中間点D(3)
山頂はちょっとした広場になっていた。その一角に、あの暮田神社がある。
石鳥居をくぐると、すぐに
念のため、あたりの木を確かめてみたけれど、呪いのワラ人形が打ちつけられたりはしていなかった。
拝殿の裏に回ると、わたしの学校や、そのまわりの街並みがよく見わたせた。
わたしはランドセルをおろすと、地べたに座りこんで、その景色をながめた。
すずしい風で汗がひいて、気持ちいい。
わたしは拝殿の壁によりかかると、そのうちうとうとしはじめた。
ふっと目をさますと、小学校の校庭で、豆つぶみたいな子供がたくさん遊んでいるのが見えた。
お昼休みだ。さわぐ声が、ここまでひびいてくる。
おなかがすいた。
近くにコンビニはないかなと思って下を見ると、この広場からちょっとくだったところに、灰色をしたコンクリートの建物があるのに気づいた。
なんだろう、あれ。
なんとなく興味をそそられて、わたしはそこへ行ってみることにした。
広場からくだってゆくと、とちゅうで登山道が枝分かれしていることに気づいた。
雑草やつる植物にうもれるようにして、矢印と、『峰背牧場記念館』という文字の書かれた看板が立てられている。
これって、もしかして……昨日、拝田くんのおじいさんが言っていたやつかな。峰背家ゆかりの品が展示されてるとかいう。
そちらへ歩いていくと、公民館を小さくしたような四角い建物が、ひっそりと建っていた。
それを目にしたとたん、二年生のときの記憶がよみがえった。
そういえば遠足のときにも、みんなでここを見学した気がする。
それなのに、ぜんぜん思い出にのこっていなかったのは……当時のわたしにとって、何もおもしろいものが置いてなかったからだ。
記念館の前には、ジュースと棒アイスの自販機があった。
塾へ行く前にコンビニでおやつを買ったりできるよう、お母さんが持たせてくれた千円を使い、わたしはアイスを買って食べた。
チョコチップバニラと、オレンジシャーベットのふたつ。くたくたの心と体に、甘くて冷たいアイスがしみこむような気がした。
ついでに、記念館の中ものぞいてみる。
ガラスのドアを開けて中に入ると、きんきんに冷房がきいて快適だった。
入ってすぐのところに、病院の受付みたいなカウンターがあって、うめぼしみたいな顔のおばあさんが座っている。
おばあさんはわたしを見て、一瞬、おやっと首をかしげたけれど、
「子供は三百円」
と言っただけだった。
わたしはアイスを買ったおつりで入館料を払うと、中へ進んだ。
記念館の中は、小さな博物館という感じだった。
ガラスのショーケースがあって、明治時代の写真とか、大正時代のランプとかがならべられている。
峰背家がさかえていた大正時代と、現在の暮田市のようすを比べた地図があった。
ドキリとしたのは、昔、峰背家の屋敷があった場所に、わたしたちの通う小学校があることに気づいたからだ。
こんなことにまきこまれなかったらたぶん、昔、自分の小学校のある場所に何が建っていたかなんて、気にもしなかっただろうな。
そんなことを思ったりもした。
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