第9話 分岐点
「ちょ!まっt」
「死ねい!信階炎法『
リグレッドの放った火の玉は氷戈を目掛けて一直線に飛んできた。誰がどう見ようと報復死球である。
火の玉が当たる直前、氷戈は目を瞑り、両腕でそれをガードするように構えた。
・・・・・・・
氷戈がこの体勢をとってから10秒ほどの時が流れた。
そこには気持ちの良い風と、心地よい小鳥の囀りが辺りに響いていた。
パチパチパチパチッ!
前方から聞こえてくる拍手の音でようやくその構えを解いた氷戈は目を開けると
「ぜぇ、はぁ。い、いやー、すごいねぇ君!本当になんともない。完全に『通していなかった』よ!」
リグレッドは疲労と笑みが入り混じった顔ではしゃいでいた。
恐怖でも、苛立ちでもない、なんともいえない感情が氷戈を襲ったが、ぐっと飲み込み問う。
「・・・通していなかった?」
「そう!今俺が放った『
「・・・なるほど。確かにそれが本当ならすごいかも。ところで『点炎』とか『信階』とか以前に『死ねい!』ってなんだったのさ」
「あれ?怒ってる?」
ケロッとした表情でこちらを見つめてくる。
今回の件然り、ワープ術でリグレッドが自身を対象にせず力己たちの面倒をサミィに丸投げした件然り、この男はあくまで『そういう人』なのだけであって悪気はないんだろうと直感的に感じた氷戈は慌てて問い詰める。
「いや、そんなことどうでもよくて!力己や燈和は無事なのか?あの人たちに任せて大丈夫なのか!?」
「どーどー、そう慌てなすんなって。心配はいらないよ。転移は成功してるし、そもそも致命傷でもないし、サミィとフィズは信用できる。俺が保証する」
「・・・」
リグレッドを『そういう人』ジャンルに分類した氷戈だが、なぜか信用していい気がしていた。
根拠の無い、直感という感覚が先ほどから続く。
「わ、わかった。信用するよ。あと、今更だけど助けてくれてありがとう、感謝してる」
「いやあ、当然なことをしたまでよ。だって俺の仕事は『人助け』だから」
「それさっきも言ってたけど、そういった組織に属してるってこと?ジェイラにはこっぴどく言われてたけど」
「ふむ・・・」
ここで少し考え込んだリグレッドは、次には表情を明るく変え
「よーし!本当は君のお友達も交えて説明しようと思ったけど、今日はそれも無理だしね。簡単にだけど『この世界の常識』についてレクチャーしてあげよう!」
ー思えば、この日が『分岐点』だったのかもしれないー
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