この壺は何かがおかしい

磨白

この壺は何かがおかしい

最近、壺を買いました。


あ、怪しい運気アップの壺などではないですよ。


見た目が好きで買ったんです。


先日、骨董品屋に入って一目惚れしまして、特に何を入れるかも考えずに買ってしまいました。


まぁ、意外と安かったですし、後悔はしていません。


一つ不満があるとするならば、


この壺、元の持ち主でしょうか。


文字が彫ってあるんです。


石登、、、、なんて読むんでしょうか?、、、よくわかりません。


しかも結構目立つところに彫ってあるんです。


見栄えが悪いので、どうにかして消したいと思っているのですが知識がないので、今度調べてみようと思います。


玄関にでも飾ろうと思い、壺を持ち上げると、カラン。と中で音が鳴りました。


中を覗いてみると、、、、石?小石が入っていますね。


壺が欠けた、というわけではなさそうですから、、、、うーん、誰かのイタズラでしょうか。


ま、別にたかが小石ですから、然程気にせずに外に出てすぐの川に捨てました。





それから、暫く後のことです。


折角壺を買ったんだからと、近くのお花屋さんで幾つか花を買って、花瓶にしようと考えました。


水を入れようと中を覗き込むと、壺の中で小石が積まれています。


私は何日か前に壺の中身を確認したはずです。


その時には小石が一つ入っていて、私はそれを捨てました。


なのに、今日壺の中には綺麗に積まれた小石が入っている。


誰かが家に侵入した?


私は不安になって、部屋に設置している防犯カメラの映像を確認しましたが、幸いにも人の姿は映っていませんでした。







「それで、神社まで相談に来たと」


「はい、なんとなく気味が悪くて。捨ててしまおうとも思ったんですけど、、、、」


「不安だったんですね。成る程、それではその壺を見せてもらえますか?」


私は袋で包んだその壺を神主さんに手渡した。


「結構古い壺ですね、一見すると普通のものに見えますが、、、あ、これですね。彫ってある文字というのは。、、、石登ですか。これだけでは判断しかねますね。中も拝見しますが、よろしいですか?」


「はい、よろしくお願いします」


神主さんは、慎重に壺の中を覗き込んだ。


「本当ですね、中に小石が積まれています。、、、、触ってみても、崩れませんね。何かで固定した訳では、、、、ないですよね」


「してないです。私も車に乗せた時に気がついたんですけど、本当に気味が悪くて」


私は寒気がして、腕をさすりました。


神主さんは壺をまじまじと見つめながらゆっくりと口を開きます。


「子供が親より先に死んだとき、どうするか知っていますか?」


「え、何のお話でしょうか?」


「霊の話ですよ。子供が親より先に死ぬことは重罪みたいでしてね。先に死んだ子供は三途の川で、石を積まされ続けるんだそうです。石を積み終われば、天国に行けるそうですが、完成しそうになったらそれを鬼が壊すらしいですよ」


「おとぎ話ですか?」


「さて、どうでしょうか。それは私には判断しかねます。が、この話には続きがあるんです。子供に先立たれた親は、子供の石を積むのを手伝ってあげなければいけない。つまり、どこでも良いんですが、、、、一番いいのは川で石を積むことですね。そうすることで子供は天国に行けます」


「それとこの壺に何の関係が?」


「この壺に書かれている石登という文字。石橋、とか言う意味がありましてね。これは死んだ子供が呪って彫ったものですね。わずかですが、怨念のようなものを感じますから。恐らくですが、この子供は親よりも先に亡くなってしまい、三途の川で石を積まされていたんでしょう。この子の親は、石を積むのを手伝わなかった、もしくは、手伝えなかったのかもしれません。子供の後を追って亡くなったとか。ま、そんな事が合ったとしても子供は知るすべがないでしょうから、天国に行けず親を恨んだ、、、、いや、三途の川で石積みを手伝って欲しかっただけかもしれませんが、、、、、」


「何が言いたいんですか」


話の終わりが見えない神主さんに私は苛立ちを覚え、結論を催促した。


「すいませんね、話しすぎましたね。結論からいうと、この壺は親より先に死んだ子供の呪いで、恐らく、一緒に石を積んでくれる人を探して道連れにしようとしているんでしょう。自分が天国に行くために」


「え、そんな事が、、、、?それにしたってなんで壺の中で?」


「部屋にあっても、気づきにくいでしょ?呪いはある程度近くに居ないと効果がありませんから」


「そうなんですか?」


「はい、逆に一度発動さえしてしまえば、どこにいっても効果があります。例えば、私がこの壺を外国に持っていっても、一度ターゲットにされたあなたは、この壺の中の石が積み上がったときに、亡くなるでしょうね」


顔から血の気が引いていくのが分かった。


「大丈夫ですよ、幸い壺と石の両方がここにありますから、解呪することが出来ますよ」


神主さんが壺に御札をはり、呪文を唱えた後壺を叩くと、積み上がっていた石は崩れました。


「これでもう大丈夫です。この壺に害はありません」


私は腰の力が抜けて倒れ込んだ。


「怖かったですね。でももう大丈夫です。安心してください」


「あ、ありがとうございます」


「ところでこの壺は持って、、、、」


「帰りたくないです」


「ですよね。こちらは私の方で処分いたしますね」


私は感謝の意を伝え、神社を出た。


もう骨董品は買いたくないな……


帰る途中、家の前の川で石が積まれているのを見た。


ちゃんと石を積んでもらえた子は天国に行けるのだろう。


私はその石に手を合わせて家の中に入った。
































数日後、ある川の近くの家で女性が亡くなった。


外傷はなく、死因は不明。


まるで、なにかに呪い殺されたように……
















「大丈夫ですよ、幸いがここにありますから、解呪することが出来ますよ」











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