第39話 迷子の狐と秋の誓い

桃源郷の木々が紅葉で色づく秋のある日、小袖君と恋歌は村の近くの森で不思議な出会いをした。森の奥深くで、一匹の小さな狐が道に迷っているのを見つけたのだ。この狐は特別な姿をしており、その毛は夕日のように輝く金色に光っていた。


狐は怯えており、小袖君と恋歌に近づくのをためらっていたが、恋歌が優しく声をかけると徐々に警戒心を解いて近づいてきた。「この子、どうしたのかしら?」と恋歌が心配そうに言った。


「怪我はしていないみたいだけど、どうやら家を失くしてしまったようだね。少しの間、僕たちが面倒を見よう」と小袖君が提案した。そこで二人は、狐を一時的に自宅で世話することにした。


その晩、狐は小袖君と恋歌の家で安心して眠りについた。翌朝、狐は元気を取り戻していたが、何かを訴えるように森の方へと二人を導こうとした。小袖君と恋歌は狐についていくと、森の中に隠れた古い祠を発見した。祠は少し破損していたが、狐が何度もその場所を指し示すのを見て、二人は何か特別な意味があることを感じた。


小袖君は修復の魔法を使って祠を修復し、その瞬間、空気がふわりと温かくなり、周囲が光で満たされた。すると、狐が突如、美しい女性の姿に変わった。彼女は狐の精霊で、長い間この祠を守っていたと語った。


「私を助けてくれたお礼に、この森と村を見守る力を、もう一度、強めることができる」と精霊は言い、小袖君と恋歌に感謝を述べた。そして、精霊は森の奥深くへと消えていったが、その後、村の周囲の自然は一段と豊かになり、村人たちもその恵みに感謝した。


小袖君と恋歌はその年の秋、村の祭りでこの出来事を語り、村人たちは祠を訪れて精霊に感謝の祈りを捧げた。二人は、この経験から互いの絆がさらに深まり、村と自然との調和の大切さを改めて実感した。

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