第7話 王都連続通り魔事件3
「僕の特性は“重力と光の速度を自由に変えられる”というものです。」
「重力と光の速度?」
生徒会長が首をかしげている。
「私も光の速度のことなんて知らなかったわ。」
リリアも驚いた様子をしている。
「僕も最近気づいたんです。たぶんずっと無意識下で使っていたんだと思います。」
「それでどのようにして通り魔の攻撃を躱したんだい?」
「通り魔のナイフの先の重力を大きくしただけです。ナイフは自重に耐えられず折れてしまったということです。」
「それは通り魔の攻撃を察知していたということ?」
「ええ確信はなかったのですが歩き方もおかしかったですし視線も感じていましたから、プロではありませんでしたからね。しかしナイフを出したのは攻撃する直前でしたから魔術での対処は厳しかったですね。」
「それが皆できたらいいんだけどね、上級生は大丈夫だろう。」
「確かに被害者はみんな一年生か二年生だったわね。しかも四人中二人が男の子だった、学年の9割近くが女性なのに。相手は不法移民だった、横のつながりもないと考えるとおおもとを叩かなくては意味がない。犯人はどのようにして人員を調達しているかを考えるべきね。」
「とりあえず登下校時、三、四年生はそのまま、二年生は集団下校そして一年生は登下校に学園側で送迎を用意するということでどうでしょう、会長。」
「それでいい。」
生徒会長がクロエさんの意見するとリリアが席を立った。
「今日はこれで終わりということで私たちは帰っていいかしら。」
何か急ぐ理由があるわけでもないので僕は不思議に思いリリアを見ると彼女は僕の腕をつかんだ。
「ほら早く行くわよ、ソフィアも。」
「え、ええ」
そうしてせかされるようにして扉の方へ向かおうとすると
「待って」
そう声がするといつの間にか目の前にサイズの合っていない制服を着た生徒会長とクロエさんが立っていた。
「まだ何か?」
警戒した様子でリリアが尋ねる。
「犯罪グループのおおもとを叩くということで不法移民を調達できる場所、人は限られている。そこは調べつぶしにできるだろう。しかし今現在王都に蔓延る不法移民が報酬をもらって学園の生徒に手を出しているということなので掃討しなくてはならない。そして彼女らには横のつながりがない。捕まっても一網打尽にされないためだろう。つまり捕まったことを報道しなければ不法移民たちは同胞が捕まっているかもわからないということだ。そこで囮を用意し根気よく一人ずつ捕まえていこうという作戦だ。」
「その囮をイツハにやらせるということですか」
リリアは怒気をこめてクロエさんに言い放った。
「世間的に弱いとされている男の子、そして一年生の公爵家の長男。囮にピッタリ」
そう無表情だがどこか自信に満ちた声でそう言った。
「危険です。相手が想定以上の実力をもっていてイツハが怪我をしたらどうするんですか」
リリアは生徒会長とクロエさんに凄んでいる。リリアが怒ったところ初めて見た…
「大丈夫、イツハと戦って勝てるような者がいるとしたらこんな捨て駒みたいな使い方はまずしないだろう。もしそんなやつがいるとしても犯罪組織の上のほうで経過観察しているだろうからね。」
クロエさんがリリアを説得しているがリリアは納得のいっていない表情を浮かべている。するとクロエさんは諦めたのか僕の方に向き直った。
「それでイツハ、やってくれるかい?」
「はい、大丈夫です。」
「ねえ、ちょっと、通り魔に刺されに行くなんてどうかしてるわよ。負けるなんて思ってないけど万が一のことがあったら」
「じゃあ君たちはイツハの数m前を歩くといい。並列して歩くことは警戒されてしまうからできないけれど。そうすれば怪しいやつを事前にみつけられるだろ?」
リリアは僕がやると宣言したこととその提案は自分が優れていれば被害を防ぐことができるというものだったこともあり渋々引き下がった。
「それじゃ決まったことを副会長ここに呼んで了承してもらおう」
「副会長の了承が必要なんですか?」
そうソフィアさんが尋ねるとクロエさんが答えてくれた。
「一応この事件に対する方針が固まって学園側にも動いてもらうことになる。そうするときは書類の提出が必要なんだ。そして会長主体の書類は副会長の、副会長主体の書類は会長のサイン、了承が必要なんだ。」
先生たちが放任主義なだけに生徒会はいろいろな決定権、権力を持っているため万が一が起こらないように提案から決定までに段階をはさんでいるということか。
「なるほど、そういうことですか。」
「呼んだから副会長が来るまでここで待っていてほしいんだ、たぶんまだ決定までに時間がかかるからね。」
僕は了承しているしあとは副会長と生徒会長ですり合わせるだけなのでそんなに時間がかかるのだろうかと疑問ではあったが副会長が来るまでクロエさんと旧交を温めながら待っているとしばらくしてすごい勢いで生徒会室の扉が開いた。
「その提案、ちょっと待ったああああああああ!」
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