第11話 人は見かけによらない

そもそも先ず天水にお弁当を作られる義理が無い。

なのに天水は俺に対してお弁当を作っている。

これは何故なのか?、と思いながら俺は真剣に考える。

死んでもらっては困るってのは有難いが。


「はろぉ」

「奈央じゃないか」

「お久しぶり」


猫又奈央(ねこまたなお)。

俺と友人だが...あまり学校に来ない少女。

常日頃から猫みたいな口をしているので猫という名字が妙に合っている。


ボブの髪形をしている少女だ。

何方かといえば美少女だと思う。

猫又だけに。


因みに猫又は皮膚が病弱だ。

だから学校にあまり来れない。

まあ...言えばアイツ。

渋谷と似たようなものだ。


「今日は調子が良いから学校に来たの」

「...そうか。...お前が元気な姿が見れて嬉しいよ」

「うんうん。...で。君も元気そうだ」

「...そうだな。お前の家に行こうとしたんだが暇が無くてな」

「そうなの?」

「ああ」


そう返事をしながら俺は職員室に向かう。

呼び出されたのだが何の用事か分からない。

そう思いながら居ると奈央もついて来る。


「奈央も用事か?職員室なんだが」

「うんにゃ。どういう洋二かなって思って付いて行っているだけ」

「変な趣味だな。...多分成績の事じゃないとは思うけどな」

「そっか。じゃあ何でかな?」

「分からん」


そして俺はドアをノックする。

それから入るとそこに...天水が居た。

何故か担任も居る。

俺を呼び出した人間だが。


「先生。何でしょう」

「おお。...お前に頼みたい事があってな」

「はい?」

「おう。天水のパートナーになってくれ」

「...」


何を言っているか全く分からん。

そう思いながら俺は目をパチクリして天水を見る。

すると先生は「ぶっちゃけ話が分からんと思うが天水は1人暮らしだ。だからお前と共通点を結んでおきたい。先手を打っておきたい。それで分かるか」と先生は笑顔になる。


「ほぁ!!!!?」

「俺もまあそんな色恋に口は出せないけどさ。だけど...天水は1人だ。だから守ってほしいんだよお前に。近所だろ?」

「何でそれ知っているんですか」

「だってお前。俺担任」

「ぶっちゃけ担任の権限使わないで下さい」

「ハハハ。でも良いじゃねーか」


天水は不本意な感じをしている。

すると奈央が「先生。私も良いですか?」と笑顔で言った。

「おう。君は確か猫又だったな」とニコッとする担任。


「そうです。私、天水さんと友達になります」

「それは助かる。じゃあ天水。お前の友人だ。猫又は」

「待って下さい。何でそうなるんですか」

「え?お前友人少ないだろ?」

「ごり押しですね...」


俺は絶句しながら担任を見る。

すると天水の手を奈央が握った。

天水は「!?」となりながら奈央を見る。

奈央はニコッとしながら「今日から宜しくね」と笑顔になる。


「ね?春樹」

「...いや。俺に聞かれても」

「横田。頼んだぞ」

「何でですか!」


何で俺はそういう目に遭っている。

俺は考えながら天水を見る。

だがその顔は不本意だったが嫌な感じの顔では無い。

何故そんな顔をしているのだ?



「ねえねえ。愛花ちゃん」

「...はい。何でしょうか」

「愛花っておま。いつの間にそんな親しくなった」

「だって私の友人だし」

「...」


滅茶苦茶な論だな。

俺は苦笑いで天水を見る。

天水は困惑していた。

だがそれに対して猫又はどんどん近付く。


「髪の毛サラサラだね。...羨ましいな。絹みたい」

「あ、はい...」

「...天水。嫌だったら引っぺがしても良いぞ」

「それはしません。だって...貴方のご友人でしょう」

「まあそうなんだけどさ」


そして俺はスリスリしている奈央を天水から剥がした。

それから俺は「奈央。天水が嫌がっているから」と言う。

そんな言葉に天水が「嫌じゃないですよ」と話した。


「...こんなは感覚は久々ですから」

「...そうか?」

「はい」


すると天水は「お姉ちゃんと美海以来です。こうして無邪気に近付いてくれるのは」と顔から笑顔が消える。

俺は目線だけ向けて「そうか」と答えた。

それから俺達は階段を登ってから教室に戻る。

奈央は「じゃあ。また後で」と手を振る。


「...ああ。じゃあまた後でな」

「...?...彼女は何処に行くんですか?」

「保健室。...アイツ病弱だからそこで授業を受けている」

「...!」

「...それなりに大変だアイツも」

「...そうなんですね」


「彼女は何のご病気ですか」と聞いてくる天水。

俺は顎に手を添えて「彼女はあまり日光の下に居れない。皮膚が病弱で皮膚ガンになりやすい」と答えながら目線を外に向ける。

「それで送り迎えもなるだけ車だ」と呟きながら、だ。

天水は「彼女...元気そうですけどね」と言う。


「...人は見かけによらない。...何というかお前と同じだよ。以前は皮膚が剥がれ落ちていてな。...治療法がなく包帯を巻いていた」

「...」

「出来たら彼女と優しくしてやってほしい。...彼女はそれを望んでいるだろう」

「...分かりました。...美海と同じですね」

「...そうだな。そうしてやってくれ」


そして俺達は教室に戻ってからそのまま席にそれぞれ腰掛けた。

それから次の時間を迎える。

俺は大欠伸をしながらそのまま授業を受けた。

そうしてから...お弁当の時間になった。


と同時に1分も経たずして奈央がガラッと教室のドアを勢い良く開けた。

待ち構えているかの様に。

な、何事だ!?

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