タワーマンションに魔界の悪魔がいたっていいじゃないか!

「ムムム…こっちの作戦も失敗か…」


ヴァエルはいま、捨てられていた段ボール箱に入り、落ちていたネームペンで

『拾ってください』

と書いた。

捨てられた子供作戦!


は、失敗に終わった。

子供にしては大きいし、育てるのも20歳になると大変だ。

簡単に拾っていくわけにもいかない。


「あの…大丈夫ですか?」


「…!」


「急に話しかけてすみません!いや…凄くお腹がすいていそうだったので…」


そう。ヴァエルは3日ほど何も食べていない。

餓死しそうだったのだ。


「…誰だ。名を名乗れ」


「あ、俺は颯太そうた。君は?」


「わ、私はヴァエルだ。颯太か。珍しい名前だな」


「そんなことないですけどね。ヴァエルさんの方が珍しいと思います」


「そんなこともないが…まぁそれはさておき、拾ってくれないか?」


「えっ?」


「拾ってくれるから声をかけたのではないのか?」


「…」


「何か言え!」


ヴァエルは感じた。


(この人間は他の人間よりも優しいな…)


「とりあえずついていく!」


「ついてこないでくださいヴァエルさん…」


「我は諦めの悪い方でな」


「こっそり警察向かおう…」


「いまお前、『こっそり警察向かおう』といったな?我を囚われの身にさせたいのか?」


「ゔっ…めっちゃ小声で行ったはずなのに…」


「ふふん!やはり我には誰も勝つことは出来んようだな!なら家まで連れていけ颯太よ!」


「はいはい。まぁ一人暮らしで結構寂しかったしなぁ」


「私は家事をすべてやる!」


「ま?」


「洗濯に掃除、料理だってやってやる!」


風太は週6で仕事なので、家事をやる暇がない。

ほぼ毎日カップラーメン生活と化していた。

何だかんだ言って貯金はたくさんある。

風太にはいい条件しかなかった。


「本当にいいのか?俺に対していい条件ばかりなんだが…」


「それは我も同じだ。泊まれる宿があって、好きな料理もできるんだ。しかも…」


(しかも一緒に住む相手が男なんだ。これはいろいろな意味でチャンス!)


「何か嫌なこと考えてないか?」


「ゔ…何も考えていないぞ」


「その反応でその答えは…もう少し分かりにくく出来ないのか?」


「我は嘘が苦手なのだ」


「認めちゃった(汗)」



そして、風太の家の前に到着した。



「ここが我の家か!なかなか悪くないな!」


「いや一応俺の家だからね?」


「でも今から我の家にもなる家だぞ?」


「まぁ…それもそうか」


そこは大きなマンションだった。

いや、ただのマンションではなくあのタワーマンションという奴だ。


「我の部屋はどこだ?ここか?いやココは者が置いてあるから違うか。じゃあこっち?こっち?どっち?」


「騒ぐなっ!!!」


プルルルルルルルル、プルルルルルルルル、ガチャ。


『もしもし?』


「はい。どうしましたか?」


『うるさい!』


「それはすみませんでした…」


苦情は下の下の階からと上の上の階のところからどんどん苦情が来た。

その後、ヴァエルは風太にボコスカ叱られるのであった…

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