第12話 清らかな甘酒と雪の夜

寒さが一段と厳しくなる中、小袖君は村の冬の祭りに向けて、特別な甘酒を作ることにした。この甘酒はただの飲み物ではなく、彼の魔法によって疲れを癒し、体を内側から温める効果があるとされる「清らかな甘酒」だった。


「恋歌、この甘酒を作るのに特別な魔法を使ってみようと思ってるんだ」と小袖君が言うと、恋歌は興味津々で彼の隣に立ち、「どんな魔法を使うの?」と尋ねた。


小袖君は、魔法で時間を加速させることで、通常なら何時間もかかる甘酒の発酵過程を瞬時に完成させる計画を立てていた。二人は村の広場に設置された大釜に、米と麹、水を入れた。小袖君は集中して呪文を唱え始め、彼の手から出る魔法の光が釜の中に吸い込まれていく。


僅かな時間で、甘酒は完成した。試しに少し味見をすると、その甘酒は予想以上に美味しく、体がほっこりと温まる感覚がした。「成功だね!」恋歌が喜んで言い、小袖君も安堵の笑みを浮かべた。


祭りの夜、村中に雪が降り始めた。冬の白い景色が広がる中、村人たちは一つのテントの下に集まり、小袖君と恋歌が用意した甘酒を楽しんだ。冷えた体に温かい甘酒は格別で、村人たちは一口飲むごとに顔をほころばせた。


「小袖君の作った甘酒は特別だね。こんなに体が温まるとは!」村の長老が感激して言うと、周りの人々も同意の声を上げた。


甘酒を配りながら、小袖君は恋歌と目を交わし、彼女の笑顔に更なる暖かさを感じた。「恋歌、君と一緒にいると、どんな寒さも感じないよ」と彼は言った。恋歌は「私もよ。小袖君といると、いつも心が温かい」と答えた。


祭りが終わりに近づくと、小袖君と恋歌は手を取り合って雪が積もる広場を歩いた。雪の中で交わされた会話は、二人の間の絆をより深め、彼らの周りにも温かな雰囲気が広がっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る