第4話  紫陽花日和2

今年、紫陽花を見たのは


離婚調停中だった


今年の僕の誕生日も


離婚調停中だった




7ヶ月の間に4回も


どうして君は浮気をしたの?


3回迄は我慢してみたけれど


4回は僕には許せないよ




2ヶ月目に浮気が発覚したから


楽しかったのは1ヶ月だけだね


君が電話の横のメモ帳に


待ち合わせ時間と場所を書いて


置きっぱなしにしているから


気付きたくないのに気付くだろう?


携帯を使ってくれたら良かったのに


家庭用の電話機もいらなかったな






浮気なんてしてほしくなかった


せめてバレずにいてほしかった


バレるのは気遣いが欠けているだろ?


せめてバレないように気を遣ってくれよ


何故、浮気したの?なんて訊く気も失せる


もう、何もかもどうでもいいや


君に“変われ”とは、もう言わないから


早く離婚届けに印鑑ハンコを押してくれ








今年は例年と違うんだな


紫陽花をゆっくり眺めている


綺麗なものを綺麗と思えるから


多分、まだ僕は壊れていない






離婚って嫌なことだよね


君と幸福になりたかったのに


失望も絶望も終わったし


残っているのは後悔と反省




離婚するって言った時には


君は包丁を振り回していたね


全身全霊で離婚を拒否して


なんで離婚してくれないの?


君の借金を毎月払わされて


君に何度も浮気をされて


殺されそうになるなんて


ちょっとだけ非道くない?




君に離婚を告げて寝た夜


君は寝ている僕の首を


ネクタイで絞めていたね


目が覚めた僕と目があった時に


一瞬、間が空いてから


“駄目、やっぱりできない”って


僕に抱きついてきたよね


おいおい!本気で絞めていただろう




僕はもう大丈夫だと思う


病院に通った時期もあったけど


また笑えるようになったし


青空を見て清々しいと思える


心も身体も 健康になろう


待っている、ただ待っている


印鑑ハンコを押した離婚届けを


手に入れる日を




今はそれだけを待っている


これからのことは、なんとかなるさ


離婚届けを待っている


紫陽花の綺麗な今日は


なんて素晴らしい


紫陽花日和







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