第21話 トンボの飛行と秘密の池

春の暖かな日差しの中、小袖君と恋歌は桃源郷の未探索の部分へ冒険に出た。この日は特に、小袖君が新たに発見した魔法を試す絶好の機会だった。彼は大きなトンボを呼び出す魔法を開発しており、その魔法を使って村の周辺を空から見る計画を立てていた。


「恋歌、準備はいいかな?」小袖君が彼女に問いかけると、恋歌は期待に胸を膨らませてうなずいた。「もちろん、小袖君。空から村を見るなんて、わくわくするわ!」


小袖君は集中して、古代の言葉でトンボを召喚する呪文を唱えた。すると、光の粒子が集まり始め、やがてそれらが形を成して、巨大なトンボが現れた。トンボの体は透き通るような翡翠色で、翼は太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。


「さあ、飛ぼう!」小袖君は恋歌の手を引き、二人でトンボの背に乗った。トンボは軽やかに空へと昇り始め、村の美しい風景が一望できる高さに達した。


空から見る桃源郷は別世界のようで、花が咲き乱れる野原や、緑豊かな森、輝く小川が見渡せた。恋歌はそのすべてに感動し、「小袖君、こんなに美しい景色を見るなんて夢みたい!」と声を弾ませた。


飛行の途中、小袖君はトンボを操って、普段は見ることのできない村の外れにある秘密の池へと向かった。この池は普段は人が訪れることはなく、静かで神秘的な場所だった。


池に到着すると、二人はトンボから降りて、水面に映る春の光景を楽しんだ。池の周囲は野生の花で飾られ、小動物たちが姿を見せる自然豊かな場所だった。恋歌はその美しさに引き込まれ、「ここは私たちだけの秘密の場所にしよう」と提案した。


夕暮れ時、小袖君と恋歌はトンボを使って再び空へと上がり、夕日の中、村へと戻っていった。この一日は、二人にとって忘れられない特別な経験となり、彼らの冒険心をさらに掻き立てた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る