魔術と僕と少女たち

@NOMOA

第1話 入学式前夜

「イツハ様、明日は入学式ですね。やはり多少の緊張はございますか?」


 夜、王都にある別宅で夕食をとっていると後ろからメイドのキーノが声をかけてきた。


「そうだね、知り合いもいるから緊張してはないよ。」


 この国では王族、貴族は14歳から18歳まで国立の学園に通うことになっている。その4年間で魔術や自分の特性について理解し実践的な演習を経て卒業していく。その後は一般的に親の下で土地を治めるノウハウを学んだり冒険者として実績を積んでいき27歳の誕生日に領民に実績を公開し認められ親から領地を受け継ぐことになっている。


「知り合いというのはリリア様のことですか?」

「えっ…うん、そうだよ。

 幼い頃からの付き合いだから彼女がいてくれてありがたいよ。クロエさんもいる  

 し」


 リリア様とのことキーノに話したことあったかな


「しかし主様お気を付けください。王都は治安がいいといってもほかの町と比べてで

 すから、月に数件は誘拐や殺人などもありますからね。そして特に女性関係は私に逐一報告してください。色々な意味で火種の元ですからね。」


「わかっているよ、姉様の一件の時はキーノがいてくれなかったら今頃ここにはいれ

 ないだろうからね。」


 キーノは僕のたった一人のメイドである。実家にはメイドや執事はたくさんいたけれど主は家、つまりお母様やお父様のメイド、執事なのだ。そういった意味でのたった一人だ。3歳ほどの時、5歳の彼女と出会いそれからの付き合い。肩の少し上で切りそろえられた日光を反射する新雪を連想させる綺麗な白色の髪にメイド服の上からでもわかる長い脚、透き通るな翡翠色の瞳を持った美少女である。そんな彼女が主として僕を慕ってくれていることにとても幸せを感じている。


「ご馳走さまでした、いつもありがとう。僕は明日の支度を済ませて早めに寝てしま

 おうと思う。」


 そう言いながら席を立ち自室に戻り支度を整えてベッドにもぐった。




「気づかれてはいませんね」


 彼は身内に対して人を疑うということをしない人であるのでおそらく大丈夫であろう。


 「しかしつい口を出してしまいました。」


 あの女つくづくいらつくわね。まあ彼はエレオノールイツハ様の姉様の一件以降私に依存している節があるから今すぐにどうこうなることはないだろうけど。彼が学園を卒業して冒険者として実績を積むときには私が一日中そばにいられるからそれまでの辛抱ね。彼の特性と私の特性は相性がいいから一緒に冒険者をやることに違和感は持たれないでしょうし。

 彼が貴族であるからとか潜在能力が凄まじいからとかでなく彼をただ純粋に愛している。もっとおしゃべりしたい、もっと頼られたい、もっと力になってあげたい、そして永遠に一緒にいたい。ただそれだけそれまでにもっともっと依存してもらわなくては。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る