第16話

「ちょと、アルバスこんな夜遅くにどこに出かけるのよ」


母が心配そうにする。


「ちょっと散歩だよ」


「でも最近変な事がおきてるわよ。この前のウルリちゃんの様に拉致事件だって…」



「大丈夫だよ。俺は強いからさ」


「そういう問題じゃ」


やれやれ、前世が最強の魔法使いだった俺がこんなに心配されるなんてな。


「まあ、いいじゃないか。そんなに過保護にする必要はない」


父が母に言った。


こうして俺は夜の街に繰り出した。


しばらく歩いていると一人の男性が倒れていた。


(息はあるな。外傷もない。)


だが全身がぐったりしていて、酷い疲労を感じる。


タタッ


足音が聞こえるが、僅かな音だ。気配も野生動物並みだ。大きなネコというのはお

そらく比喩ではない。


何かが俺を襲った。


「チェリー?噂の猫はお前だったのか…」


「ニャおーん」


チェリーの頭に猫耳が、お尻には尻尾が生えていた。


チェリー。お前どうしたんだ?何があった!」


「ニャおーん」


(会話のキャッチボールが出来てない。ほぼアニマル化している)


「ニャおーん」


再度チェリーは俺に攻撃を仕掛ける。


(速い、身体能力が上がってる)


どうやらアニマル化の恩恵を受けているらしい。


俺は腕で攻撃を防いだ


「むっ!?」


彼女に触れた身体に力が入らなくなった。


(これはチェリーの能力“エナジードレイン”)


体力と精気を吸い取る能力だ。


さっきの男子がぐったりしていたのもこの能力のせいだろう。


だがこんな程度では俺はやられない。


「“影の踊り”」


月光に照らされた暗闇は影を作り出し、その影は俺の意志のまま動かす能力だ。


俺の影が立体的に浮かび、輪っかになりチェリーに向かう。


それを彼女はひらりと躱す。だが影は俺だけのものではない。


街の影、樽の影、様々な影がチェリーに引き寄される。


それをこの子猫ちゃんは見事な動きと能力をもって躱し、また影の動きを静止させた。


「にゃーん!」チェリーはご機嫌そうに鳴いた。


「油断したな」


チェリーの影が手形となりその中に引きずり込んだ。


別に死んだわけではない。ただ眠ってもらっただけだ。


チェリーは目を覚ました。


「よう、起きたか」


「……は、はあ!?な、なな何でアンタがアルバスがここにいるのよ!!」


「覚えてないのか?」


「…記憶にはないわ」


だが何か違和感は覚えてる様子だった。


「でも、通り魔の事件は私だということは分かってた。だって、猫耳と尻尾が生えた

大きなネコなんて私しかいないじゃない」


俯きながら声のトーンを落として語る。


「結果には必ず原因がある。何か心当たりはないのか?」


「ないわ」


「最近どこか行ったとか会ったとか…」


「そうね、強いて言うならあなたの訓練に付き合った」


(俺か。じゃあ自分について考えるか)


しばらく思考する。


「……」


「……」


「……あ」


「何か思い当たる節があったの?」


(バリバリある。というか原因俺だ)


チェリーが猫になったのは病気だ。前世の俺がその病を作ったのだ。





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前世で最強で最凶の魔法使いの俺は百年後に、転生する。 タコツボ @teniss

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