第35話 回る世界
秋が過ぎ、桃源郷には冬の冷たい風が吹き始めていた。ある日、小袖君と恋歌は村の高台に立ち、広大な風景を見渡していた。彼らは、最近村に現れた新しい遊具、「回る世界」を見つけるためにやってきたのだった。
「回る世界」とは、巨大な回転木馬のような構造を持ち、村の高台に建てられた新しいアトラクションだった。村人たちの間で噂になっており、その回転する構造が、乗る者に特別な視点から世界を見せるという話だった。
「すごいね、小袖君。こんな大きなものが突然現れるなんて」と恋歌が言った。
小袖君は頷きながら、「そうだね。この遊具が一体どうやってできたのか、誰が作ったのか、ちょっと不思議だよね」と答えた。
二人は興味津々で「回る世界」に近づいた。木馬に似た座席に乗り込むと、それはゆっくりと回転し始め、次第にスピードを上げていった。風が顔に当たり、彼らは空中に浮いているかのような感覚に包まれた。
回転が速くなるにつれて、小袖君と恋歌の視界には、村や森、川がまるで絵画のように広がった。彼らはその美しい光景に心を奪われ、「これが世界を回るってことなんだね」と恋歌が興奮して言った。
小袖君も笑いながら、「うん、まるで新しい世界にいるみたいだ」と返した。
「回る世界」が止まると、二人はその興奮を村の人々と共有しようと決心した。彼らは村に戻り、子供たちや大人たちに「回る世界」の体験を話し、みんなを連れて再び高台へと向かった。
村の人々もその遊具を気に入り、次々と乗り込んでいった。子供たちはそのスピードと高さに歓声を上げ、大人たちはその視点から見る景色に感嘆した。
その夜、村の広場で小さなパーティーが開かれ、みんなが「回る世界」での体験を語り合った。小袖君と恋歌は、「これが新しい村のアトラクションになりそうだね」と話しながら、満足げに微笑み合った。
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