『クソ物書きの叫び』

小田舵木

『クソ物書きの叫び』

 桜の花を踏んづけた。

 ああ、桜は散りゆく季節になったのだな、と思わされる。

 時間ってヤツは無情だ。気がつけば過ぎ去っていく。

 俺は段々と老けている。いや、まだ今年で32なのだが。

 

 こうやって老けていく中で、俺は何を残せるんだろう?と思う。

 生涯独身なのは決まっているから子どもは残せない。

 

 と、なると。

 俺は趣味の小説で作品を残す事くらいしか出来ないだろう。

 毎日は書けていないが、時間を見つけてシコシコ書き続けている。

 

 だが。

 時間はどんどん減っていき、書いてる小説にはキレがなくなりつつある。

 昔は溢れ出る創作意欲があり、書きたいテーマが腐るほどあったのに。

 今や。何を書けば良いのか分からなくなりつつある。

 

 迷子になりつつあるのだ。

 俺は一体、何の為に小説を書いていたんだっけ?

 最初は。小説でメシが食いたかった。いやあ。純粋な頃の夢である。

 今は…今は?書けば書くほど分からなくなって。

 小説を書くこと自体が目的になりつつある。

 でも。それは違う。小説はツール。道具なのであって。

 それを使って何かを成さねばならない―と思っている。

 

 小説を使って何を成す。

 俺は社会に対しての自己表現として小説を始めたはずなのに。

 今は表現したい自己がない。

 これは健康になった証拠なのだろうか?いいや。そうは思えない。

 俺は枯渇しそうになっている。

 創作能力が衰えつつあるのをひしひしと感じている。

 

 このまま。

 俺は書けなくなってしまうのだろうか?

 …考えるだけで恐ろしい。

 俺は小説が巧い訳ではないが。カクヨムに180本強の文章をポストし続けた。

 お陰で。昔よりは文章を書けるようになってきた―と思っているのだが。

 これは勘違いなのだろうか?分からない。

 自分の文章を客観的に見ることはかなり難しい。どうしてもバイアスがかかってしまう。

 

 俺は文章が、小説が。下手になっているのか?上手くなっているのか?

 そもそも。文章をそういう風に評価することが正しいことなのか?

 全く分からない。

 何度も言うが混乱の中にある。

 考えを纏める為に、この文章はあると思うのだが。

 ここまで書いてきても全く考えが纏まらない。

 

 まあ。

 俺の文章はあまり読まれていない。

 昔よりは読者様に恵まれていると思うが、依然として大衆の心を掴むに至っていない。

 大体、流行りの小説を書いている訳ではないし、そもそも文体が拙い。

 

 そう。

 俺の文章は晦渋かいじゅうな割に中身がない。

 だから読者様への負担ばかりが大きくて。

 大衆には受けない―と考えている。言い訳に近いが。

 読まれない言い訳ならいくらでも出来る…虚しい話だ。

 

 俺は。

 恐らく。自分の文章が読まれない事に。フラストレーションを感じている…

 だが。それは当然の話である。

 自分で書いていても。満足する文章が書けていないのだから。

 毎回、書き残した何かを感じながら、文章をアップロードしているのだ。

 感じているのなら、書き足せば良いじゃないか、と思うのだが。一度完成した文章に何かを足すのは難しい。

 

 自分の文章に満足できない。これは中々困った事態である。

 何度も書き直せば良いじゃないか、と思われる向きもあろうが。

 文章ってのは一発モノなのだ、俺にとって。

 出てきた文章に手を加えると。文章の勢いが削がれる。なんなら死ぬ。

 推敲って言葉を全面否定しているような事を言っているが。

 こればっかりは生まれ持ったスタイルであって。中々改善しようがない。

 

 ああ。言い訳ばかりが出てくる。

 俺はしょうもない物書きである。

 こういう文章を書く位なら、小説の一本でも書けば良いのだが。

 今夜ばっかりは、何を書けば良いのか分からなかった。

 そして。気がつけばこんな文章を書いていた。

 

 気がつけば…?

 いや。それは嘘だ。

 過去の作品に素敵なレヴューを頂いて。

 それを機に昔の作品を読んだのだが。

 そこには。今の俺には書けない文章があったのだ。

 昔の俺の方が…いい作品を書いていたのだ、自画自賛だが。

 今の俺は。

 惰性で小説を書いている様に思えてしまったのだ。

 ああ。情けない。過去の自分に負かされようとは。

 

 今の俺は。

 普通の人並みに働くようになりつつあり。

 昔のように創作だけに時間を割くことが出来なくなりつつある。

 これは自分の人生にとって良い事なのだが。

 小説を書くという観点から見るとマイナスになっているように思えるのだ。

 

 俺は。小説にまだまだ未練がある。

 書けなかった作品がまだまだある…はずなのに。

 最近は創作意欲が死につつあるのを感じている。

 加齢に依るモノだと感じているが。それは言い訳に過ぎないのかも知れない。

 

 所詮しょせん、俺の物書きの才能はこの程度のモノだったのだ―

 と、諦めがつけば良いのだが。

 何でだろう、諦めるのが悔しい。

 俺は14の頃に文章に目覚めて。それ以来、一心不乱に読んできて。

 いつか。自分が満足できるような作品が書いてみたかった…

 いつか。自分の体にすっぽり収まる文章を書いてみたかった…

 

 意欲があるのかないのか、よく分からない状態である。

 ただ。小説は書けそうにない。

 溢れ出てくる『何か』が、今はない。

 諦めてさっさと寝るべきなのだが。

 妙に焦りがある。

 それは俺に寿命が設定されているからで。

 俺の細胞に分裂限界があるからだ。

 

 時間はない。

 書きたい文章は無限にある。

 ただ。何をどうして良いのかは分からない。

 

 フラストレーションを感じながら。

 俺は今、PCのテキストエディタに向かっていて。

 こんな文章を垂れ流して。

 恐らくはウェブにアップするのだ。

 

 この叫び。

 誰かに聞いて欲しいんだろうな。

 だが。こんな叫び、誰が聞くというのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『クソ物書きの叫び』 小田舵木 @odakajiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ