやら少し激しすぎたようだ。

 筋肉好きだからってカースト上位から自分を選んだくせにと思いつつもこうして受け入れてもらえるのはありがたい。


「悪かった。

 だがアダルティックなやり方なんて引き出しそんな多くないぜ?俺は。」


 胸を思いっきりどつかれ、ベッドから倒れるばおり


「馬鹿!

 多様性と少しは戦ってくれない?

 あんたは最近何かを理由に私から逃げてる気がする。

 」


「そっちこそ馬鹿言え。

 こんなサイコ笑顔が似合うそこまでイケメンじゃない筋肉質男子高校生に他の彼女がいると思うか?

 勿論変な気もないことはよく知ってるはずだ。」


 そういうと彼女は真剣に条件を話し始めた。


「フェミニズムは今、色んな国で刷り込まれている。

 私は変な配慮は要らないけれどやってはいけないことはやってほしくない主義。

 つまりある程度まともに振舞って欲しい。


 分かる?

 本能に訴えるだけの生活じゃ拍は袋叩きに会うだけ。

 外面を良くするのも自分達だけの楽園を作るのにも大事な要素。


 少し別畑の人間が使う言葉をあえて使わせてもらうと、


 のはこの世でも拍だけ。


 だが依存しすぎは出来ない。

 拍はまだ馬鹿さを捨てきれてない。


 サイコ笑顔は外敵だけにして。」



 なんで?

 なんで俺はこんな罵倒されてんの?


 拍はいい所だったのに急に冷めてしまった。

 この瞬間だけ。

 どうやら彼女を楽しませられなかったようだ。


「外行って頭冷やしてくるよ。」


 服を着替えて外へ出ることにした。



 童顔で実用的な筋肉質男子だからと声をかけられたのが始まりだった。

 あれは高校入学してからすぐ。


 昔格闘技をやっていたことは色々と団体がメディアに取り上げられてもあまり浸透していない。

 やっぱガチは怖いよな。

 だがいいんだそれで。


 武道寄りの試合ばかりだったけれどその時の出来事を彼女に語るとやたら喜んでくれた。


「私フェイクよりのドッキリって興ざめするから、本格派レスキューの訓練みたいな刺激がないと毎日がつまらない。」


 カースト上位と呼ばれるグループにいる拍にとって凄まじい話ばかりだった。

 どうやら彼女も拍のことを狙っていたらしい。


「気が合うな。」


 やっぱ力はいるよなあ。

 結局進んでいく技術と変わらない人間の本能に従う快感の中で生きていくしかないと悟る拍だった。



「ちっ。思い出したくもねえことを。」



 馴れ初めなんてどの国でもどの人間でもみんなSNSのように盛ってる。

 盛ったところで何が変わるわけもない。

 微弱な快楽が自分だけ感じられるだけだ。



 そこでAIチップが大量に落とされていた。

『ゴーストシェイカー』という一種の手品。

 はっきり言うと玩具だ。


 近年の玩具らしくやや高めのAIチップにホログラム幽霊がいてペット感覚で楽しめる現代技術の感動もクソもない代物だ。


「はやく逃げろ!」


 急に物騒な話が聞こえたのでよく観察していた。

 そこには他の高校の一年生とおぼしき男子が友人をホログラムから守っている。


「あのホログラム暴走するのか。」


 喧嘩が弱そうだが体格の良い男子高校生が腰が抜けた友人達を暴走したホログラムからの攻撃をかばっている。


 思ったよりも丈夫そうだ。

 だがここで彼女に土産話が欲しかった拍は堂々とホログラムへと近づきぶん殴る。


 高騰が当たり前の世の中だからAIチップが高級品に思えるがこんな技術は安物だ。


「消え去れ貧乏技術!」


 武術は学んでおいて損は無いな。

 確かな手応えと正当防衛でもあるから久しぶりに腕がなった。


「あ、ありがとうございます!」


 拍は下級生の前で堂々といきがれるので笑顔がこぼれてしまった。


「時代遅れかもしれないがあんな安い玩具が集まった暴走なんてそれだけで物語が出来る。

 ちゃんと撮ったか?

 この高騰をしのぐための小遣い稼ぎにもなったし、むしろ俺からお前たちに感謝したい。」


「うわあ。

 爽やかな見た目とあまり高くない身長からのサイコ笑顔ギャップ差激しい!」


「馬鹿にしてるのかお前!」


「いやなんでもないっす!」


 AIチップも集まってあんな化け物になるのか。

 そしてその記録を念の為撮ってくれた他の高校一年生男子の頭を撫でる。

 SNS社会だからか手慣れてるのか。

 お前らも危ないことやって、るわな。


 もう少しだけ力自慢してやりたかったが彼女に子供だと言われるのが嫌だったので良い先輩を演じながら話し続けていた。

 するとスマートフォンに彼女から連絡があった。


「外だか良ければいいから私の前では子供でもいい。」


 ああ、寂しいのか。

 悪かったと返事をしてここで出来た後輩達とあのやり取りを美化して伝えようとした。


 これなら頭を冷やした甲斐もある出来事だと思う。

 ありがとうゴーストシェイカー。


 そして部屋の周囲に落ちてるAIチップをみんなで拾って綺麗に粉々に処理したのだった。

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ゴーストシェイカー 釣ール @pixixy1O

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