人食い狼は飢えている。

人食い狼は飢えている

　人食い狼が出ると噂のある森で、赤い帽子を被った少女は、狼に出会いました。

「俺は腹が空いている。だからお前を喰ってやる」

「ここにケーキがあるの。これで見逃してちょうだい」

「俺は何人も食べた。それでも腹は空く。こんなもので足りるわけがないだろう」

「それはあなたが満たされていないのはお腹ではなくて、心だからなのよ」

　あまりにも少女が勧めてくるので、ケーキを一口食べてみると、蜜のように甘くありました。

「こんなに美味いものは今まで食べたことがない」

　今まで食べたことがないくらいに、お腹に満ちるようなケーキに狼は夢中になりました。

　その隙に、少女は狼をぺろりと食べてしまいました。

「ああ、美味しかった」

　少女に化けていた狼は、人を食ったように笑いました。